クルマ離れによりタクシーのニーズは増えている
代表的な職業ドライバーといえば、タクシードライバーを思い浮かべる人も多いでしょう。そして、タクシードライバーの高齢化が進んでいるという実感もあるのではないでしょうか。実際、東京都のタクシードライバーの平均年齢は58.2歳(2018年度)となっているのです。
ちなみに総務省統計局が発表(https://www.stat.go.jp/data/nihon/19.html)している「主要職種別平均年齢」によるとタクシードライバーは59.4歳で、この統計でピックアップしている職種のなかではもっとも平均年齢が高くなっています。たとえば、ほかの職種の数字をみるとシステムエンジニアが38.5歳、自動車整備工が36.8歳、営業バス運転者が49.9歳といった具合。大学教授でさえ57.6歳ですから、タクシードライバーの平均年齢がいかに高いか理解できるでしょう。
もっとも、タクシードライバーはベテランになれば個人タクシーという選択肢もあるほか、タクシー会社で働くにしても契約社員的な立場で、運転できる限りは続けることができる仕事です。実質的に定年退職がないといえますから、その意味では定年があるようなほかの職種と平均年齢を比較することはナンセンスともいえましょう。
さらにクルマ離れが叫ばれるなか、職業ドライバーになろうという人材(運転免許保持者)も減っている傾向にあります。一方で、クルマ離れということはタクシーの利用客は増えていますから、ニーズは増えています。
そうした状況からタクシードライバーは稼げる仕事になっているのです。実際、リーマンショック後には350万円程度だった平均年収は、いまでは470万円ほどに上昇しているといわれています。もちろん、稼ぎには個人差もありますが、最近ではAIを利用することで乗客がつかまりやすい場所や時間帯をドライバーに知らせる支援システムなども生まれ、ベテランだけが稼げるという状況ではなくなっています。
車両の進化で高齢化に対応するも、自動運転でなくなる職業?
最近のタクシーは、ダッシュボードに複数のスマートフォンを置いているのを見たことがあるでしょうが、配車アプリなどを利用することで乗客を確保、売上につなげることも進めているわけです。運転がプロフェッショナルであるだけでなく、そうしたITを利用するスキルもタクシードライバーには求められる時代となっています。
また、車両の進化も見逃せません。トヨタ・コンフォートなどかつてのタクシー専用車といえば安全装備はほとんどついていないのが当たり前でしたが、トヨタのタクシー専用車「ジャパンタクシー」には歩行者を検知する衝突被害軽減ブレーキ、ペダル踏み間違い時の加速抑制装置などが備わっています。職業ドライバーとはいえ高齢になればケアレスミスも起きやすく、それが課題といわれているわけですが、ドライバーのミスをクルマがフォローできる領域が広がっているのです。タクシードライバーの高齢化には、ハードウェアで対応するというのがトレンドです。

もっとも、その延長線上にあるのはタクシーの完全自動運転化です。アメリカではUber(ウーバー)が自動運転の研究を進めていることは知られています(その過程において死亡事故を起こしてしまいましたが)。また、日本でも日産とDeNAが共同で無人運転のモビリティサービスの実証実験を行っています。
クルマ離れというのは自分自身で運転しない、クルマを所有しないということであって、モビリティサービスとしてクルマ(タクシー)を利用しないという意味ではありません。現時点ではタクシードライバーは稼げる職業になっていますが、それが未来永劫続くとはいえません。
それが何年後になるのかは、まだわかりませんが、少なくともタクシーのような公共モビリティサービスについては完全自動運転にしようとする動きが世界中にあることは間違いありません。タクシードライバーのヒューマンエラーといった課題は、自動運転テクノロジーが解決してくれることでしょう。
