本国ドイツでオペルは大衆車のド真ん中
オペル、と聞いて、あなたはどの国のメーカーか分かるだろうか? 正直なところ、GMアジア・パシフィック所管のブランドとして日本から撤退した16年前でも、状況は同じ。オペルの知名度は低かった。オペルはドイツのメーカーだが、長きに渡り米GM(ゼネラルモーターズ)の子会社として、その実態は、欧州GMだった。
米フォードにも、ドイツを本拠とする欧州フォードがあるが、こうしたアメリカ大手との連携について、日本人はピンとこない。とくにGMの場合、ドイツのオペル、イギリスではヴォクソールというブランドで展開したことで「オペルってどこの、どんなメーカーなのか?」が日本人にとって極めてわかりにくかった。

では、ドイツでオペルはどんなメーカーだと思われているのか? はっきり言えば、大衆車のド真ん中である。ドイツにはクルマのヒエラルキー(社会的な序列)があり、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディに比べてオペルは大衆寄りのメーカーとして位置付けされてきた。VWと比べても、オペルのほうが大衆寄りにある。日本には未導入だが、VW系であるスペインのセアトや、チェコのシュコダに近いブランドイメージだ。
そんなオペルの大衆性にまつわる象徴的な話がある。
レースでオペルが上位ブランドに勝つと大いに盛り上がる!
オペルはDTM(ドイツツーリングカー選手権)の90年代第一期と、第二期の初頭にワークス参戦していた。筆者はホッケンハイムサーキットでDTMを見学していた時、オペルがメルセデスやBMWとの接戦から抜け出すと、観客席が大いに盛り上がるのだ。
同行していたドイツ人に聞くと、観客たちにとって大衆車オペルは身近な存在であり、ヒエラルキー上位ブランドをやっつける様を見て、観客たちは胸がすっきりするのだ、という。

こうしたドイツでのオペルの状況を別の角度から見ると、日本にオペルが輸入された場合、ブランドの設定が難しくなる。メルセデスでもなく、VWでもない、アメリカ大手が深く関与するドイツ車。

そんなオペルが2021年、日本に再び導入される。今度は、PSA(プジョー・シトロエン)の仲間としてである。PSAでの日本戦略といえば、近年はシトロエンのブランド再構築を確実に進めている。戦略は奏功し、ベルランゴは予約販売時点で完売するほどの人気だ。オペルについて、PSAはどのように料理するのか? その腕前、じっくり拝見したい。