ストレスを感じさせない軽快さと低燃費で遠くへ行きたくなる
初代ハスラーは軽クロスオーバーという独自のジャンルを切り拓いた大ヒットモデルだ。2代目では乗用車としての走行性能・操縦安定性や居住性・快適性、さらには省燃費性など、すべての面でレベルアップさせることが目標となった。
そのうえで、ハスラーの個性であるクロスオーバーとしての性能(ユーティリティや走破性の高さ)もさらに進化させたい。
まず、ボディの基礎となるプラットフォームの刷新を図った。エンジンの搭載位置や乗車位置などを最適化したパッケージングとしながら、必要なボディ剛性や衝突安全性能を備えたボディ骨格を採用している。これらの改良により、室内空間を拡大しながら安全性・快適性が高められた。さらに安全運転支援機能もスズキの最新技術が搭載されている。
走行性能に関しては、新開発となるNAエンジンの採用が大きなトピックと言える。高出力・低燃費を両立したエンジンは、今後のスズキの基幹ユニットとなるだけに注目される。そして、ターボエンジンとともに全エンジンがハイブリッド仕様となっているのも特徴だ。これからの「軽自動車高速化時代」では長距離移動が当たり前になる。そのために、日常使いから高速道路まで幅広い速度域で高い燃費性能とスムースな走りを実現しているのだ。
新型ハスラーに搭載されるパワーユニットは、NAエンジンとターボエンジンの2種類。駆動方式は2WD(FF)とフルタイム4WDが、それぞれのエンジンに設定されている。トランスミッションは全車でトルコン式ロックアップ機構付きのCVTとなる(マニュアルミッション車の設定はなし)。
NAエンジン(R06D型)は新開発で、スズキとしてはハスラーへの搭載が初めてとなる。3気筒12バルブ・DOHCエンジンは従来型(R06A)に比べてロングストロークとなり、燃焼室の圧縮比も高められ、12:1に設定された。デュアルインジェクションシステムにより、混合気を均質化することで燃焼効率が向上。吸気ポートの形状を最適化し、吸気の強い渦を発生させることで急速燃焼を実現した。
また、クールドEGRの採用により再循環ガスを冷却することで燃焼温度を抑制し、ノッキングの発生が抑えられることで点火タイミングが最適化された。

ターボエンジンに関しては、エンジン型式こそ先代ハスラーと同じR06A型だが、アルトなどに搭載されているユニットと同様の最新型となる。スペック上の数値も同じだが、今回は、ハイブリッドシステムおよびトランスミッションが変更されたことに合わせて、セッティングの最適化が図られている。

そのハイブリッドシステムについては、バッテリー容量は従来型と同じだが、モーター出力を向上させている。NA用は1.6kWから1.9kWに、ターボ用は1.6kWから2.3kWとなり、より高出力のモーターアシストが行えるよう改良されている。

トランスミッションは、全車にCVTを採用する。新開発のCVTは、プーリーでの変速比幅を広げ、副変速機を廃止することができた。スズキで初採用された2ポートオイルポンプにより、油圧の管理を最適化。

そのほか、高効率ベルトの採用によりフリクション低減を実現している。また、低回転域の回転変動を吸収しやすいトルクコンバーターの採用により、静粛性および燃費が向上。アイドリングストップやアダプティブクルーズコントロールといったシステムとの連動を考慮した、最適な変速プログラムが組まれている。
駆動システムでは、2WDとフルタイム4WDを設定。4WD車ではビスカスカップリング式のシステムにより、前後の駆動力配分をリアルタイムに最適化。雪道走行時などにタイヤの空転を抑える「スノーモード」、急な下り坂で車速を自動制御する「ヒルディセントコントロール」、滑りやすい路面での発進をサポートする「グリップコントロール」といった機能も備えている。
目指したのはクラストップレベルの快適さと走行パフォーマンス
新型ハスラーのボディには、走行性能はもちろん、快適性や居住性、そして安全性を高めるために、新プラットフォーム「HEARTECT」が採用された。従来のプラットフォームに比べて、骨格同士を滑らかにつなぐことでシンプルな形状としながら、主要な部品の結合部の剛性を高めることで、補強部品を減らし、基本性能を高めつつ軽量化を実現した。

新プラットフォームはホイールベースが従来型より拡大されているため、アッパーボディにも、より高い剛性が要求される。新型ハスラーのようなボックス形状のボディでは、ルーフパネル、サイドパネルともに前後方向に長くなり、ねじれやすくなるためだ。
そこで、ボディ骨格には環状骨格構造を採用。サイドドアやバックドアなどの開口部だけでなく、センターピラーからフロア部分も環状骨格とすることで、ボディ全体の剛性を向上させた。

従来の短間隔のスポット溶接部分の一部を接着剤に置き換えることで、必要な剛性を確保しながら、ボディ全体を軽量化することに成功した。ボディパネルの連続性を高めることは、ボディ全体の一体感につながるため、操縦安定性や乗り心地の向上に必要な要素である。

そして、ボディ剛性だけでなく、遮音性や防音性も高めた。本来、ボディの小さい軽自動車では骨格部品の断面積も小さくなり、静粛性の面では登録車よりも不利だが、「すべての席で家族や仲間と会話できる」を実現すべく、フロアやダッシュパネル、ボンネットフードなどに遮音材やサイレンサーを配置。
さらに、従来比で2.5倍という減衰性能を持つ高減衰マスチックシーラーを軽自動車として初めてルーフパネルとルーフメンバーの接合部に採用。これによりルーフパネルの振動を抑制し、吸音性能を有するルーフライナーの効果と合わせて、こもり音・風音・雨音を低減。前席、後席ともに中速走行および高速走行時の会話明瞭度が高められ、快適で静粛性の高い室内空間を実現しているのだ。

サスペンションに関しては、フロントがマクファーソンストラットで、リヤが2WD車はトーションビーム、4WD車がI.T.L.式となっている。サスペンション形式そのものは先代ハスラーと同様だが、操縦安定性や乗り心地を向上させるために、各部の仕様が変更されている。
まず、サスペンションフレームの構造を変更し、ボディに取り付けたときの剛性を高めることで、サスペンション全体を高剛性化。ダンパーに取り付けられたバンプストッパーの形状および材質を変更することで、乗り心地を向上させている。

サスペンション全体のセッティングの方向性としては、ややオンロード指向にシフトしている。先代ハスラーは、スズキの軽自動車としてはジムニーに次ぐオフロード性能を持たせるべく、ストロークを大きく取り、車体がゆったりと上下動するような動きだったが、そのため、オンロード走行時にはややフワフワした乗り心地と感じられることもあった。そこで、必要なストロークは確保しつつ、日常使いでの安心感を高めるべく、上下動が小さくなるようセッティングを見直した。
セッティングの種類としては、NA車とターボ車で車重に大きな差がないこともあり、両者で共通。ただし、2WDと4WDではリヤサスペンション形式が異なるため、それぞれ別々の仕様となっている。タイヤサイズも先代ハスラーと同じで、軽自動車用としては直径が大きい165/60R15となっている。
乗る人みんなが心地いいと感じられることにこだわる
新プラットフォーム「HEARTECT」の採用により、ホイールベースは先代ハスラーに比べて35mm延長された。その延長分をすべて前後席の乗員間距離の拡大にあて、広い室内空間を実現した。また、前後方向だけでなく左右方向でも乗員間距離を前席着座位置で+30mm、前席乗員のショルダールームでは+32mmと、先代ハスラーよりも乗員周囲の空間が広くなっている。

こうした数値上の「広さ」だけでなく、フロントウインドウガラスの配置や着座位置の最適化により、運転視界特性もよくなっている。フロントドアのパーテーションガラス構造は廃止され、フロントウインドウは前後方向の取り付け位置は先代とほぼ同じながら、左右幅を拡大して視界を広げている。
後方視界に関しては、リヤウインドウ越しの水平視界を拡大し、さらにリヤピラーにクオーターウインドウを新設することで安全確認がしやすくなった。そして、後席に関しては、前席の着座位置を下げつつ、相対的に後席着座位置を高く設定することで、後席乗員の視界特性も向上させている。
前席の着座位置を下げたことで、乗降時の足付き性が改善されているのもポイントだ。後席についてはリヤステップ高さを2mm下げたことで、さらに乗込みしやすいレイアウトになっている。パッケージングということでは、ホイールベースを延長しながら、最小回転半径を4.6mとし、取りまわし性を確保。15インチという大径タイヤを四隅に配置することで、オフロード走行時などの走破性を高めた。アプローチアングルは29度、デパーチャーアングルは50度と、先代よりそれぞれ1度/4度の拡大となっている。
あらゆる状況で安心を提供する4WD性能
4WDシステムは、通常走行時では前輪に駆動力を配分し、滑りやすい雪道などでは前後輪に最適な駆動力を配分するビスカスカップリング式が採用されている。路面状況に応じて前後の駆動力を自動配分することによって、安定した走りを実現しながら、4WD車で懸念される燃費性能の低下が抑えられている。また、最低地上高を180mmに設定し、ロードクリアランスをしっかりと確保することで、オフロードを躊躇せず走行できる。

[ヒルディセントコントロール]急な下り坂で車速を適切に制御
急な下り坂で、ブレーキペダルを踏まなくても自動的に車速を約7km/hに制御することで、ドライバーはハンドル操作に集中できる。![]()
[スノーモード]雪道やアイスバーンで発進をサポート
雪道やアイスバーンでタイヤの空転を抑えてスムースな走行を可能にする。車速約30km/h以下ではブレーキ制御を併用し、安定したグリップ走行を実現。![]()
[グリップコントロール]滑りやすい路面でも発進がスムース
空転した車輪のブレーキ制御を早め、かつ強くして、空転していない車輪に駆動力を集中させることで発進をサポートする機能だ。![]()