地域差などからエアコン装備を利用せずに燃費計測されている
カタログ燃費と実用燃費とは、常に差が生じざるを得ないと思う。なぜなら、燃費性能を測る運転モードは改善が続けているが、今日もなお測定時には空調(エアコンディショナー)を利用せず行われ、なおかつ燃費運転の技に優れた運転者によって計測されているからだ。
エアコンディショナーを使わない理由には、必ずしも全世界のすべてのクルマが標準装備しているとは限らないことがある。
欧州各国の地球上の位置は北海道より北であり、そもそも気温が低めだ。さらに大気が乾燥していることが多く、日本の夏のように蒸し暑さがない。したがって、夏になっても窓ガラスを開ければそれなりに快適にクルマに乗れた。あるいは、屋根にスライディングルーフを取り付けると、そこから車内の空気が抜けやすくなり、室内の空気が循環して快適にクルマに乗れた。

一方、日本の夏は蒸し暑いので、クーラーなしではいられない。そこで、エアコンディショナーの装備が欧州より進んだのである。
米国もカリフォルニアのように、気温は高くても空気が乾燥して心地よさが残る地域もあれば、フロリダのように蒸し暑い地域もあり、かつてアメリカ車のクーラーは凍えるほど効くといわれたほどである。
また日本ほど公共交通機関が発達している国や地域ばかりでなく、貧富の差も大きく、エアコンディショナーの装備が必ずしも標準ではないという事情がある。
最新のWLTCモードなら運転の仕方次第で近づけることは可能
次に、クルマの燃費は走る道路条件や、運転の仕方によって大きく上下する。モード燃費の計測は、平坦な道を走ることを前提としている。
燃費によい運転というと、一般的に操作をすべてゆっくり行い、急のつく操作をしないことだと考えられている。しかしそれでは日常的な交通の流れにそぐわないと思っている人が多い。もちろん、急のつく操作はなるべく控えたほうがいいが、単に操作をゆっくりすれば燃費が向上するわけでもない。

交通の流れにそった走りができるようにと改善が繰り返されたのが、今日の燃費計測の運転モード設定だ。その内容は、決められた時間内に、定められた速度まで加速したり、減速したり、あるいは停車状態から発進したりしなければならない。
ことに発進では、ブレーキペダルから足を離したあと、すぐアクセルペダルを強く踏み込むのではなく、タイヤが1回転する程度クリープを活かしてクルマをまず動かし、そこからジワリとアクセルペダルを踏んでいけば、交通の流れに遅れず速度を上げられる。その際、目指す速度の手前までは、それなりにアクセルペダルを深く踏み込んでも差し支えない。ただ、目指した速度に近づいたら、ゆっくりアクセルペダルを戻しはじめるようにすると、余計な燃料を消費し、加速を続けずに済む。

速度に達し、アクセルペダルを戻す際も、先読みをして早めに戻しはじめるのが、無駄な燃料を使わずに済む上手な燃費運転の仕方だ。
しかし、一般的にそこまでを意識したアクセル操作をしているだろうか? 単にゆっくりした操作ではなく、メリハリの利いた運転が、燃費にも快適な走りにも役立つのである。
また、目の前のクルマの後ろ姿を見るだけでなく、数台先まで目線を遠くして運転すれば、交通の流れも早めに確認しやすくなる。

現行のWLTCモードは総合燃費性能のほかに、市街地/郊外/高速での各モードもカタログ表示されている。
メリハリのある運転と、先読みによる交通の流れを把握した運転を試みると、日常的に自分がクルマを使う設定でのカタログ燃費に、より近い数字が出るのではないだろうか。
