交通事故死者数の大幅減は軽自動車の安全性向上も大きな要因!

車体の小さい軽自動車は、衝突事故の際に危険だとの見方が根強い。一方で、1998年に改定された現行の軽自動車規格による車体寸法の拡大は、衝突したクルマ同士の安全を相互にはかるコンパティビリティの考えにより、軽自動車の衝突安全をより高める目的があった。



今日、登録車とのオフセット衝突実験においても、客室の生存空間が同じように確保される車体づくりが進められている。

国内で実施される自動車アセスメント(JNCAP)による衝突実験の評価においても、区別なく同じ試験内容によって判定され、5つ星を獲得する車種もある。一方で、登録車でも4つ星に止まる車種がなお新車販売されている。



物理的には不利! 車体の小さい軽自動車の安全性は普通車に劣る...の画像はこちら >>



現実問題として、衝突事故の影響が車両重量に大小によって異なるのは、物理的に覆しようのない事実だ。軽自動車と登録車によるオフセット衝突試験において、衝突直後に登録車がその場に止まれるのに対し、軽自動車は横へ飛ばされるようになる。衝突による衝撃に対し客室の生存空間が残されるにしても、衝突後に飛ばされる影響によって二次事故的な事態が道路環境によっては起こる可能性はある。



物理的には不利! 車体の小さい軽自動車の安全性は普通車に劣るのか



ただし登録車といえども、大型車と衝突をすれば立場は逆転するのであって、単に衝突時の比較で安全かそうでないかを語るだけでは、大型車のような乗用車に乗るしかなくなる。そこに合理性がないのと同じように、軽自動車と登録車の比較だけで一元的に良し悪しを語ることは合理性に欠ける。



今日の軽自動車は、54年前に誕生した大衆車の日産サニーやトヨタ・カローラとほぼ同じ大きさで、日本で利用するうえでもっとも扱いやすい車種である。3ナンバーの登録車を選ぶ自由もあるが、大衆車としての軽自動車を選択することは理にかなったことだ。



物理的には不利! 車体の小さい軽自動車の安全性は普通車に劣るのか



1990年代以降、クルマの安全性能は、衝突後の安全を主体に進歩し続けてきた。もちろん、衝突事故による死傷者を減らすことは人命を守るうえで重要だ。その成果は、国内における交通事故死者数が年間で4000人を切るまでになったことに表れている。

この数字は、1970年の1万6765人の4分の1以下だ。そしてそのなかに、市場の3分の1を占める軽自動車の衝突安全性能の進化も含まれるはずだ。



一方、同じ1970年に71万80件だった交通事故件数は、一旦下がったものの、70年代半ばから上昇に転じ、2004年には95万2720件と1.3倍以上に膨れ上がった。衝突安全以外の安全対策が不足していた証拠だ。2019年に、ようやく38万1002件まで減少した。04年の4割ほどに減ったが、死亡者数の4分の1減に比べると不十分だ。



自動運転が実現すれば衝突安全に関する議論は減少するだろう

交通事故件数が減りだした理由は、ぶつからないクルマの開発による。完全自動運転の技術が、人の運転する現在も部分的に適応されはじめたからだ。完全自動運転を目指す理由は、交通事故原因の90%が人の操作間違いによって起きているという数字である。



クルマがぶつからなくなれば、軽自動車と登録車でどちらが安全かという議論は不要になっていくだろう。価格の安い軽自動車を選んだのだから、登録車に比べ安全性が低いのは仕方がないなどという諦めも消えていく。



物理的には不利! 車体の小さい軽自動車の安全性は普通車に劣るのか



今後、有効活用が模索される超小型モビリティは、軽自動車以上に車体は小さい。

だからといって衝突安全性が低くてよいということはないが、自動運転技術が搭載され、ぶつからない超小型モビリティになれば、その不安も遠のく。



一方で、ぶつからないクルマとするための自動運転技術を搭載したら、原価が高くなり超小型モビリティの値段が高くなるという意見もあるだろう。それは、軽自動車を完全自動運転化しようとした際にも起こる議論であるはずだ。



しかし、安全で快適な将来の交通社会を築こうとするならば、あらゆる車種において完全自動運転の採用は不可欠であり、新車開発の仕方も変わるべきである。すなわち、従来どおりの装備を前提にコストを積み上げていくのではなく、新しい価値にふさわしいクルマの姿を再定義し、そこに必要な機能や装備を前提にしたクルマ創りをゼロからやり直す時代を迎えているのである。



物理的には不利! 車体の小さい軽自動車の安全性は普通車に劣るのか



安全はもちろんのこと、環境対応として電動化やタイヤかすのマイクロプラスチック化など、解決しなければならない課題は山積している。ただ漫然と20世紀型の延長でしか商品企画できないようであれば、クルマの未来はない。

編集部おすすめ