煙が出てきたら一度クルマを停めブレーキを冷ますべき

クルマのディスクブレーキは、回転するローターをパッドで挟み込み、その摩擦によってクルマの運動エネルギーを熱エネルギーに変換して減速させるシステム。



普段の街乗りでもローター温度は100~150度になり、山道の下り坂では300度、長い下り坂が続いたりすると500度以上、ハードなブレーキが続くサーキットでは700度以上になることもある。また、100km/hから急ブレーキをかけると、0℃の水2リットルが3秒で100℃に沸騰するほどの熱が放出されるともいわれている。



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だからこそ、高性能なスポーツカーには、大径ローターとビッグキャリパー、そして耐フェード性の高いスポーツパッドが用意され、受け止める熱容量を増やしているわけだが、標準的な乗用車のノーマルブレーキ(パッド)の場合、ローター温度が300~350度ぐらいになると、パッドに含まれるレジン(有機物)が熱で分解し、ガスを発生するようになる。



クルマのブレーキから火や煙が出た! そもそもブレーキは燃えても大丈夫なのか?



このガスがパッドとローターの間に膜を作り、摩擦係数が極端に低下してしまうことをフェード現象というのだが、このフェードがはじまるとガス=煙が出る。この煙が出てきたら、走行をし続けるのは危険。速やかに停車し、パッドとローターを冷ましてから走行を再開するようにしよう。



サーキットを走る人はスポーツパッドに変えると良い

仮にブレーキから煙が出たまま走り続けると、フェード現象によって、ブレーキを踏んでも制動力が立ち上がらなくなるし、最悪、ダストシートが燃えたり、漏れたブレーキフルードが発火することがあるので要注意。燃えにくいといわれているブレーキフルードだが、国土交通省自動車交通局の試験では、195℃付近から発熱反応があり、300℃前後で発火が認められたとある。



また、同じく国交省が発表した「平成30年 自動車事故・火災情報の統計結果」を見ると、装置別車両火災の5.9%は、制動装置=ブレーキ関係が火災の原因となっている。こうした車両火災を起こさないためにも、ブレーキがフェードしかかったら、そのまま走り続けるのは厳禁。



クルマのブレーキから火や煙が出た! そもそもブレーキは燃えても大丈夫なのか?



レーシングカーがブレーキ時にローターを真っ赤にさせていることがあるが、あれはそもそもパッドもローターもキャリパーも耐熱性が圧倒的に違うので、参考にはならない。またメタル系のパッドを入れているクルマは、制動時に火花のようなものが出ることがあるが、これも燃えているわけではない。



ナンバー付きのクルマでも、市販のスポーツパッドに交換すれば、ローター温度が700度ぐらいになってもフェードしないようになるので、サーキットを走る人はまずパッドだけでもスポーツパッドに変えておこう。



クルマのブレーキから火や煙が出た! そもそもブレーキは燃えても大丈夫なのか?



ストリートオンリーという人でも、一度でもブレーキから煙を出したことがある=フェードさせたことがあるという人は、整備工場でブレーキを点検した方がいい。

フェードしたパッドは、表面が熱の影響で炭化して、本来の制動力を発揮できなくなったり、異音を出したり偏摩耗している場合があるからだ。また、ブレーキフルードにも熱の影響で気泡が入り、ペダルフィールが悪くなることもあるので、ブレーキのエア抜き作業も忘れずに。

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