エンジンの回転に比例して車速が伸びなくなる症状
エンジンとミッションの間にあって、エンジンの回転力を接続したり切り離したりする仕事をしているクラッチ。MT車の場合は変速時だけでなく、発進時も半クラッチを使うことでスムースな発進を実現している。
このクラッチ、普段=クラッチペダルを踏んでいないときはフライホイールに圧着することで動力を伝えているわけだが、クラッチ操作が荒かったり走行距離が伸びてくると、クラッチフェーシング(摩擦材)がすり減り、圧着力が落ちてきて、クラッチペダルを踏んでいなくても半クラッチのような状態が続き、アクセルを踏み込んだとき、エンジンの回転は上がるのに車速はそれに比例して伸びていかないという症状がでる。
初期の頃はエンジンのトルクバンド(2500~3000回転くらい)に入っているときに、4速、5速などの高いギヤでアクセルを大きく踏み込むと、エンジンの回転はスムースに上がっていくのに、速度はあまり上がらず、回転数と速度の上昇にギャップが出てくる。こうした症状が現れたら、クラッチが滑り出した証拠。
放っておくとどんどん症状は悪化して、発進できなくなったり、ギヤが入らなくなったりするので、早めに整備工場に持っていきクラッチ交換するしかない。
半クラッチの多用などが原因で起こる
クラッチが滑る理由は、前記のとおり、クラッチフェーシングの摩耗が一番。他にクラッチのオーバーヒートでフェーシングが焼けて、摩擦力が低下するというケースがある。
いずれも半クラッチの多用が原因だと思っていい。また走行中、変速時以外にもクラッチペダルの上に左足を乗せておく癖のある人は、いつの間にか半クラ状態になり、クラッチを摩耗させている可能性がある。
その他、エンジンをチューニングしたクルマは、大パワーに負けてクラッチの摩耗が早くなったり、熱でクラッチが変形し、圧着力が落ちることも……。あとは、オイルやグリースが漏れてクラッチを滑らせるというパターンも考えられるが、いずれにせよクラッチのオーバーホールが必要。

クラッチの寿命は同じクルマ、同じクラッチでも、乗り方やクラッチの使い方で大きく異なる。スポーツカーでも5万kmぐらいはもたせることができるが、人によって1万kmしか持たない人もいれば、クラッチワークが上手な人なら10万kmぐらい持たせる人も!
オペレーションシリンダーのレバーの位置で、ある程度クラッチの残量を判断することができるが、基本的には消耗品と割り切って、滑りの兆候が出たら交換するしかない。
なお、クラッチの摩耗・消耗はMT車だけではなく、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)のクルマやAT車にもある。過走行やATFの劣化や不足などが原因で、2ペダル車でもクラッチ滑りは無縁ではない。ちなみにATでクラッチが滑ったらミッションオーバーホールになるので、けっこう高い出費になる……。
いずれにせよ、クラッチの滑りを感じたら早めにプロに点検してもらおう。