先進運転支援装備ならタフトが勝る!
これまで、軽クロスオーバーモデルの人気を独り占めしていたのが、軽ワゴンとSUVを融合させた軽クロスオーバーという新しいジャンルを切り拓いたスズキ・ハスラー。現行型の2代目は初代のイメージを踏襲しつつ、よりアクティブで先進性を高めた新型だ。
そんなハスラーに対抗すべく、ダイハツは以前、キャスト・アクティバという、キャストのエクステリアにSUVテイストを与え、最低地上高を高めたモデルがあったものの、対ハスラーでは惨敗。
そうした事態を、ダイハツが黙って見ているはずもない。2020年1月の東京オートサロンで、ダイハツ版軽クロスオーバーの新型として、ダイハツ・タフトを華々しくプレデビューさせたのだ。そしてこの6月、ついにタフトが正式にデビュー。1カ月間の受注台数は、月間目標販売台数4000台の4.5倍にもなる約1万8000台と、絶好調。

そこで、ここではタフトとハスラーを徹底比較してみた。
まずタフトだが、ハスラーと比較すれば、ピックアップトラック、バックパッカーをイメージしたというタフで力強いスクエアなデザインは、初代と大きく変わらないイメージのハスラーに比べ、どうにも斬新で新しさを感じる。

タフトの強みは、そうしたデザイン性に加え、スカイフィールトップなるシェード付きのガラスルーフを全グレードに標準装備したこと。ハスラーはサンルーフの設定そのものがないのである。

また、高速走行に今や欠かせないACC(アダプティブクルーズコントロール)は、ダイハツ・タントではターボモデルのみの設定だったものの、タフトではGターボにレーンキープコントロールとともに標準装備、NAのGもオプションで選べることになった。
ハスラーのACCはターボモデル限定であり、もっと言えば、ハスラーは渋滞追従機能付きといっても、電子パーキングブレーキを採用していないため、停止時、数秒後にブレーキホールドが解除されてしまうのだ。完全なACCはタフトのほうである。

便利&先進装備面でもタフトが優位だ。たとえば、リヤカメラを標準装備するとともに、ダイハツコネクト、車内Wi-Fiを用意。ハスラーより”つながるクルマ”という意味では進んでいる。一時停止時にブレーキペダルを踏まなくても停止状態をキープする、便利すぎるオートブレーキホールドを電子パーキングブレーキとともに備えるのもタフトのほう。

が、タフトよりハスラーのほうがリードしている部分もある。まずはパッケージ。タフトは低全高パッケージゆえ、全高がハスラーの1680mmに対して1630mm(ルーフアンテナを除くと1600mm)、と低く、とくに後席の頭上空間をかせぐためには、後席を低くセットする必要があり、約7cmぶんフロアに対して高さが必要になる後席スライドレールをあきらめ、結果、後席のスライド機構はなし。
対するハスラーは160mmのスライド機構があり、荷室の奥行拡大が自在。具体的には、タフトの荷室奥行は370mm固定。ハスラーは後席最後端位置の280mmから後席最前端位置(それでも大人が座れる)445mmまでの拡大が可能だ。

車中泊や悪路走破性などはハスラーに軍配!
車中泊対応についても、両車は真っ二つ。ハスラーは前席のサポート性を犠牲にしても(フラットアレンジ重視)、前席まで使った、最大ベッド長2040mmを実現。
が、タフトは車中泊に対応していない。後席格納時のフラットフロアの長さは840mmでしかない。これだと大人が横になることは不可能だ。車中泊をしたければ、それに特化したウェイクをどうぞ……というわけだ。

しかし、そのおかげで、ロッキー用のシートフレームを贅沢に奢った前席のふんわりとお尻が沈み込む、サイドサポート性、かけ心地抜群のシートを用意。タフトの前席のかけ心地、ホールド性の良さは軽自動車最上と言っていいほどだ。

軽クロスオーバーということで、ハスラーが誕生したきっかけが雪国のユーザーの要望だったように、悪路や雪道の走破性も欠かせない機能ポイントだろう。両車、FFと4WDを用意しているのはもちろんだが、最低地上高はタフトが全車190mm、ハスラーが全車180mmと、両車なかなかの数値。しかし、より悪路走破性に本気なのは、ジムニーという究極の選択もあるスズキのハスラーのほう。タフトは滑りやすい路面での発進、加速、脱出をサポートしてくれるグリップサポート制御のみだが、ハスラーの4WDにはグリップコントロールのほか、ヒルディセントコントロール、スノーモードまで装備されるのだ。悪路により強いのは、ハスラーの4WDモデルということになりそうだ。

走行性能面では、タフト、ハスラーともに、さすが最新の軽自動車だけに、NAでもよく走り、ターボともなれば一家一台のファーストカー、ロングドライブ用としてもぴったり。違いが出るのは乗り心地で、全車15インチの一般的なサイズの大径タイヤを履くタフトは、エクステリアデザイン、キャラクターと合致させるため、やや硬め。路面によってはゴツゴツする。言い方を変えれば、男っぽい乗り味だ。

一方、タフトと並べると今やずいぶん”可愛く”見えてしまうハスラーの乗り心地は、ズバリ、乗り心地重視の専用スペシャルタイヤのおかげもあって、軽自動車最上級と言える、フラットさ極まる快適なタッチに終始。昨冬、ハスラーに急きょ、安物のスタッドレスタイヤを履かせ、雪国まで走った経験があるのだが、それでも乗り心地、ロングドライブでの快適性、疲労感の少なさは文句なしだった。

とはいえ、走行性能でタフトが際立つのが、パワーステアリングの操作性だ。低速域では、デザインやキャラクターとの違和感を覚えるほど軽いのだが、とにかくウルトラスムースで操舵フィールに雑味なく、速度を上げるほどに引き締まり、安心感が出てくる絶妙かつ気持ち良さ爆発の設定なのである。分厚いクッション感を持つ前席のお尻をふんわり沈み込ませ、背中をやさしく包み込む心地よいサポート性の良さ、前後左右の姿勢変化の絶対的な少なさもあって、交差点を、カーブを曲がり、山道をスイスイ走るのが”楽しい”、”安心”と感じさせてくれるほどなのだ。

さて、軽クロスオーバー狙いのみなさん、タフトとハスラー、どちらを選びますか? よりワイルドなデザインや割り切った前席優先パッケージ、スカイフィールトップの気持ち良さ、ダイハツコネクトを含む先進機能&装備、ACCの機能の高さなどで選ぶならタフトで決まり。
ピンク×ホワイトなどの可愛いボディカラーも選べ、荷室のアレンジ性、後席使用時の荷物の積載能力、クラスを超えた絶品・上質な乗り心地、車中泊の対応性(車中泊用アクセサリーも充実)で選ぶならハスラー……という感じだろうか。

ただ、ひとつ付け加えておくと、タフトの後席スライド機構なしは、ユーザーによっては決定的なウィークポイントにならないという点だ。

ちなみにハスラーの2トーンカラーは2トーンカラー仕様車として4万4000円(税込み)高になるのだが、タフトのGターボ、Gはガラスが黒く見えるスカイフィールトップの前を黒く塗っているため、”無償”で疑似2トーンルーフに見えるのがお得だったりする。