ランエボ譲りのS-AWCなど走りも本格的!
三菱自動車がアウトランダーに続き、PHEV(プラグインハイブリッド)の第二弾として市場に投入するのはエクリプス・クロスPHEVだった。アウトランダーPHEVで築き上げた技術と実績をそのままエクリプス・クロスに移植し仕上げている。
三菱のPHEVシステムの特徴は前後アクスルに駆動用モーターを個別に備える2モーターで、4輪駆動としていることだ。
エンジンは主に発電用のジェネレーターを回すために稼働させる、いわゆるシリーズ方式。大容量のバッテリーをシャシーフロア下にレイアウトし、満充電なら60km前後の距離を、電気自動車として一度もエンジンを始動させることなく走行させることができる。

前後のアクスルが機械的に連結されていないので駆動力配分が自在に行えるという特性を活かしS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)システムを仕組んでいる。S-AWCはランサー・エボリューションXで採用されていた4輪の車両運動特性統合制御システムであり、駆動力だけでなく減速時にも制動力を個別制御して車両運動特性を操っていた。PHEVにもその制御思想が受け継がれ、機械式デフに代わりブレーキ力を利用したブレーキAYC(アクティブヨーレートシステム)を採用するなど進化を示してきている。

今回、エクリプス・クロスPHEVにもそうした技術はフルに引継がれ、さらにブラシュアップされて盛り込まれているという。
アウトランダーPHEVとサスペンションを含めたシャシーを共用しホイールベースやトレッドはアウトランダーPHEVと同じだ。PHEVを搭載するにあたり前後オーバーハングで通常のエクリプス・クロスより140mm長くなった。

このためリヤのハッチゲートが新造され、従来ツイングラスのダブルウインドウ方式だったものが一枚ガラスのシングルウインドウに変更されている。これだけでも十分にイメージが代わり、進化モデルに相応しい外観となった。

乗ればわかった! SUVなのにサーキットで試乗会をやったワケ
クルマに乗り込んで試乗開始だ。

EVモード発進で加速は力強い。パワースペックは未発表ながら、アウトランダーPHEVで体験していたままの加速フィールが再現される。車両重量は若干軽いがエクリプス・クロスの車体とのマッチングを向上させるために溶接や接着材の使用範囲を増やし、ボディ剛性を高めているため、実質的な重量差は少ないという。

だがクーペスタイルによるルーフ面積の縮小や車体形状などで低重心化がなされており、ハンドリング面では大きな効果が現れている。それはコーナリング場面で明らかとなった。コーナーへのターンインでステアリングを切り込むと、ノーズがスっとインを向く。そこから車体全体にヨーレートが発生し一定の角度を維持したまま速い速度でコーナリングできてしまう。エクリプス・クロスのコンパクトなクーペスタイルでヨー慣性モーメントが小さく、動きが小気味よい。

デフォルトのノーマルモードでASC(アクティブスタビリティコントロール)オンの状態でそれが感じられるほど走りはアジリティ(俊敏性)に富んでいた。
次にドライブモードでTARMAC(ターマック)を選択。

事実、試乗会場に居合わせた開発者の澤瀬薫博士は、乾燥舗装路のサーキットでも抜群にマッチングしているはずと胸を張った。残念ながら試乗当日は台風の影響で大雨に祟られてしまい、ウエット路面では標準装着されるブリヂストン・エコピアのグリップ力ではターマックモードを使いこなすには十分ではなかった。結果、過剰なヨーレートを与えてしまいスピンを喫したが、逆にいえばスピンまで追い込める運動特性を表していたとも言える(もちろんASCオンならスピンは回避できる)。

別の日にドライ路面で確かめることもできたが、そこではまるでランサー・エボリューションXを操る時と同じドライビングテクニックで自由自在、意のままに操ることができた。
エクリプス・クロスPHEVは装備も充実し、とくに後席のリクライニング機構や前席シートヒーターの装着(レザーシート仕様のみ)など、これまでボクが三菱自動車に要求していたアイテムが実装された。

さらにCHADEMO対応の急速充電システムを備え、緊急時には家庭に6kw(60A)を最大10日間給電することができるという災害適合性も高く、PHEVシステムのメリットを最大限に活用していることも魅力だ。

エクリプス・クロスPHEVの投入で、新世代三菱自動車がいかに復活を果たしていくのか。大きな期待をもって注目していきたい。