ユーザーの要望に応えた結果!
車内のドリンクホルダーは、ドライブ中の水分補給、リフレッシュのために飲み物を置いておくのに不可欠な装備と言える。
たとえばホンダ・ステップワゴンは、1-3列目席全体で、これでもかっ!! という全16個ものドリンクホルダーを備えているのだ。最大8人乗りだから、1人につきふたつ、ということなのだろう。
とはいえ、高額な高級車と呼ばれるクルマの場合、ドリンクホルダーに格別に気を使って装備されていることは稀だ。デザイン、高級感にこだわる上級車、高級車では、それが生活臭となり、二の次の装備となっているようだ。輸入車、国産高級車にもドリンクホルダーはあるが、前席では、センターコンソールに2個というのが一般的ではないか(ベーシックカーのVWゴルフでもそんな感じだ)。

一方、ステップワゴンのようなファミリーミニバンだけでなく、軽自動車のドリンクホルダーはじつに周到に装備されているのをご存じだろうか。数、というより、使い勝手のいい、それがたとえダッシュボードまわりの一等地であっても、しっかり用意されているのである。そう、運転中、ドライブ中に手の届きやすい車外から丸見えなダッシュボード左右にあるのが通例だ。しかも、エアコン吹き出し口の真ん前にあったりして、保冷、保温までできたりする。スーパーハイト系では前席背後のテーブルにも、ドリンクがスポっと入る穴が開いていたりする。

理由は、もちろん、ユーザーの要望にあるはずだ。日常使いが主な軽自動車は、子育て世代はもちろん、乗用車であってもビジネスユースに使われるケースが多く、子供に紙パックの飲み物を与える、忙しい仕事の合間の水分補給といったニーズが確実にあるわけだ。ゆえに、軽自動車のドリンクホルダーの多くは、ペットボトルだけでなく、四角い紙パックに対応する仕様となっていたりする。
言い換えれば、飲み物を飲みたいときに飲める、自宅の感覚をそのまま車内に持ち込みたいユーザーの声にしっかりと応えているわけだ。
N-BOXはペットボトルのキャップの置き場まで備える
その軽自動車で感心させられるドリンクホルダーのひとつが、ホンダN-BOXのものである。というのは、前席ドリンクホルダーの横に、ペットボトルのキャップを置くのにちょうどいい凹みスペースがあるのだ。考えてもみれば、ペットボトルを飲む際、キャップを開けなければならない。問題は、キャップの置き場所だ。下手にどこかに置くと、見失ったり、振動などでフロアに落ちてしまったりする。ボクは以前、運転中にペットボトルの水を飲む場合、当然、片手でペットボトルをドリンクホルダーから持ち上げ、片手でキャップをくるくる回して開け、キャップを指に挟みながら、飲む……という片手アクロバット的な飲み方をしていた経験もあるが、大変である(汗)。

が、N-BOXのように、キャップの置き場がドリンクホルダーのすぐ横にあれば、一時停止中、サッとペットボトルを取り出し、キャップを置いて、キャップの置き場に困ることなく、スムースに飲むことができるわけだ。「へーっ、N-BOX、考えているじゃん」と開発陣にその感動を伝えたら、げっ、「ドリンクホルダーの横の凹みは、N-BOX専用のキーホルダーを置く場所として設定しています」とのこと。ただ、開発陣も、「そうした使い方もアリですね」と感心してくれたのである。

実際、駐車場などで他人のクルマを見てみると、車内にペットボトルが角のようにたくさん立っているのは、軽自動車やコンパクトなユーティリティカー、ミニバンが主。輸入高級車ではあまり見かけない。飲み物を飲みながら運転する、ドライブを楽しむ……といった習慣は、やはり実用車に多く見られる傾向ということで、自動車メーカーもその要望に応え、特に超実用車の軽自動車では、乗車形態に合わせ、紙パック対応を含め、ドリンクホルダーの位置、使い勝手に、ことさらこだわっているわけなのだろう。