バックミラーに映ったら道を譲ってしまいそうな風格

前回プトロタイプのサーキット試乗インプレッションを紹介した三菱自動車の「エクリプスクロスPHEV」。今回はナンバーを取得した量産モデルを一般道で走らせて確かめることができた。おもにワインディング路での試乗だが、リポートしてみたい。



外観の意匠はプロトタイプから変わっていない。従来のエクリプスクロスより全長が140mm長くなったことで、車格が高まった印象を受ける。フロント部のデザインは三菱自動車が押し進めている「ダイナミックシールド」デザインを継承していて、ヘッドライトはデリカD:5で採用された縦型配列の二灯式を採用している(D:5は三灯式)。前から見た印象は迫力と存在感があり、バックミラーに映ったら道を譲ってしまいそうな風格に仕上げられている。



フロントバンパー下部はクロスカントリーを得意とする三菱自らしいガード風のリップデザインが施され、オフロードにも強そうなイメージだ。実際、最低地上高(グランドクリアランス)はこのバンパーリップ背後のアンダーパネル下の位置で185mmとクロスカントリーSUVを名乗るに相応しい。



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だが車体全幅は1805mmに抑えられていて、全体としてはじつはコンパクトなディメンションであるのだ。



試乗車は最上級の「P」グレード。これにオプションの本革シートが装備されている。この本革シートオプションは20万9000円と高価だが、運転席・助手席共に電動アジャストのパワーシート仕様となり、シートヒーターも備わる。このオプションを選択すると後席も本革仕様になるばかりでなく左右2席のシートヒーターが追加できるので、僕としては必須の選択オプションだといえる。エクリプスクロスの後席はもともと背もたれのリクライニング機能が備わっているので、後席スペースでの冬期快適性も高まっている。



【試乗】S-AWCがもたらすシャープなハンドリング! エクリプスクロスPHEVはワインディングも楽しめるSUV



電動温水方式のヒーターがオプション設定され(11万円)、これで冬場でもエンジンを掛けずに室内を暖められ、静かに走行開始できる。だが、実際にはシートヒーターがかなり強力で、冬着を着込んでいればエアコンのヒーターを作動させなくても寒さを感じないほどだ(試乗日外気温は摂氏9度)。



パワートレインはアウトランダーPHEVと同じで2.4リッター直4ガソリンエンジン(MIVEC搭載)をおもに発電用として稼働させ、128馬力/4500rpmの最大出力と199N・m/4500rpmの最大トルクを発生させている。最大トルクと最高出力の発生回転数が同じことからジェネレーターの発電特性に特化させたエンジンチューニングであることがわかる。駆動はおもに電動モーターが行う。フロントアクスルには最高出力82馬力、最大トルク137N・mのS61型モーターが搭載され、リヤアクスルにはさらに強力な最高出力95馬力、最大トルク195N・mのY61型モーターを搭載。常時4輪を駆動する4WD制御が与えられている。



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モーターを駆動するリチウムイオンバッテリーは総電力量13.8kwhで300Vの電圧をかけ、アウトランダー同様フロア下に収納している。このバッテリーとシステム制御によりEV走行可能距離(EV走行換算距離)はWLTPモードで57.3kmを誇っている。



試乗車はバッテリー残量が6~7割程で、表示されていてEVレンジは20kmとなっていた。おそらくワインディング路を何度も往復したデータから導き出された数値が表示されていたのだろう。



さっそく走らせてみることにした。



「ターマックモード」がワインディングにもマッチ!

エクリプスクロスPHEVにはドライブモード選択スイッチが備わるが、そのモードは「ECO(エコ)」、「NORMAL(ノーマル)」、「TARMAC(ターマック)」、「GRAVEL(グラベル)」、「SNOW(スノー)」から選択できる。デフォルトはノーマルの設定だ。



三菱自のPHEVは駆動用バッテリーの電力とモーターだけで走行する「EV走行モード」、エンジンで発電し駆動用バッテリーに充電しながらモーターのみで走行する「シリーズ走行モード」、エンジンの動力で走行しモーターでアシストする「パラレル走行モード」と3パターンのシステムで構築されているのが特徴だ。それらの出力、駆動力バランスや回生効率などをドライブモードで変更し、さまざまなシーンで最適な適合性を図っているわけだ。ちなみにエコモードを選択するとエアコンの優先制御なども変更し、より電力を節約する制御になる。



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デフォルトモードで走行し始めても、4輪駆動のトラクションと駆動モーターによる力強いトルク特性、スロットルペダルに瞬時に反応するトルクピックアップ特性などが非常に好印象。EVらしい静かでトルクフルなスタートが可能なのだ。とくに「EVモード」スイッチを選択しなくても、電力が蓄えられているうちは市街地走行パターンのほとんどはEVで走行する。ワインディング路の登坂区間を長く登っていっても、エンジンはなかなか始動しない。アクセル開度を踏み増しても電力だけで十分以上の加速力が引き出せ、よほどのトルク要求が発生しないとエンジンはかからないのだ。



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ターマックモードではアクセルレスポンスがさらに高まり、運動性能に優れるのは前回のサーキットテストで実証済みだが、ワインディング路でもそれは実感できる。4輪駆動制御のS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)が理想的な駆動力配分と前輪ブレーキベクタリングを発揮し、ステアリングレスポンスが高まったように感じるほど回頭性も増し、アジリティに優れたハンドリングとなった。

車両重量は1960kgでアウトランダーPHEVより増しているのだが、車体形状から重心位置が10mmほど下がったことが好作用し、ハンドリングに好影響を及ぼしている。ちなみに前後重量配分は43リッター容量の燃料タンク満タン時で前55:後45と優れており、ブレーキング時の4輪接地性にも優れていて安定している。



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復路のワインディング下りでは、4輪からの回生でバッテリーの充電容量はどんどん増えていき、結局スタート地点に戻った時点ではEV走行10km分を取り戻していた。前後モーターの4輪駆動としたことで回生効率にも優れていることがわかった。



残念なのは1960kgの荷重を支えるためにバネレートが高められたことが、後席の乗り心地に特に悪影響を与えてしまっていること。車体剛性はガソリンモデルより高められているが、今回採用されたハードスプリングに対してはまだ足りていないのだろう。またテールゲートの開閉が手動という点も「電動」を謳うモデルとしては手抜かりだ。この2点が改善されれば、エクリプスクロスPHEVの魅力はより一層高まるはずだ。

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