違反ではあるが後続車にも過失割合はある
採石場が近い幹線道路などでは荷台に砂を満載し走行しているダンプを見かけることがある。荷台から砂が舞い、後続車に降りかかるといったシーンも珍しくない。カバーをかけていればまだしも、カバーもなしに走行しているダンプもしばしば。
基本的なことをいえばダンプやトラックに限らず、個人ユースのクルマであっても、なんらかの落下物を生じさせた場合には「道路交通法71条4号」にある「積載物の転落・飛散防止措置義務」の違反として捉えることができる。
また、落下物を放置した場合にも「道路交通法71条4号の2」にあるように「転落物の除去義務」違反となり、より違反度合いは重くなるといえる。
そして落下物による二次災害(交通事故)が起きた場合には、落下させた側に賠償責任が発生する。しかしながら、砂が舞い散っている状態を、二次災害につながる落下物といえるのかといえば微妙といえるのではないだろうか。
非常に悪質で常習性があるような状況であって近隣住民が生活環境の改善を訴えるのであればまだしも(この場合は公害訴訟に近い訴えとなるだろう)、たまたま前方を走っているダンプから砂が舞っている程度では、仮に訴えたとして“落下物”として認められるかどうかはあやしい。
視界が奪われたり、路面が滑りやすくなったりするほど砂を落としているのであればまだしも、ちょっとクルマが汚れる、塗装表面に傷がつくといった程度であれば、二次災害につながったとはいえないからだ。
落下物による二次災害の過失は落とした側が100ではない!
そもそも、落下物による二次災害の責任が落下させた側にあるといっても、それは100%の賠償責任を有するという意味ではない。おおよそのイメージとして落とした側が6、衝突した後続車が4の過失割合となる。後続車にはしっかりと車間をとり、前方を注視して安全に運転する義務があるからだ。
ダンプの荷台から砂が舞っている状態を認めるというわけではないが、後続車のドライバーがやるべきなのは、前方のクルマが違反だと憤ることではなく、車間距離をとるなどして自衛することである。

もう一度書くが、落下物による交通事故の過失割合は6:4である。「道路交通法71条4号」の違反だ! とはやし立てても何の意味もない。
ウィズコロナのなかで物流業界を支えるドライバーをはじめとした労働者の方々は「エッセンシャルワーカー」といわれている。物流というのは、全体でみると、われわれの生活のために走ってくれている。常識の範囲内で砂が舞っている程度であれば、後続車側で距離を開けたり、スマートに追い越したりといった対応をすべきだろう。
なお、冒頭でも記したように「積載物の転落・飛散防止措置義務」は、すべてのドライバーに課せられている。たとえばSUVのルーフキャリアに積載したスノーボードを高速道路上で落としてしまうと、この義務に違反したことなる。

そして、そのまま放置すると「転落物の除去義務」違反にもなってしまう。とはいえ、高速道路上でクルマを止めて落下物を拾いに行くというのはあまりにも危険だ。もし、高速道路上で積載物を落としてしまったときには、道路緊急ダイヤル#9910に連絡して、落下させてしまったことを連絡するということを覚えておきたい。