目的はシフトダウン時の荷重変動をなくすこと
乗用車の新車販売のAT率が99%に達した今日でも、ヒール&トゥはスポーツドライビングの代表的なテクニックだ。それゆえに、この時代にわざわざMT車に乗っているユーザーとしては、ヒール&トゥをマスターしたい、あるいは上達しておきたいところ。
ではどうすればヒール&トゥが上手になるのか?
その前に、そもそもなぜヒール&トゥが必要なのかをおさらいしておこう。
従って、正しいヒール&トゥとは
・制動距離が伸びない
・荷重変動(ピッチング)を起こさない
というのが条件になる。
オートバイ(スクーターを除く)に乗っていた人なら、減速しシフトダウンするときに、自然とブレーキレバーを握りながらアクセルをふかして回転を合わせ、シフトショックがでないシフトダウンをしているはずだが、ヒール&トゥはそれの四輪版だと思えばいい。
そういう意味で、二輪の経験が豊富なドライバーなら、ヒール&トゥの上達も早いはず。そうでない人の場合は、いきなりヒール&トゥの練習をするのではなく、まずブレーキを踏まずにシフトダウンの練習だけをしてみよう。
ブリッピング時はブレーキの踏力が抜けないようにする
たとえば4速50km/hで走っているとき、エンジン回転数が2000回転だとして、そこでクラッチを踏んでアクセルをひと吹かしし、700~800回転ぐらい上げて3速に入れてクラッチミート。このとき変速ショックがなく、ヘンな加速Gや減速Gが生じず、同じ速度がキープできていれば成功。さらに同じ要領で3速から2速へもシフトダウン。上手くいったら、また同じ速度をキープしたまま3速、4速とシフトアップし、何度も4速→3速、3速→2速、2速→3速、3速→4速というシフトチェンジを繰り返す。
クラッチをつないだときに減速Gを感じたら、ブリッピングが足りない証拠で、逆に加速Gを感じたらアクセルのあおり過ぎ。そのアクセルの加減を調整して、ピタリと回転が合うポイントを探ること。
そうして各ギヤ間の回転差とブリッピングの量、そして操作のリズムを身体に覚え込ませてしまうのがヒール&トゥの上達の近道だ。
この「同一速度で、変速ショックなし」というシフトダウンを体現できない限り、上手なヒール&トゥはできないので、上手くできるようになるまで根気よく練習を繰り返すのが肝要だ。
この課題をクリアしたら、いよいよブレーキを踏みながらシフトダウンに挑戦。
一番大切なのは、ブリッピングをするときにブレーキの踏力が抜けないこと。ポイントは、ブレーキペダルの真ん中を右足の親指の付け根=拇指球でしっかり踏んで、アクセルペダルはヒール(踵)というより、もう少し前の小指側の外側の線で踏むようにすること。ヒール&トゥの文字どおり、踵でアクセルを踏もうとし、足首をねじりすぎて失敗している人が多いので、いわゆる「足刀」の部分でアクセルを操作する意識でやるといい。
もうひとつ、回転数が低い状態で走っているときにヒール&トゥをやろうとすると、ブリッピング量の調整が難しくなるので、シフトダウン前(ヒール&トゥ直前)のエンジン回転数を、3000回転以上にして練習した方が効果的。
また、「ヒール&トゥ=スポーツテクニック」という考えで、サーキット走行のときだけ練習しようと思うのも×。普段できないことが、サーキットでできるわけがなく、高回転を多用するサーキットでヘタなヒール&トゥをやると、最悪オーバーレブでエンジンに深刻なダメージを与えることも!
ヒール&トゥを本気でマスターしたいなら、普段の街乗りから意識して、人一倍数をかけて練習するのが一番だ。

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