スタッドレスタイヤはスパイクタイヤの代替え品として登場した
50歳代以上の雪国の方なら覚えていると思われるのがスパイクタイヤだ。現在はまったくと言っていいほど見かけないが、その名の通り、スノータイヤの表面に金属のピンを打ち込んだもので、これがツルツルの氷面でもガッチリと食い込むので、しっかりとしたグリップ力を得ることができる。
実際に使ったことがある人に話を聞くと「今のスタッドレスとは比べても、比較にならないぐらい、普通に走ることができた」という。
ちなみに数年前になぜスパイクタイヤそのものが存在したのかというと、輸入ものだったから。スウェーデンなどの北欧ではまだ普通に使われているし、生産もしている。またWRCの冬のラウンドではスパイクタイヤを使っているのを見ることもできる。
現在ではスタッドレスの性能も上がったので、比較してしまえば遜色があるものの、問題になるほどでもないので、一般的な運転であればスタッドレスで十分だろう。まず、現在の日本では生産はしていなくて、禁止ではないものの、政府とタイヤメーカーは作らないという取り交わしをしている。ちなみにスタッドレスという名称自体、スタッド(スパイク)がレス(ない)であることから来ているもので、代替的な製品として登場したことがわかる。

法律では禁止されているのでは? と思う方もいるかもしれないが、まず環境大臣が指定した地域(雪国がほとんど)があって、ここでは積雪や氷結している路面での使用は可能で、ドライ路面では禁止されている。この内容では、指定地域以外ではスパイクタイヤの使用はどこでもできてしまうことになるが、そもそも装着する必要はないし、別の項目では「何人(なんぴと)も協力しなければならない」としているので、全国が対象とも言える。
スパイクタイヤが原因の粉塵は人体にも有害
また自転車用やバイク用で見かけることがあるが、規制の対象としていないので使えるし、緊急車両や障害者の方が運転するクルマも同様だ。クルマ用も例外はあって、ピンが柔らかければスパイクタイヤにならない。ただし、国内タイヤメーカーがスパイクタイヤの生産を中止したあと、実際に樹脂の柔らかいピンを使用したものが輸入されて販売されていたが、柔らかくて意味がなかったことから、しばらくすると見かけなくなってしまった。
決められた地域とはいえ、積雪路での使用ができるのは、そもそも禁止されるきっかけが粉塵だったから。現在でも金属チェーンで走ったあとはアスファルトが削れて凸凹になっていることがあるが、チェーンはすぐに外すのでダメージは最小限としても、スパイクタイヤは冬が終わってからもそのまま走り続ける例が多かった。また冒頭のコメントにあるように、グリップ力が高いので(スタッドレスはなかった)、装着率が7割ぐらいだったのも拍車をかけた。

とくに多かったのは北海道で、それ以外では規制の発端となった仙台市や長野市も問題になっていた。今からは想像つかないだろうが、スパイクタイヤが原因の粉塵はものすごくて、向こうがかすんで見えないほどで、現在問題になっている黄砂以上のレベルだった。とくに仙台市は「仙台砂漠」と呼ばれるほどで、当然、粉塵は呼吸によって人間の体内にも入って有害なため、禁止されるのは当然のことだった。

ただ、現在も輸入品や自分で打ち込む用のピンが売っていたりと、完全に抑え込んでいる状態でもないのが実際のところ。あとはマナーによるしかないのだが、健康被害にもつながるだけに、走りやすいからいいというだけで使うのは避けたい。