工場からの輸送コストを抑えることで値下げを実現した

米国テスラ社のモデル3は、同社が目指すEV普及のための戦略車だ。その販売価格が、今年になって大幅に値下げされた。標準車となるスタンダードレンジプラスが82万円、ロングレンジAWDは156万2000万円もの値下げである。



テスラに問い合わせると、背景にあるのは上海に建設されたギガファクトリーと呼ばれるバッテリー工場が、モデル3専用であり、ことに日本へは輸送距離が近いこともあって大幅な値下げが実現できたとのことだ。逆に、米国市場では値上げになっているという。



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上海のギガファクトリーは最新の工場であるため、モデル3専用という仕様の単純化も含め、品質は非常に高く保たれているという。



これまでも、自動車メーカーが建設する新工場は、工場が設置される国や地域の国情ではなく、設備の新しさによって高い品質が保証されるということがあった。たとえばメルセデス・ベンツCクラスは2014年から南アフリカの工場でも製造され、日本へ輸出された。そのことを懸念する声が日本で上がったことがあるが、当時はドイツ本国の工場より設備が新しく、品質は高いとダイムラー社は回答している。



なんと150万円以上の値下げも! テスラモデル3の「激安化」と国産メーカーへの「不安」



世界では、いまギガファクトリーと呼ばれるバッテリー工場の建設が進んでおり、販売地域の近くで大量生産する効果を示す最大の事例が、今回のモデル3の値下げとなって消費者に利益をもたらした。



日本メーカーのEVに対するアプローチに見える不安

日本の自動車メーカーは、リチウムイオンバッテリーの次とされる全個体電池の実用化に期待をかけている。だが、既存のリチウムイオンバッテリーはすでに原価を下げながら品質を保つ大量生産段階に入っている。一方で日本の自動車メーカーは、リチウムイオンバッテリーの仕入れ先確保に遅れ、Honda eは1000台、マツダMX-30は500台、レクサスUX300eはわずか135台という規模しか国内で販売できず、プラグインハイブリッド車のトヨタRAV4PHVも、昨年は受注停止に追いやられた。



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全個体電池への期待はいいが、それを2020年代半ば前後に導入できても、原価は高いはずだ。リチウムイオンバッテリーも、三菱i-MiEVや日産リーフの発売から10年を経てようやく値下げの話になっている。

全個体電池の実用化がいずれできたとしても、原価が下がるまでにそれから10年かかるとすれば、普及段階となるのは2035年以降だろう。



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その時代には、欧米のいくつかの自動車メーカーはEVメーカーとなる宣言をしており、さまざまな車種がEVとして販売されたとき、日本車は原価の高い全個体電池に固執するあまり、たとえ性能は高くても高級車しかEVにできないという事態に陥りかねない懸念がある。



EVを単なるエンジン車やハイブリッド車の代替としか着想できない思考が、技術や高性能化を追い、大量生産と原価低減への視野が行き届かない日本の自動車メーカーの限界をあらわにしている。

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