トヨタは新型アクアに「快適ペダル」を採用
今年大注目のエコカーの1台が、HV専用コンパクトカーの新型トヨタ・アクア。そのアクアに新搭載された機能のひとつがHVならではの新しい走行体験が可能になる「快適ペダル」。そう、アクセルペダルの操作だけで加速はもちろん、アクセルペダルを緩めることで回生が得られ、減速度を増大してくれる、いわゆるワンペダル機能であり、トヨタとしては初搭載となる。
もちろん、その機能の国産車の先駆者は日産ノート。先代日産ノートが、2016年のマイナーチェンジでシリーズ式ハイブリッドのe-POWERを搭載し、一気に人気が爆発したのは周知のとおり。エンジンは発電のみに使い、駆動はモーターという、電欠の心配がないモーター駆動車だった。そしてそのe-POWERと肩を並べて注目されたのが、e-POWER Driveというワンペダル。アクセル操作だけで加速から減速、停止、停止保持まで行え、もちろん、回生によって電費、燃費が向上する機能である。
それを発展、進化させたのが、2018年に新型リーフに採用されたe-Pedal。先代ノートのワンペダルとどう違うのかと言えば、リーフはアクセルオフ時に、回生ブレーキだけでなく、通常の油圧ブレーキを併用している点。結果、減速度は先代ノートe-POWERの最大-0.15Gに対して最大-0.2Gに達し、より強い減速度が得られるようになっている。

ワンペダルのドライバーへの直接的メリットは、ブレーキ操作なしに減速度(ブレーキ効果)が得られ、ペダルの踏み替え頻度を減らし(70%ぐらい減るらしい)、右足の負担が軽減するだけではない。急ブレーキが必要な際、アクセルペダルからブレーキペダルを操作する間にも減速度が得られることで、減速のための空白時間がより短くなる安全性(衝突回避)でのメリットも見逃せないポイントだ。細かい点では、ブレーキパッドの減り低減もあるはずだ(経済的!?)。
ただし、日産車で言えば、ECO/SPORT(SMART)モードで発揮される初期のワンペダル機能は、先代ノート、セレナe-POWERでもそうだったのだが、減速感に違和感があり、慣れないと走りにくかったものだ。

が、新型ノートe-POWERでは、そうしたワンペダル機能のネガティブさはほぼ解消され、新型ノートオーラに至っては、ワンペダル嫌いのボクでも、むしろ積極的に使いたいシーンも増えたほど。とくに、これまで気になりがちだった12km/h以下での止まり際のスムースさが向上し、ワンペダルの違和感はかなり低減されているのである。補足すれば、ドライブモードのデフォルトはECOモードだから、スイッチ操作なしにワンペダルとなり、日産としてはワンペダルを積極的に使ってください……とアピールしているように思う。
ワンペダル機能の減速感は好き嫌いが分かれる
ワンペダル機能を日産の次に採用したのは2020年10月に発売されたホンダのシティコミューターピュアEVのホンダeである。それは「シングルペダルコントロール」と呼ばれ、アクセルペダルの操作により加減速の調整や停車、停車状態の保持を行うシステムであることは日産などと同じだが、ステアリング奥にある左右のセレクター(+-)で、ステアリングから手を放さずに減速度の強さを3段階で変更できるのが特徴だ。つまり、ホンダらしく、回生による減速度を、パドルシフトによるシフトダウン/シフトアップ、同様に、走りにも積極的に使えるようにしているというわけだ。

また、新型ノートe-POWERのワンペダル機能には、停止機能がつかなくなった(減速のみ)のだが、ホンダeのシングルペダルコントロールはアクセルペダルの操作によって加減速の調整はもちろん、停車、停車状態の保持まで行ってくれる。具体的には、アクセルペダルを緩めると、ブレーキペダル操作なしで停車まで減速し、停車したあとは自動的に停車状態を保持。アクセルペダルを踏むと停車保持機能が解除し発進……という流れになり、10分以上停車保持した場合は、電動パーキングブレーキが自動で作動する。

話を新型アクアに搭載された「快適ペダル」に戻せば、ワンペダル機能は、ドライブモードの「POWER+モード」のみで作動。アクセル操作のみで加減速ができる制御が盛り込まれているのは当然だが、新型ノート同様に、完全停止はしない。まだ未試乗なので、「快適ペダル」の減速感については言及できないが、おそらく、低速域を含めたスムースな減速感が得られるように制御されているはずである。完全停止まで行わないのは、最後の停止は、あくまでドライバーの操作に委ねる、ということではないだろうか。レーダークルーズコントロールが全車速追従&停止保持機能を持っていることから、できないことはないのに、である。
こうして、トヨタの新型アクア、日産のリーフやノートなどのe-POWER、ホンダeのワンペダル機能を見ていくと、完全停止まで持っていけるのは日産リーフのe-Pedalとホンダeのシングルペダルコントロール。自動的にワンペダル機能が働くのは日産車(ドライブモードのデフォルトのECOモードにて)。ステアリングのパドルシフトで減速度を3段階にコントロールできるのはホンダeのシングルペダルコントロール。新型アクアの「快適ペダル」は力強い加速が得られるPOWER+モードでのみで、ブレーキペダル操作なしの自然な減速が可能ということで、それぞれに機能差、個性がある。

いずれにしても、いわゆるワンペダル機能、その減速感は、ドライバーによって好き嫌いがあるから、実際に試乗し、低速、中速、高速域で試してみるのが一番だ。もちろん、日産車ならドライブモードのNOMALモードを選べばワンペダル機能は作動しないし(デフォルトのECOモードからの切り替えは必要)、新型アクアはドライブモードをPOWER+モードにセットしなければ「快適ペダル」は機能しない。
ホンダeにしても、シングルペダルコントロールスイッチで機能のON/OFFが可能だから、ワンペダル機能が”今は”なじめなくても、だからそのクルマを選ばない……という理由にはならないだろう。いずれにしても、安全性にも直結し、高齢者ドライバーのアシスト(ブレーキを踏む回数が減り、ペダルの踏み替え時も安心安全)にもなる機能だから、クルマ選びの選択ポイントのひとつとして挙げるのも悪くない。

ちなみに、アクセルペダル操作だけで完全停止までできる先代ノートe-POWERの中古車を狙うなら、ECO/NOMALモードでアクセルオフしたときの減速感の体験、チェックは不可欠。けっこう”クセ”のある減速感(度)ですから……。