軽トールワゴンのデイズと軽スーパーハイトワゴンのルークス
従来、他社からのOEMで軽自動車をラインナップしていた日産。近年は三菱と共同で立ち上げたNMKVで開発した軽自動車を展開しています。
現在ラインアップされているデイズ、ルークスと日産主導で開発された軽自動車はどのような特徴があり、両車にはどういう違いがあるのでしょうか。
■日産の軽自動車の歴史
日産が販売する軽自動車について、2013年に発足した三菱との共同開発会社『NMKV』の設立前と後とは大きく違ってきます。
軽自動車市場の拡大を受け、日産が初めて軽自動車を市場に投入したのは2002年の初代モコ。その後、クリッパー、オッティ、ピノ、キックスとラインアップを拡大していきますがそれらはすべて他社からのOEMでした。
しかしNMKV設立後、三菱主導ではあるものの日産が企画から関わった初代デイズが登場。2代目となる現行デイズはプラットフォームとパワートレインを新開発するなど、三菱主導から日産主導に移り変わって登場しました。
スズキからOEM供給を受けているNV100クリッパー、およびNV100クリッパー リオも販売されてはいますが、ルークス、デイズはNMKVで日産が開発した軽自動車となります。
■日産の軽自動車の大きな特徴とは
数ある軽自動車のなかで、日産の軽自動車が備えているのが最先端技術『ニッサン インテリジェント モビリティ』を搭載していること(NV100クリッパー、クリッパー リオは除く)。
「インテリジェントドライビング」「インテリジェントパワー」「インテリジェントインテグレーション」をテーマに、安全、電動化、つながるクルマを目指す日産の先進的テクノロジーが備わっていることが大きな特徴です。
なかでも日産自慢の先進安全装備「プロパイロット」は他社の軽自動車にはない先進装備となります。

「プロパイロット」とはアクセル、ブレーキ、ハンドル操作をクルマがアシストするACC(全車速追従型クルーズコントロール)+レーンキープ機能(レーンキープアシストシステム)を組み合わせた先進装備。スカイラインなどに搭載される「プロパイロット2.0」ではハンズフリー機能も備わっています。
プロパイロットの設定車速は約30~100km/h間で対応可能。先行車の速度が0km/hになるまで追従走行ができ、停止時間が3秒以内であれば再発進も自動で行ってくれます。
ただし、先行車がいない場合はステアリング制御の速度が制限されていて50km/h以下は作動しません。
ロングドライブや渋滞時の低速走行時のストレスを低減してくれる有効な先進装備と言えますね。

プロパイロットはデイズ、ルークスともに上級グレードに装着が可能。装着できないグレードもあることは要注意です。
その他、安全機能としては車両を上空から見下ろすような映像で駐車を支援する「インテリジェント アラウンドモニター」、前方衝突予測警報「インテリジェントFCW」、衝突回避をアシストする「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」などを装備。
また、急病時や危険を感じた時にスイッチを押すことで専門オペレーターに繋がる「SOSコール」も用意。近年、とくに問題となっているあおり運転でのトラブル時などにも有効な装備です。

■過去に発売されていた日産の軽自動車を振り返る
・モコ(初代:2002年~2006年/2代目:2006年~2011年/3代目:2011年~2016年)
日産初となる軽自動車がモコでした。初代モコはスズキMRワゴンのOEMとして共有されましたが、フロントマスクやバンパーのデザインが変更されていました。

2代目、3代目も同様に専用のフロントマスクを与えられていますが、これもMRワゴンのOEM。NMKVで開発されたデイズの登場により、2016年でモデルが廃止となっています。
・オッティ(初代:2005年~2006年/2代目:2006年~2013年)
オッティは三菱eKワゴンのOEM。モコに次ぐ、日産の軽自動車第二弾として販売が開始されました。
供給元となるeKワゴンがフルモデルチェンジされたことで初代の販売は1年余。2代目はeKワゴンとフロントマスクを変更し販売され、2013年にデイズが登場したことでブランドは消滅しています。

・ピノ(2007年~2010年)
スズキからアルトをOEM供給されて登場したのがピノ。他のOEMモデルと同様にフロントマスクがオリジナルデザインに変更されています。
女性をターゲットとしたモデルでしたが、ハイトワゴン全盛のなか1代限りでモデルが消滅しました。

・キックス(2008年~2016年)
現在販売されているSUVとは違い、以前、三菱からOEM供給を受けていたパジェロミニの車名がキックスでした。パジェロミニの生産終了により、軽自動車のキックスは1代限りで販売を終えています。

・クリッパー(NV100クリッパー)、クリッパーリオ(NV100クリッパー リオ)
(初代:2003年~2013年/2代目:2013年~2015年/3代目:2015年~)
クリッパーはセミキャブ軽ライトバンの商用、乗用車。クリッパーが商用モデル、クリッパー リオが乗用モデルとなります。

初代は三菱ミニキャブ、2代目はスズキ・エブリイのOEMで、現行モデルとなる3代目もNMKVで開発したわけではなく引き続きスズキからエブリイを供給されています。
■デイズ&ルークス徹底比較
先程、お伝えしたように現在発売しているデイズとルークスは日産主導で開発された軽自動車です。現行デイズは2019年3月、ルークスは2020年2月にデビュー。それぞれどのようなクルマかを比較していきましょう。
・成り立ち
KMKVが商品開発を行い2013年に初めて市場に投入されたのが初代デイズ。eKワゴンとの兄弟車ですが、外観やグレード、オーテック版の設定など従来のOEM車とは大きく異なっていました。2019年のフルモデルチェンジにより現行モデルが登場しています。

ルークスは初代が2009年にデビュー。初代はスズキ・パレットのOEM車でした。2013年にKMKV開発によるデイズルークスにフルモデルチェンジ。こちらも三菱eKスペースの兄弟車でした。2020年のフルモデルチェンジで車名をルークスに戻し、現在まで販売されています。

・ボディタイプ
両車はともに室内スペースの広さを重視した軽自動車ですが、デイズは軽トールワゴン。ルークスは軽スーパーハイトワゴンと区分けされます。

ちょっとわかりにくいですが、ライバル車となるのがデイズはスズキ・ワゴンRやダイハツ・ムーヴ、ルークスはホンダN-BOXやダイハツ・タントとなります。
・室内空間
ともに広大な室内空間を有した軽自動車ですが、それでも違いはあります。まず、室内空間のスペックから。
デイズは室内長2065mm×室内幅1340mm×室内高1270mm。一方、ルークスは室内長2200mm×室内幅1335mm×室内高1390mm。スペック的にはルークスのほうが長く高いのが特徴で、その分、シート高も高めに設置されています。

デイズの後席はライバル車たちに比べてとくに足元の広さが特徴。
また、ラゲッジの奥行きもルークスがデイズを上回り、リヤシートを通常の位置にしていてもかなりの広さを確保。ただし、デイズもリヤシートを一番前までスライドすれば特大サイズのスーツケースを積載可能なほどのスペースを有しています。
・パワーユニット
デイズに用意されているのは最高出力52馬力を発揮するBR06型、スマートシンプルハイブリッドのBR06-SM21型、最高出力64psを発揮するインタークーラー付きターボ(スマートシンプルハイブリッド)のBR06-SM21の3タイプを用意。

ルークスはスマートシンプルハイブリッドのBR06-SM21型とインタークーラー付きターボのBR06-SM21の2タイプとなり、ノンターボのBR06型は搭載されません。

BR06エンジンはルノー/日産アライアンスグループの直3BR08型をベースに排気量を659ccまでボアダウン。スマートシンプルハイブリッド仕様はセレナに採用されているSハイブリッドとは違いふたつの鉛バッテリーのひとつをリチウムイオンバッテリーに変更した進化版となります。
・グレード&装備
デイズのグレードは標準ボディ、カスタム仕様のハイウェイスター、ファンシーなカラーを身にまとうボレロと大きく3つに分けることが出来ます。標準ボディはNAエンジンを搭載するS、X、ハイウェイスターはスマートシンプルハイブリッドを搭載するXとターボエンジンを搭載するGターボを基準に多彩なグレードを用意。ボレロはNAエンジンを搭載する1グレードとなります。

ルークスのグレードはデイズよりシンプルな構成です。標準ボディはスマートシンプルハイブリッドを搭載するSとX、ハイウェイスターはXとGターボをベースに多彩なグレードを設定。またフロントグリルやホイールなど専用パーツを装着したオーテックも用意されています。

ルークスはアイドリングストップ、バッテリーアシスト、エマージェンシーストップシグナル、ヒルスタートアシストなどが標準装備となるなど細かい装備の違いはありますが、プロパイロット、インテリジェント アラウンドビューモニター、SOSコール、インテリジェントFCWなどの安全装備は両車とも限定されたグレードとなりますが装着が可能です。
■プロパイロットに続く目玉は軽EV
近年、軽自動車市場ではホンダN-BOXが圧倒的な人気を集め、6月も1万7479台を売上げて販売ランキングの1位を確保しています。
スズキ・スペーシア、ダイハツ・タントなどのスーパーハイトワゴンがそれに続くなか、ルークスは4859台の9位、デイズは3190台の11位につけました。
スズキやダイハツはもちろん、ホンダにも販売面で劣っていますが、ルークスは前年累計比209.9%と健闘しているとも言えます。

激しい販売競争が続く軽自動車界においては他社も安全装備の充実に力を入れており、日産もプロパイロットに続く目玉がほしいところ。
その目玉が軽自動車の電動化になるようです。7月28日に行われた2021年度第1四半期決算説明会で代表執行役社長兼CEO 内田誠氏が軽自動車EVを2022年初頭に国内販売すると発表しました。
三菱との関係もあるのでしょうが、軽EVをはじめ今後、どのような軽自動車を投入してくるか日産の展開に注目しましょう。