この記事をまとめると
■国内ラリーの競技会場では定期的にレスキュー訓練が行われている



■レスキュー隊員からの指導を受けながら関係者も訓練に参加



■クルマを切断できる数百万円の工具などが用意されている



モータースポーツは危険の連続! レスキュー訓練も気が抜けない

スーパーGTのレースウィークに各サーキットで開催されているレスキュー訓練。文字どおり、競技中にクラッシュしたマシンから、ドライバーを脱出させるための方法を学ぶトレーニングで、オフィシャルを対象に行われているが、こういったレスキュー訓練が国内ラリー競技の会場でも行われていることをご存じだろうか?



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以前から全日本ラリー選手権を中心に年に数回のペースでオフィシャルおよびドライバー&コドライバーを対象にしたレスキュー訓練が実施されており、2021年も第3戦のツール・ド・九州の舞台、佐賀県唐津市で行われていたのだが、2022年のWRCをターゲットにしているのだろう。ラリージャパンのテストイベントとして11月12日~14日、愛知県および岐阜県を舞台に開催せれたセントラルラリーでもレスキュー訓練を実施。

車検が行われた12日、サービスパークが置かれた豊田スタジアムの敷地内にて、大会主催者のMOSCOおよびJAF、そして豊田市消防本部の共同で本格的なトレーニングが実施されていた。



車体切断から心臓マッサージまで! ラリー競技の「陰の功労者」オフィシャルのレスキュー訓練の凄まじさ



最新工具やFIA指定の道具を利用して最強のバックアップ体制を確保

最初に実施された項目が、ドライバー、コドライバーを競技車両から引き出す方法を学ぶためのトレーニングで、競技車両がスペシャルステージでクラッシュし、ドライバーが意識を失っていることを想定したうえでセントラルラリーの大会医師団が具体的な方法を実演。首の固定など重要なポイントを説明した上で、今度は大会のオフィシャルたちが搭乗者の脱出を実践していた。



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次にクラッシュ車両に足を挟まれたドライバーを救出するための方法を豊田市の消防隊員がレクチャー。特殊工具を使用してフロントスクリーン&サイドスクリーンの削除、Aピラー、ロールゲージを切断、さらにドアパネルを切断したうえで、フロント側を引っ張り、搭乗者を救出する一連の作業を実践して見せた。



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そのほか、MOSCOでレスキュー訓練を重ねてきたオフィシャルもFIAで指定されている最新の工具でAピラーやルーフ、ドアパネルなどの切断を実演。

ちなみに、WRCの開催をするためには、要救助者をエア圧で固定して運ぶためのストレッチャーなどFIAの指定工具が必須になるようだが、今回のトレーニングで使用された切断および挟んだり、開いたりする工具も1台で250万円するらしい。それでも100トンの力で、Aピラーでもロールゲージでもブチブチと切断したり、ドアパネルをこじ開けたりできるだけに、レスキューの現場では心強いアイテムだと言えるだろう。



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自身もドライバーとして活動するほか、セントラルラリーでは医師団長を務めた青山康氏にレース競技におけるサーキットでのレスキューとラリー競技におけるスペシャルステージのレスキューの違いに尋ねると次のように説明してくれた。



「まず、サーキットと違ってスペシャルステージは山の中なので、レスキュー現場が平坦とは限らない。それに圧倒的な違いは、救急車がクラッシュの現場に到着するのに時間がかかるので、最初に事故現場に接するオフィシャルは、サーキット以上にレスキューの役目を担う必要がでてきます」



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そのため、前述のとおり、ラリー会場では全日本選手権を中心に度々、レスキュー訓練が実施されており、時にドライバー&コドライバーも参加して、心臓マッサージや人工呼吸のやり方がレクチャーされるなど、サーキットを舞台にしたレース競技以上に、大規模なトレーニングが実施されているのである。



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