この記事をまとめると
■クルマのペダルには吊り下げ式と床生え式の2タイプが存在する



■床生え式ペダルはその動きが足の動きと一致するため操作性に優れるとされている



■とはいえ吊り下げ式の操作性に不満を覚えるケースはなくどちらが優れているとは言えない



ポルシェマツダがこだわる床生え式ペダル

ほとんどの人は意識していないだろうが、ドライバーインターフェースのうち「足」の部分、つまりペダルに種類があることをお気付きの方が何人いるだろうか。まあ、ペダルの種類と言われても、唐突な印象を受けるだけかもしれないが、じつは2タイプ、吊り下げ式と床生え式のふたつがある。



それぞれ、文字どおりの構造で、アクセル、ブレーキ、クラッチ各ペダルの支点が、上方にあるか下方にあるかの違いで、上方支点のものはペダルが吊り下げられるかたちで設定され、下方支点のものはペダルが床から生えているかたちで設定されている。

もっとも、下方支点のブレーキペダル、クラッチペダルは、現在では珍しく(かつてはレーシングカーがこの方式だった)、ほぼアクセルペダルのみに採用される方式となっている。



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では、なぜふたつのペダル方式が混在しているのか、ということだが、これは車体構造の歴史にも関係した話で、いずれが正論かと白黒判別できる問題ではない。メーカーによっては慣習的に使い続けた方式だから、と回答するところもあることだろう。ただ、あえて理詰めで説明しようとすれば、下方支点のペダルは人間工学的に有利な条件を備えている。



どちらも操作感に不満を感じることはないはず

下方支点のアクセルペダルは、足踏み式のペダルによって音を出す楽器のオルガンと似たペダルであることから、オルガン式ペダルと呼ばれているが、床を支点に動くペダルの動きと、かかとを支点にペダルを踏み込む人間の足の動きが一致することから、疲労感が少なく、正確なアクセルペダルの踏み込みができることを採用の理由に挙げるメーカーもある。



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このことは、上方支点の吊り下げ式アクセルペダルと比較すればわかりやすく、床を支点に弧を描く足先の動き(下方)と、上方を支点に弧を描くアクセルペダルの動き(上方)は正反対となり、アクセルの踏み込み量によって足裏とペダルの接触状態が変化する特徴がある。といっても、全閉時から全開時にいたるペダルの踏み込み量を、ペダル支点との角変化に置き換えれば、操作に支障のないわずかな変化と言うこともできる。



では、どちらの方式が優れているかということになるのだが、確かに人間の足とペダルの動きが一致するオルガン式に分があるようにも思えるが、経験的に吊り下げ式ペダルの操作感、操作性に不満を覚えるケースはなく、厳密に言及すれば、ペダルのフリクション感がどうであるとかいった話にもなり、一長一短で結論付けられる問題ではない。



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話は元へ戻るが、現在のクルマはアクセルもドライブ・バイ・ワイヤ方式が多く、かつてのクルマのようにアクセルワイヤーやロッド類を介してスロットルバルブを機械的に開閉する例は少なくなった。ベタルの踏み込み量をセンサーで検知し、スロットルバルブに電気信号を送る電子制御スロットル方式では、ペダル踏力や踏み込み量の設定も自在に行え、アクセルペダルはスイッチの役割しか果たしていないという事実もある。



吊り下げ式とオルガン式が併存する理由。それは、いずれか一方が優れているという話ではなく、どちらも伝統的に採用し続けてきた方式で決定的な長短はなく、操作する側も無意識のうちに対応してきた方式のため、いずれに対しても違和感のないものだ。

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