この記事をまとめると
■ここ数年でグリルデザインに大きな変化が訪れている



■大型化する傾向が世界中で目立っている反面、BEVではグリルレスというケースもある



■グリルが締める範囲は大きいがそれだけでカーデザインを評価するのはあまり得策ではない



巨大化もあればレスもあるほど多様化するグリルデザイン

最近は何かと新車のグリルの大きさが話題になります。自社の独自性を打ち出したり、あるいは商品力アップのためなど、理由はいくつかありそうです。



では、デザイン的な視点で見た場合、グリルは大きいほうがいいのか小さいほうがいいのか、あらためて考えてみたいと思います。



●巨大グリルを好むのは日本人だけ?

いまやすっかり定着した巨大グリルですが、直接的には軽自動車のカスタムグレードが契機になったようです。「ワゴンR」や「ムーヴ」に始まり「タント」などトールワゴンタイプへも展開、その成功に乗って5ナンバーミニバン、Lクラスミニバンへと波及しました。



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そして、最近の盛り上がりはやっぱり新型「ノア」「ヴォクシー」が発信元でしょう。巨大なグリルというより、もはやフロントフェイス全体がグリルという凄まじいことになっています。まあ、格上の「アルファード」や「ヴェルファイア」もなかなかですが……。



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意外ですが、日本車メーカーがグリル形状を本格的に意識するようになったのは割と最近のことです。



デザイン部署の充実に伴い、自社のデザインコンセプトを明快にしようと模索する中、恐らくドイツプレミアム勢の「統一された顔」を参考にしたのでしょう。すでに1990年代後半には日産が欧州向けに設けた「ウインググリル」といった事例がありましたが、トータルなコンセプト立てには至っていませんでした。



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結果、いまではトヨタの「キーンルック」「アンダープライオリティ」、日産の「Vモーショングリル」、マツダの「シグネチャーウイング」、三菱の「ダイナミック・シールド」といったデザインテーマが確立、絶賛展開中です。



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そのなかで、先のような巨大グリルは、おもに国内向け商品、ドメスティックカーでの確信犯的デザインだと思われていました。日本人固有のヤンキーな感性に響く造形です。



ところが意外なことに、ここに来て一部欧州勢でも同様の動きが出始めて来たのです。



ご存じのとおり、最近のBMWはキドニーグリルを拡大しつつありますし、プジョーは独特な「セイバー」を用いてフロントフェイスの演出を高めています。



同じく、DSオートモビルズでも「DSウイング」を掲げ、とにかくフロントフェイス勝負の動きが進んでいるのです。



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ラジエターが不要なことがデザイン面でメリットになる場合も

●グリルレスもまた個性の見せ所

一方で、最近はグリルを小さくする流れも出てきました。ひとつはBEVを中心にした「グリルレス」の流行です。フロント部に大きな冷却装置を必要としないBEVでは従来タイプのグリルが不要であり、だったらそれを表現の特徴にしようという流れです。



具体的には、一連のテスラ車やボルボの「C40」、トヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」の兄弟車などがそれです。



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また、レクサスの「RZ」では自慢のスピンドルグリルをボディと一体化させる試みが行われており、これもグリルを目立たせない手法のひとつと言えるでしょう。



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いずれもボディ全体には特段「EVらしさ」が溢れているわけではなく、ある意味従来の「クルマらしさ」のままですが、そのうえでグリルレスとすることで、確かに新鮮でユニークな表情を獲得しています。



そしてもうひとつ、デザインのシンプル回帰があります。マツダが掲げる「引き算の美学」もそうですが、最近のホンダ車は、「フィット」「ヴェゼル」とグリルも含めて過剰な表現を回避。



その結果、新型「ステップワゴン」は、先のノア、ヴォクシーと対照的な存在として大きな話題になっています。



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●顔はカーデザインのすべてではない

こうして二極化が進むグリルですが、デザイン的に見た場合、どちらかが優れていると言えるのでしょうか? もちろん、答えはノーです。



そもそも、グリルばかりに注目しがちな昨今の傾向に大きな問題があります。カーデザインにとって「顔」は重要な要素ですが、しかしあくまでも一部であって、本来はボディ全体で語られるべきなのは言うまでもありません。

フロントは要素も多く差別化がしやすい部分ですが、そこばかりに集中するのはあまりに安易です。



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そのうえでグリルに求められるのは、間違いなく普遍的な魅力と言えるでしょう。短期的な視点で次々に変えたり、一時の流行に乗るのではなく、長い期間に渡ってユーザーから愛されるデザインです。



大小を含めた表現の善し悪しは、その次に語られるべきことなのです。

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