この記事をまとめると
■「併用軌道」は路面電車の線路を指す■道路交通法では軌道通行禁止が大原則
■観光や転居の際は自治体のHPを見ておくと良い
「併用軌道」は路面電車の線路を指す
先日、北海道・札幌において「併用軌道」に駐車したドライバーが監視カメラの映像を元に検挙されたというニュースがあった。現行犯ではなく、ドライバーを特定してまで検挙するということは、併用軌道への違法駐車というのはそれだけ悪質な行為というわけだが、はたして併用軌道とは何のことで、なぜ軌道内への駐車が厳禁なのだろうか。
「併用軌道」という四字熟語では、どんなものかイメージしづらいが、そもそも「軌道」というのは、いわゆる2本のレールが敷かれた線路のこと。
仮に路面電車が走っていなくとも、線路上に違法駐車をすれば電車の運行を妨げることは自明で、併用軌道に駐車することはもとより、線路上を走るという行為がNGなのは想像できると思う。
では、路面電車が走っているような道路で、ドライバーはどのように振る舞えばいいのだろうか。基本的なことは道路交通法の第二十一条と第三十一条に記されている。
第二十一条 車両(トロリーバスを除く。以下この条及び次条第一項において同じ)は、左折し、右折し、横断し、若しくは転回するため軌道敷を横切る場合又は危険防止のためやむを得ない場合を除き、軌道敷内を通行してはならない。
2 車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、軌道敷内を通行することができる。この場合において、車両は、路面電車の通行を妨げてはならない。
一 当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
二 当該車両が、道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分を通行することができないとき。
三 道路標識等により軌道敷内を通行することができることとされている自動車が通行するとき。
3 軌道敷内を通行する車両は、後方から路面電車が接近してきたときは、当該路面電車の正常な運行に支障を及ぽさないように、すみやかに軌道敷外に出るか、又は当該路面電車から必要な距離を保つようにしなければならない。
(罰則 第百二十一条第一項第五号〔二万円以下の罰金又は科料〕)第三十一条 車両は、乗客の乗降のため停車中の路面電車に追いついたときは、当該路面電車の乗客が乗降を終わり、又は当該路面電車から降りた者で当該車両の前方において当該路面電車の左側を横断し、若しくは横断しようとしているものがいなくなるまで、当該路面電車の後方で停止しなければならない。ただし、路面電車に乗降する者の安全を図るため設けられた安全地帯があるとき、又は当該路面電車に乗降する者がいない場合において当該路面電車の左側に当該路面電車から一・五メートル以上の間隔を保つことができるときは、徐行して当該路面電車の左側を通過することができる。
(罰則 第百十九条第一項第二号の二〔三月以下の懲役又は五万円以下の罰金〕)
第二十一条では、一般の車両は原則的に併用軌道内に進入することを禁じている。
例外として、危険回避でやむを得ないとき、工事や災害などで道路が狭くなっていて軌道に入らざるを得ないとき、道路標識によって通行が認められている場合を挙げている。
観光や転居の際は自治体のHPを見ておくと良い
なお、標識などによって併用軌道内の走行が認められているケースでも、路面電車が接近してきた場合にはすみやかに軌道の外に出るか、路面電車と十分な距離を保つことが条件となっている。
第三十一条は、路面電車の乗降時に関する部分で、基本的には停車中の路面電車に追いついた場合は後方で待機していることが求められる。ただし、利用者のための安全地帯がある場合や乗降する人がいない場合は、1.5m以上の間隔をあけて徐行することで追い越しできるとされている。
とまあ、道路交通法を見てもわかりづらいわけで、日常的に路面電車のある道を走っていないドライバーにとっては、上手に路面電車と共存する運転というのは難関といえるだろう。

もし観光や転居で路面電車のある街をクルマで走るのであれば、そうした地域の自治体が出している注意喚起やパンフレットをチェックしておくといい。
たとえば、万葉線の走る高岡市(富山県)のホームページにいくと、「万葉線からのおねがい」といったリーフレットをダウンロードすることができる。
そこには路面電車のある道を走る際の交通ルールと交通マナーがまとめられている。

主だったところを抜き出すと以下のようになっている。
1.右折・Uターン・追い越し等で軌道敷内に進入する時は、後方からの電車の確認と、充分な距離があるか、安全を必ず確認してください。(電車は急に止まれません。)
2.電車が接近している時は、電車が通過するまで白線の外側でお待ちください。
3.電車乗降のお客様が道路を横断される際には、一旦停止でお客様の安全確保に、ご協力をお願い致します。
基本的には、路面電車とは距離を置いて、電車の運行をじゃましないことが大切だ。なにより重要なのは路面電車利用者(歩行者)の安全で、乗降時などはしっかり後方で停止して人身事故につながらないようにすることを大いに意識したい。