この記事をまとめると
■自動車のCMを見ると製品の性能の優秀さを謳う内容が多い



■謳われる性能は高出力を競うものから燃費性能や車体剛性に移り変わった



■ユーザー心理に働きかけ、販売への影響力が大きいセールスポイントがアピールされる



時代とともにCMでアピールされる内容が変化している

見る側に、商品の優れている点や魅力を大きくアピールし、商品購入の際にはその製品が選ばれるようユーザー心理に働きかけるのが、CMやそのキャッチコピーだ。この視点で自動車のCMを眺めると、性能の優秀性を謳う内容が多いことに気付かされる。考えるまでもなく、工業技術の粋を集めた製品が自動車なのだから、性能をアピールし、それを商品の訴求ポイントにするのは当然の発想と言えるだろう。



自動車のCMやキャッチコピーも時代と共に変化! いまイメージ...の画像はこちら >>



日本のモータリゼーションは、1960年代に急速な発展を見せるが、CMの訴求内容もこの進展に歩調を合わせ、当初は高級、上質な大型耐久消費財という視点で作られていたものが、技術の進化、車種の多岐化で競合車が増えると、価値観の主軸を性能に置き換え、どれほど自社製品が優秀であるか、この点を訴求するCM作りに変わってきた。



この方向性は、現在も基本的には同じで、新型車がいかに優れた性能を持つかをアピールすることに軸足が置かれている。最近の傾向で言えば、時代性を反映してか、燃費性能や車体剛性が強調される例を多く目にすることができる。特徴的なのは、かつてメーカー間の申し合わせで最高出力が280馬力に制限されていた時代から、その規制が解かれると動力性能を正面に打ち出し商品力としてアピールする例が減ったことだ。現在では、日本車、外国車を問わず、大排気量エンジンとターボチャージャーを組み合わせれば400馬力、500馬力は楽々達成可能で、その気になれば大馬力のクルマは簡単に出来るという認識が行き渡り、一般的な自動車の価値観で高出力が持つ商品力が薄れてきたように感じられるからだ。



自動車のCMやキャッチコピーも時代と共に変化! いまイメージよりも「性能アピール」が全盛なワケ



むしろ、エンドレスで進化を見せているのが、燃費性能や車体剛性の向上だ。燃費性能は、ハイブリッドシステムが普及して以来、ガソリン1リッターで果てしなく走れるような印象を与えるようになってきたが、電気モーターによる動力アシスト、燃焼制御の進化に加え、エンジン本体の熱効率を改善する研究開発が継続的に進められる現状にあって、燃費性能の進化は著しい。



走行性能に関わると知られているボディ剛性はアピールしやすい

実際、燃費性能の向上は、ユーザーにとって使用燃料量の低減を意味し、懐に優しい性能進化とも受け取られているが、社会的には消費燃料量の低減化は、排出ガス総量の低減を意味し、二酸化炭素の削減に直結する重要な性能向上と受け止められている。いずれにしても、燃費性能の向上がユーザー心理に働きかける影響力は大きく、セールスポイントとして必要不可欠な要素となっている。



ボディ剛性についても、新型が登場するたび「対前モデル○%アップ」といった表記を目にするが、これも材料工学や製法の進歩によって無限に進化を続けているような印象を受ける。車体剛性については、ねじり/曲げ剛性に関してこの数値があれば絶対という基準値はなく、また完全剛体を実現するのも事実上不可能なことで、前製品に対して相対的に性能が向上したことを、アピールポイントとして強調している。



自動車のCMやキャッチコピーも時代と共に変化! いまイメージよりも「性能アピール」が全盛なワケ



もっとも、実際のところ、ボディ剛性の向上を体感できるドライバーが何人いるのかという話だが、ボディ剛性の向上が走行性能(サスペンションの支持剛性、所期の動きの実現など)に及ぼす影響が大きいことは、メーカーのPR、専門誌などのリポートでよく知られており、メーカーは新型車のPRポイントとしてこの点を突いてくるわけだ。



こうした状況は、技術が日々進化していることを裏付けるもので、素材でいえば、構造材として用いる高張力鋼板の進化が、車体剛性の向上に大きく関わっている。簡単に言えば、通常の鋼板に比べて薄く(=軽く)強度に優れた鋼板のことで、降伏点や引っ張り強度のレベルから、スーパーハイテンションスチール、ウルトラハイテンションスチール、エクストリームリーウルトラハイテンションスチールなどに分けられ、配合成分の改良、製造方法(温間/冷間)の進化によって、より軽く、より強度に優れた鋼板が次々と登場しているのが現状だ。



自動車のCMやキャッチコピーも時代と共に変化! いまイメージよりも「性能アピール」が全盛なワケ



もちろん、車体剛性という意味では、最新のル・マン・プロト(ハイパーカー)に代表される、ルーフまで一体化したカーボンフルモノコックシャーシーを見れば、量産車とは次元の異なるレベルにあることはすぐに理解できると思うが、超々高張力鋼板をプレス加工、溶接で組み上げた市販車のモノコックボディ(プラットフォーム)も、日々進化を遂げる自動車メカニズムとして、確実にその性能を引き上げている。技術の進化は、過去の常識では考えられない性能の確立を可能にしている。

編集部おすすめ