この記事をまとめると
■タイヤには「ラベリング制度」と呼ばれるグレーディングシステムがある■転がり抵抗とウエットグリップ性能の等級を知ることができる
■日本と欧州のタイヤラベリング制度では等級の表記が異なる
転がり抵抗とウェットグリップ性能の等級を知ることができる
自動車にとってタイヤというのは、路面と接触している唯一の部品であり、走りを支える重要なパーツのひとつ。どんなにパワフルなエンジンを積んでいても、タイヤのグリップ性能以上のパワーを路面に伝えることはできないし、どんなに優れたテクニックのドライバーでもタイヤの性能以上のコーナリングをすることはできない。
しかも、タイヤというのは消耗品であり、徐々に減っていくものだ。
日本では2010年1月から導入されたラベリング制度では転がり抵抗とウエットグリップ性能を、それぞれ等級づけて、消費者がリプレイスタイヤを選ぶ際の参考になるようしている。
その基準は次のとおりだ。
このように、転がり抵抗係数は5段階、ウエットグリップ性能は4段階でラベリングされている。
なぜ、この2つの要素でラベリングしているかといえば、それぞれが相反する要素でありながら、自動車ユーザーにとって重要なファクターとなっているからだ。

転がり抵抗が小さいということは、それだけ省燃費につながる。これは経済性に優れているということでもあるあし、CO2排出量の削減を求める社会的なニーズにも対応する性能といえる。
ウエットグリップとは、雨の日の安全性につながる要素だ。雨天時には、晴天のときに比べて交通事故が5倍になるという数字を目にしたことがあるかもしれないが、スリップ事故はウエット路面で起こりやすくなる。ウエットグリップ性能は安心につながる基準といえる。
さて、転がり抵抗が小さいタイヤというのはプラスチックのような変形量の少ないタイヤをイメージするかもしれないが、そうしたカチカチのタイヤではウエットグリップで不利なのは想像に難くない。
日本でいう「AA」が欧州では「B」!
ところで、欧州にもタイヤラベリング制度というのはある。そして、さまざまな場で欧州基準のラベルをつけたタイヤを見かけることも増えてきている。ここで気を付けたいのは、日本と欧州のタイヤラベリング制度では、等級の表記が異なっているという点だ。
欧州でのグレーディングは以下のようになっている。

転がり抵抗が6等級、ウエットグリップ性能が5等級となり、それぞれ日本のラベリング制度と比べて1等級ずつ増えているが、その基準となる数値を見るとわかるように、基準自体は日本の制度と変わらない。
日本ではグレーディングの性能を満たさないタイヤにはラベルをつけないのに対して、欧州では基準を満たさないタイヤにはつけるラベル(転がり抵抗ではG、ウエットグリップ性能ではF)を用意しているというだけだ。

また、日本のラベリング制度ではウエットグリップ性能についてAAA~Cという表記としているが、欧州ではA~Gとしている。わかりやすさでは欧州の表記といえるが、ラベリング制度で認められる最低ランクをCとする日本の表記のほうがマイルドに感じる。このあたり国民性が影響しているのだろうか。
いずれにしても、日本と欧州のタイヤラベリング制度において基準となる数値自体は変わらない。たとえば転がり抵抗については日本でいう「AA」が欧州では「B」に当たるといった風に覚えておけば、欧州基準のラベリングを受けたタイヤと国産タイヤを比較することができるはずだ。
なお、欧州のタイヤラベリング制度では騒音についても3段階で表記している。走行騒音についての基準が厳しくなっていくなか、日本のタイヤラベリング制度にもノイズについての表記が求められることなっていきそうだ。