この記事をまとめると
■近年、ロードキル(道路上で起こる野生動物の死亡事故)が増えている



■原因は交通インフラの発達にあるといわれている



■事故件数の多い動物やドライバーが注意すべきことについて解説する



タヌキは年間約18800頭が犠牲になっている

意外に思うかもしれないが、じつは近年、いわゆるロードキル(道路上で起こる野生動物の死亡事故。轢死[れきし]のほか、側溝への転落死などを含むこともある)が増えている。



NEXCO3社など高速道路各社の発表によると、高速道路でのロードキル発生件数は、2002年が約3万6000件だったのに対し、2018年には約4万7400件まで増えている。

つまり高速道路だけで、1日:約130件の動物との衝突事故が起きているという計算だ。



ロードキルが増加傾向にある原因は、交通インフラの発達にあるといわれている。日本は国土の約7割が森林で、そのうち5割は天然林。大都市以外はどこでも野生動物との事故に警戒する必要があり、山間部を切り開いて新しく開通した道は、とくにロードキルが発生しやすく、それが発生件数は増加につながっているわけだ。



対象となる動物は、タヌキがダントツで1位。高速道路では約4割がタヌキ。年間およそ18800頭が犠牲になっているとのこと。一般道も含めると、1年間で最大34万頭というデータもある。



タヌキは年間34万頭!! 高速道路だけで1日130件も発生!...の画像はこちら >>



次がネコで、NPO法人 人と動物の共生センターの調べでは、2019年に約29万頭のネコが路上で亡くなっているらしい。これはいわゆる殺処分の約10倍にも相当する。



その他、ウサギ、イタチ、キツネ、シカ、イノシシ、クマ、カメなどが続き、そうした轢死した動物を食べようとして、カラスやトビがひかれる場合もある。



高速道路に限っていえば、鳥類が27%を占めている。

鳥類といえば、鳥や刎ねた動物がフロントガラスに当たって視界を奪ったり、飛び出してきた動物を避けようとして、急ハンドルや急ブレーキをかけたことで、対向車線に飛び出したり、縁石に当たったり、側溝に落ちたり、後続車に追突されたり、横転するなどの事故も多数報告されている。



「動物注意」の黄色い標識を見落とさないことが重要

なお、ロードキルが原因で、車同士がからむ事故に発展した場合は、動物を回避したドライバーの責任割合が大きく問われることも覚えておこう。



さらに、大型動物との衝突事故も増えているので注意が必要だ。たとえば、令和3年の北海道における鹿が関係する交通事故は、4,009件も発生しており、前年比+498件で、5年連続で最多記録を更新。調査を開始した平成16年の3.4倍となった。 これらの事故では、死亡事故には至っていないが、同年人身事故は2件発生。いずれも鹿の飛び出しにより急ブレーキをかけた前車に追突したケースだ。



タヌキは年間34万頭!! 高速道路だけで1日130件も発生! 動物が犠牲になるロードキルの実態とは



野生の鹿は北海道以外でも増えており、環境省によると、1978年度から2018年度までの 40年間で、ニホンジカの分布域は約2.7倍に拡大、イノシシの分布域は約1.9倍に拡大しているとのこと。



同じく環境省が2000~2003年度に行なった調査によると、北海道の約55%の地域にヒグマが、そして本州の約45%の地域にはツキノワグマが生息していることがわかっている。いずれも近年、急速に生息数が増加しているので、これまで以上に注意が必要だ。



ちなみにニホンジカ40kg、クマ40~80kg イノシシ80~190kgとそれぞれ体重が重いので、クルマが衝突した際のダメージは相当大きい……。



タヌキは年間34万頭!! 高速道路だけで1日130件も発生! 動物が犠牲になるロードキルの実態とは



ロードキルを回避するには、まず「動物注意」の黄色い標識を見落とさないこと。

こうした標識があるところでは、速度を控えめにして、用心深く通過するのが第一。



タヌキなど多くの動物は夜行性なので、夜間、山間部を走るときはとくに注意が必要だ。対向車などがいないときは積極的にライトをハイビームにして、道路脇に動物の目が光っていないかをチェックするようにしよう。



季節的には秋から冬にかけての事故が多く、日没が早くなると動物たちの活動時間も長くなるので、秋以降はより慎重なドライブを心がけて欲しい。

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