この記事をまとめると
■電動化が進み、道路整備の予算はどのように賄うのかという疑問の声が聞かれる■しかし、ガソリン税は2009年に一般財源化されている
■だが、道路整備にはこれまで以上に予算を割くべくという見方ができるのも事実
ガソリン税は2009年に一般財源化された
もはや避けられないEV時代到来の課題として、「道路整備の予算はどうすべきか考えているのか、ガソリン税の代わりに充電税を新設する必要があるのでは?」といった主張を見かける。
おそらく、これは揮発油税などの、いわゆるガソリン税が道路特定財源であって、ガソリン税によって舗装の修繕などの整備が行われているという前提に立っての発言だろう。
たしかに、ガソリン税・自動車取得税・自動車重量税は「道路特定財源諸税」といわれていた。
しかし、いまだにガソリン税が道路特定財源だと思っているようでは情報のアップデートができていないと言わざるを得ない。すでに平成21年度(2009年度)より道路特定財源は一般財源化されている。ようはシバリのない自由に使える税金となっているのだ。
さらに自動車取得税についても2019年10月に廃止され、環境性能割に置き換えられているのはご存じのとおり。道路特定財源の名残は着々と消えつつある。

そして環境性能割は取得価格に対して最大3.0%の税率となっているが、現時点ではEVは非課税となっている。道路特定財源云々は別としてEVが普及することで徴税機会が減り、国や地方自治体の予算は減っていく方向になっているのは間違いない。
たしかにEV普及後に道路整備などの予算をいかに確保するかについて考えなくてはいけないのも、また事実だ。
自動運転時代には道路整備がより重要となる
というわけで、道路特定財源が一般財源化されて10年以上が経っていることを考えると、EVの普及によってガソリン税による徴税が激減したとしても、道路整備ついての予算が影響を受けることはない、というのが建前としての見方になるだろう。
結局のところ、すでに過去のものとなっている道路特定財源について指摘するのは、消費税の税率アップといった財務省の後押しをすることになってしまうかもしれない。
個人的には、消費税というのは税率を変えなくとも国内需要が増えれば徴税できる金額は増えるという性格を持つ税金なのだから、経済発展によって税収を増やすということをKPIにして霞が関が動くべきだろうし、そうした政治を期待したいが、過去に歴史を考えるとそうした変革は難しいだろう。
それはさておき、道路整備についてはこれまで以上に予算を割くべくという見方もある。

それは未来のイノベーションとして自動運転は確実といえるからだ。自動運転の基本は、クルマ自身が周囲の環境などを判断してスタンドアロンで自律走行することだが、高精度な位置情報を得るなどの情報取得も、自動運転の実現には重要なファクターとなる。
そうした情報取得・情報交換として必須といえるのが車車間通信・路車間通信といわれる通信ネットワークの構築だ。こうした通信技術を使うことで走行している車両同士がお互いの位置やこの先の動きなどを通信するもので、たとえば出会い頭の事故などを防ぐことが期待できる。実際、路車間通信によって右折する車両に直進車の有無や危険度を伝えるという社会実験はすでに実施されている。
車車間通信・路車間通信が進化すれば、交差点への進入速度やタイミングを最適化することができ、歩行者がいない環境であれば信号がなく、ノンストップで走れる世界も可能になり得るのだ。
当然ながら、自動運転時代をにらむと、これから整備する道路についてはそうした路車間通信に関するインフラ整備が必須になってくる。単純にアスファルト舗装を修繕して、停止線や横断歩道などのペイントを塗り直すような道路整備とはけた違いの予算が必要になってくるのは自明だ。

日本が自動車立国として、自動車産業をリードしていくのであれば、自動運転時代に適した道路整備に積極的に予算を割くべきだ。
またEVの航続距離を伸ばす手法として走行中に道路から給電するダイナミック・チャージングも、ひとつの手法として有力視されているが、こうしたインフラ整備についても大規模な道路整備予算が必要となるだろう。
いずれにしても、ガソリン税などによる道路特定財源が廃止されて10年以上経っている。