この記事をまとめると
■夏は車内が高温になる■飲料を置いておいた場合は、何時間後まで飲めるのだろうか?
■東京都生活文化局が行った実験の結果をもとに解説
常温でも開封後8時間が一般的
ようやくピークは過ぎた感がありますが、暑さはまだ続きそうですね。外気温が26度程度になっても、炎天下に駐車した車内は猛烈な暑さになりますので注意が必要です。熱中症にならないために、積極的に水分をとっているという人も多いと思いますが、飲みかけのペットボトル飲料を車内に放置して出かけたりしていませんか?
「まだ残ってるから捨てるのはもったいないし、帰り道にまた飲もう」なんて、軽い気持ちで車内に置いていったのかもしれませんが、その飲料、車内に放置した後に飲むのはちょっと待った。
そもそも、ペットボトル飲料は未開封なら常温での長期保存が可能で、賞味期限が長いものが多いですが、一度開封してしまうと空気中のホコリや雑菌などが入り込むことで、味わいや香りが落ちたりと、中身が変質してしまいます。雑菌が液中で繁殖し、飲料によっては発酵が進んだり、炭酸ガスが発生して溶液が膨張・破裂する危険性もあります。容器に直接、口をつけて飲んだ場合にはとくに雑菌が繁殖しやすく、開封後8時間が飲める目安というのが一般的。できれば冷蔵庫に保管して、早めに飲み切るのがベターなのです。
では、炎天下の車内に放置した場合は、どのくらいまで飲めるでしょうか。それを知るために、とても興味深い実験結果をご紹介します。東京都生活文化局による「清涼飲料水用ペットボトルの安全性に関する調査」のなかで、「夏季の車内環境下での放置試験」という実験が行われているのです。
内容としては、乳性飲料、炭酸飲料(糖入り・糖なし)、お茶系飲料、コーヒー系飲料、ミネラルウォーター、スポーツドリンク系飲料といった10種類のペットボトル飲料(未開封)と、飲み残しを想定して雑菌の代わりにドライイースト(酵母)を入れた乳性飲料1種の計11種を、夏季の車内環境下を想定した60℃の環境で、24時間放置するというものです。
たった1時間の放置でもかなりの雑菌が繁殖している!
驚くのは、開始後わずか1時間程度で、どの飲料も温度が50℃前後に達したということ。多くの細菌は、人間の体温に近い30~37℃くらいでもっとも繁殖が盛んになり、45℃くらいまでが繁殖に適した温度といわれているので、もし飲みかけの飲料に雑菌が入り込んでいたなら、最初の1時間ですでに雑菌にとっては繁殖に好条件の環境になっていることに……。なんとなく、カテキンが含まれるお茶なら大丈夫なんじゃないか、なんて勝手なイメージを持っていた人もいるかもしれませんが、どんな飲料であれ、炎天下の車内に1時間放置したら、もうその飲料にはかなりの雑菌が繁殖している可能性があると考えた方がよさそうです。
また、24時間経過後、ペットボトルの変形や破損が見られた飲料は、炭酸飲料の糖入り・糖なし、ミネラルウォーター、飲み残しを想定した乳性飲料+ドライイースト。炭酸飲料は液体が噴き出していたものもあったとのことで、もし異変に気づかずうっかりキャップを開けていたら、熱湯のように熱くなった液体が顔などにかかって火傷を負うなどの危険性があると想像できます。

実際に、消費者庁・国民生活センターの調査によれば、ペットボトル飲料による事故の事例として、購入したまま車内に置き忘れていた果実飲料が破裂し、クルマの天井部分が破損する等の損害を受けたという事例もあるとのこと。また、ペットボトルの破裂等を経験したことがある場所についての調査では、47.2%が「車内」と回答。破裂等が起こった時期については、85.8%が「夏(6~8月)」とダントツに多くなっています。
火傷のほかにも、破裂したペットボトルの破片で指を切った、あざができた、といった報告もあるので、これはもう飲める・飲めないの問題ではなく、炎天下の車内にはペットボトル飲料を放置せず、飲み残してしまったら一緒に持っておいて、なるべく冷やして保管し、早く飲み切るのがよさそうです。雑菌は目に見えず、ニオイや色の変化もわからないことが多いそうなので、皆さん、十分に気をつけましょう。