この記事をまとめると
トヨタのbZ4Xは発売して間もなくリコールの届出があり、注文を停止した



■「bX4Zリコール対策オンライン説明会」にてその理由を聞くことができた



■リコールの原因や今後の動きについて解説する



ハブボルトが緩む症状が発生していた

2022年9月30日にWEB CARTOPへと掲載となった拙稿(韓国ヒョンデと中国BYDのEVの完成度がヤバい! トヨタですらうかうかしてられないEV市場戦国時代 )の6日あととなる10月6日に、トヨタは「bX4Zリコール対策オンライン説明会」を行った。説明に立ったのは、前田昌彦執行役員・副社長、Chief Technology Officerである。



拙稿については、『トヨタやSUBARUは、トヨタのハイブリッドシステムを前提とした回生の効果とその負荷しか考慮できないままbZ4Xとソルテラを市場導入したのではないかと推測される。

それが、ひとつの可能性としてリコールにつながったのではないか。』の部分に対し、トヨタ広報から「誤解であるため修正してほしい」との申し出が事前にあった。そうした経緯を経てのちのオンライン説明会であった。



原因不明だったトヨタのEV「bZ4X」のリコール! ついに解...の画像はこちら >>



同日には、説明会に先立ち国土交通省から、「トヨタ自動車株式会社から、令和4年10月6日国土交通大臣に対して、下記の通りリコールの届け出がありましたので、お知らせします」として、リコール届出一覧表、改善箇所説明図の[1]と[2]がホームページ上に公開された。



今回のリコールでは、カーテンシールドエアバッグについても行われたため、上記のような表現になっている。



オンライン説明会の主題は、ディスクホールとハブボルトに関する内容である。これについてトヨタは、6月23日にリコールを届けていた。そして受注は中断し、所有者には解決されるまで走行しないよう依頼がなされた。それから3カ月以上を経て、原因の解説と、解決策が説明されたのである。



原因不明だったトヨタのEV「bZ4X」のリコール! ついに解明された「理由」とは?



連続した急加速や急制動の繰り返し等でハブボルトが緩むことがあるというその原因を、前田副社長は、「ハブに取り付けられたブレーキ装置のホイールとの接点となる面と、ホイール側の接点となる面は、ともに滑らないよう設計しているが、規定トルクでハブボルトを締め付けていても、緩むことがある」と、解説した。緩みの出る理由として、ホイール側の接触面の精度が規定通りでなく、滑りやすかったとしている。これは、電気自動車(EV)に限らず、高いトルクのクルマではあり得ることだとも語り、EVであることがリコールの要因ではないと述べた。



対策は、ホイール品質を高めるため、接触面の表面粗さを設計通りになるよう見直すこと。また、締め付けるハブボルトについては、円錐形をしたワッシャーを追加し、Oリングを使ってハブボルトと共にホイールを締め付けることで緩み難くしている。



ハブボルトの採用は、レクサスISで事例がある。では、なぜ、bZ4Xでリコールにつながったのかという問いに対し、前田副社長は「駆動力はbZ4Xがもっとも大きいので、ホイール品質と合わせてハブボルトの緩みが生じた」、また「トヨタが新しい構造を使う上で、知見が不十分だった」と述べている。ちなみに、ここでいう駆動力とは、モーター特有の回生も含むとトヨタ広報は言っている。



今後は受注している分から順に対応していく

ちなみに、bZ4Xの動力性能は、最高出力150kW、最大トルク266Nmである。今回のリコールに際し、リース販売(米国では販売)されていたのは前輪駆動(FWD)であった。これに対し、ISでもっとも高出力なのはIS500であり、動力性能は354kW、最大トルクは535Nmであり、最高出力で2倍以上、最大トルクでも2倍、IS500が圧倒的にbZ4Xを上まわる。それでもなぜ、bZ4Xでリコールに至ったのか。



この問いに対し、トヨタ広報はエンジニアに改めて確認したとして、「動力源のトルクだけでなく、タイヤの直径が大きいことにより駆動力が大きくなるということで、当社の算定では、他車種も含めてbZ4X(のFF車のフロントホイール)が一番大きい」という回答であった。



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ちなみに、bZ4XとIS500の標準装着タイヤ寸法は、bZ4Xが235/60R18で、IS500が265/35R19(駆動力の掛る後輪)である。ここから扁平率を加味して直径を算出すると、bZ4Xが約73.9cm、IS500が約66.8 cmとなる。

タイヤ寸法は、タイヤメーカーやタイヤの種類によって若干異なることがあるので、以上は概算だ。ホイール径ではIS500が1インチ大径になるが、タイヤが扁平なので、外周に関わる直径は小さくなる。ハブに掛かるモーメント(回転力)において、直径の小さなIS500のほうが負担は低いことになる。



ただし、動力性能が圧倒的にIS500のほうが高いのだが、駆動力計算についてトヨタ広報は「当社の算出」によると答えているので、これ以上は考察の判断材料を持たない。



6月のリコール届出から3カ月以上経っての説明と時間を要したことについて、前田副社長は、原因を確定することにまず時間がかかったと説明した。その手順は、そもそも設計はどうであったか、製品の品質はどうであるかを探り、そして対応について、評価しながらの対処となり、なおかつ量産部品での確認も必要であり、現物を取り寄せ、部品メーカーのデータも見ながら、走り、曲がり、止まるという様々な場面での力の掛り方を想定し、実地確認していくうえで時間が掛らざるをえなかったとしている。



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ホイール品質の改善はもちろんだが、新たに使うワッシャーの手配にも時間がかかったとする。ワッシャーは、ゴムのOリングで止め、繰り返し使用できるという。



国土交通省へ届け出た車両の台数は、bZ4Xが約2700台で、内訳は、国内が約100台、海外が約2600台であるという。SUBARUソルテラは約1600台で、内訳は、国内が約100台、海外が約1500台とのことだ。



今後について、説明会当日から生産を再開し、受注している分から順番に対応していくとのことであった。国内販売では、KINTO(キント)の再開は10月26日を予定しているとのことだ。

詳細は、bZ4Xのホームページに記載されている。



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トヨタとSUBARUが満を持して市場投入したEVの、5月12日発売から1カ月強で生じたリコール問題は、ようやく目途が立った。クリーンエネルギー車(CEV)への補助金は10月にも締め切られるのではないかというほど消費者の目がEVに集まるなか、ようやく日が差してきたといえる。



前田副社長は、「トヨタの安心、安全を取り戻したい」と述べた。

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