この記事をまとめると
■モデルチェンジをしても見た目が大きく変わらないクルマがある



■なぜこのようなモデルチェンジが行われるのか?



■いくつかのクルマを例に挙げて考えてみた



よく耳にする「キープコンセプト」

「キープコンセプト」などと言われるように、モデルチェンジをしても新旧で見分けがつかないほどソックリなクルマがあります。最近ではダイハツの「ムーヴキャンバス」が好例ですが、なぜこうしたモデルチェンジが行われるのでしょうか? 今回はその理由と手法について考えてみます。



先代で獲得した評判を継続させたい

新旧で見分けがつかないようなモデルチェンジをする場合、そこにはふたつの理由があります。ひとつは先代がヒット作だった場合。

メーカー自身も驚くようなヒット作になると、当然「このままでいいじゃないか」と考えてしまうのはじつに自然で、結果大きく変えるのは止めようとなります。



先のムーヴキャンバスの場合、まるで「ワーゲンバス(タイプ2)」のようなカタチはかなり挑戦的な企画でしたが、スライドドアの採用を含め、ひとつのジャンルを確立するほどのヒット作となりました。当然ですが、メーカーにはその新ジャンルごと手放す勇気はないでしょう。



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ヒット作といえばホンダの「N-BOX」も同様です。スーパーハイトワゴンスタイルこそ後出しでしたが、軽自動車とは思えない作り込みをそのまま表現した、上質で道具感溢れるスタイリングも人気の理由となりました。ダイハツ「タント」など手強いライバルがいるなか、やはりせっかく手に入れた個性を投げ出す理由はありません。



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もうひとつの理由は、長い伝統を持つアイコン的なモデルの場合です。そのメーカーを代表するような歴史を持ち、長い時間をかけて愛されているクルマです。最近では、フィアット「500e」のモデルチェンジがいい例でしょう。オリジナルのキュートさを可能な限り継続するのは当たり前のことなのです。



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ソックリでもまったく異なる結果を招くことも!

ソックリでも新しさを感じるデザインの力

ただし、ほとんど「そのまま」のモデルチェンジをしても、それがユーザーに受け入れられるか、販売的に成功するかはまさにデザイン次第。先述の3台はそれが巧くできていたようです。たとえば、ムーヴキャンバスは先代に対してよりプレーンなボディを目指しており、フロントのボリューム感やサイド面の張り、リヤパネルのシンプルさなどが見事です。



N-BOXは、先代の道具感を感じるボディを「乗用車的にする」意図が的確で、ドアパネルやホイールアーチなどを滑らかな面構成とし、よりクルマらしさを打ち出しています。また、500eではアップデートした「大人っぽさ」が特徴で、豊かになったフェンダーや立体的なリヤパネルでそれを果たしています。



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この3台のいずれもが、先代の特徴を継承しつつも、明快なデザイン意図によって「新しさ」を感じさることに成功しているのです。



ソックリでもヒットになるとは限らない

一方、同じように新旧ソックリのモデルチェンジをしても、いわゆるヒット作に結びつかない例もあります。



ホンダの「N-ONE」は、プラットホームこそ更新したものの、何とボディパネルの多くを流用するという異例のモデルチェンジでした。担当したデザイナーの言葉では「先代以上の表現は見つからなかった」ということですが、ソックリを通り越して「まったく同じ」となると、やはり多くの支持を得るのは難しいようです。



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スズキの3代目「スイフト」も会心のヒットにならなかった例です。市場となる欧州のスタジオで作り込まれた2代目は、日本車離れした凝縮感を持つ意欲作でした。ところが、ソックリでありながらも、変にスタイリッシュさを盛り込んだ3代目は肝心の凝縮感を失い、どこか間延びしたイメージを背負ってしまいました。



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冒頭にも書いたとおり、新旧ソックリのモデルチェンジは、好評だった先代のイメージをできる限り残し、ヒットを継続したいというメーカーの思惑があります。しかし、どんなに似ていても、そこにデザイナーの明快なテーマがなければ、まったく異なる結果を招いてしまうのです。それこそがカーデザインの奥深さと言えるのかもしれません。

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