この記事をまとめると
■86はトヨタとスバルの協業によって生まれたコンパクトスポーツクーペ■今回は特別仕様車「86 style Cb」について解説
■2013年にコンセプトカーとして出品され、2015年に発売された
「Cb」は「Cool beauty」を意味する
トヨタとスバルの協業により生まれた「86」。走り好きのユーザーに支持され、10周年の今年にはオレンジ色の特別仕様車も設定されました。では、皆さんはかつて発売された「86 style Cb」をご存知でしょうか? 多くのファンを驚かせたこのクルマについて、デザイン視点で振り返ってみたいと思います。
クールで都会的に変身したスポーティクーペ
2012年、「直感ハンドリングFR」をコンセプトにデビューした「86」。トヨタでは久々のコンパクトスポーツクーペであり、かつスバルとの協業という話題性も手伝って注目の船出となりました。デザイン的にはかつての「ハチロク」とは趣が異なるものの、どこか往年の「2000GT」を想起させるスタイルも話題となりました。
そんななか、2013年の東京オートサロンにコンセプトカーとして出品されたのが「86 style Cb」です。何の予告もなく突然の登場だったことと、すっかり変わった顔付きにファンの間では話題騒然となり、一部のメディアでは「どうしてこんなカッコに?」なんて記事も見られました。

「Cb=Cool beauty」として、ファッションセンスを重視するユーザーに向けたクールで都会的な企画は、当時、トヨタ社内でエアロパーツやナビゲーションなどを開発していたC&A(コンバージョン アンド アクセサリー)開発部が提案したものです。
そうして、いきなりの変種と思われた86 style Cbですが、じつは同開発部では前年の東京オートサロンで「FJクルーザー × style Cb」を出品、2015年には「ヴェルファイア style Lb」を発表するなど、一連のシリーズものとして企画されたものだったのです。

「濃さ」や「香り」を感じさせるクルマは珍しかった
輝きを放つ上質さをボディに落とし込む
そうして、いよいよ2015年に発売となった86 style Cbですが、デザイン的にはどのような提案があったのでしょうか?
まず、フロントはバンパーごと交換、シャープなヘッドライトは楕円の金属調ベゼルを付けたオーバル形状に変更。同じくグリルも楕円の柔らかい形状にすることで、どこか60年代のイタリア車を思わせます。もともと、初代の86は顔こそシャープでしたが、ボディの要所は大きな曲面で構成されおり、「顔」を丸く変えても違和感がなかったのです。

このグリルに施されたメッキの横桟とLEDのターン&クリアランスランプ、そしてフロントフェンダーのトリプルフィンに置かれたイルミネーションの組み合わせは、いずれも上質な「輝き」を表現。また、ニュアンスベージュとデミタスブラウンの2トーンボディは、それらの「輝き」をより上品に見せる効果がありました。

インテリアでは、黒檀木目調パネルやアナログのホワイトメーター、専用のレザー素材が、落ち着きのある居住空間を演出しました。
大人の女性を意識した香り立つデザイン
この「style」シリーズは、ファッションのなかでも、とりわけ女性目線での色や質感にこだわったとされ、実際に部署内の女性スタッフがメインとなって企画が進められたようです。
筆者は当時のオートサロンを取材しましたが、ハイファッションに身を包んだC&A開発部のスタッフが対応しており、一見社外のモデルが立っていたようにすら感じられました。開発者としては、そこまでのこだわりがあったのでしょう。

多くのクルマ好きに驚きを与えたのは、400万円を超える値札だけでなく、恐らくその「濃さ」や「香り」に理由があったのではないでしょうか。ただ、モーターショーのコンセプトカーには、今後もこれくらいのインパクトがあってもいいのではないでしょうか。