この5年で、日本から海外に移住した人が約5万人も増加している。永住者の合計は約43万人7000人であると、外務省は発表している(2014年10月1日時点)。

なかでも、マレーシアやフィリピンをはじめとしたアジアへの移住は、前年比10.95%増でもっとも人気が高い。

「ひとつの人生をひとつの国で終えるなんて、もったいない」と語るのは、海外移住をサポートするWEBサービス「せかいじゅう」を展開するシェルトン株式会社の貝ヶ石さん。海外移住を叶える方法や、日本を飛び出すことによって広がる人生の可能性を聞いた。

国内で得られる移住の選択肢は、あまりに少なすぎる

――「せかいじゅう」は、今春からサービスを本格的に運用開始されるそうですね。具体的に、どんな海外移住のサポートをされるんですか?

貝ヶ石崇さん:(以下、貝ヶ石):海外への留学や移住をしたいと考えている人は大勢いると思うのですが、海外で暮らす家や働く場所を探すにあたって、日本で得られる情報はあまりにも少なすぎるんです。そもそも移住先を探すときも、日本人に人気があり、国内で豊富な情報が得られるという、ごく限られた国のなかから選んでいる人が多いと思います。

国の選択肢を広げるには、現地に住んでいる方から生の情報を得るのが一番。「せかいじゅう」は、現地在住の日本人がサポーターとなり、家や働く場所を探す手助けをはじめ、語学学習のプランなどを提供。幅広いサポートを受けられるサービスとしてスタートしました。

――実際にどんなプランが登録されているんでしょうか?

貝ヶ石:フランスの音楽留学や料理教室体験、シンガポールへの親子でのグローバル体験、ポーランドの語学留学やブラジルでのサッカー留学等、バラエティに富んだプランが登録されています。たとえば英語の語学留学だと、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどが人気ですが、実はポーランドが穴場だったりします。十分に英語を学べる環境ですし、治安が良く、物価は日本の2~3分の1。

もっとも人気のあるクラクフに住む場合、月約3~4万円程度(シングル)から住まい探しをすることが可能です。こういった選択肢は、国内ではなかなか得られません。

――現地の方やプロのサポートを受けずに、居住地や働く場所を自分で探すのは相当難しいんですか?

貝ヶ石:言葉が堪能であればどうにかなるかもしれませんが、そうでない場合、家や働き口を探す苦労は並大抵ではない思います。そういった敷居を下げるために、現地の方とのコネクションが大きな価値になるので、そのメリットを提供できればと。実際に、弊社サービスに登録されている海外在住者の多くが、渡航時に日本人のサポートを受けることができれば金銭面で大きな節約ができ、精神面でのストレスも軽減できたと語っています。

女性が移住するなら現地人と結婚するのが一番簡単

――今、日本人に人気がある移住先として、マレーシア、タイ、フィリピン等、アジアの国々が多く挙がっていますが、その理由はなんでしょうか?

貝ヶ石:地域によっては日本の半分ほどの費用で生活できたり、花粉がなく暖かくて気候が快適だったり、暮らしやすいからという理由が一番だと思います。

たとえば、マレーシアの首都クアラルンプールには多くの日系企業が進出していて、日本の製品も手に入りやすいようです。あとは、比較的に日本からのアクセスが良いので、いざというときに帰国しやすいんですよね。

――海外に長く住むには就労ビザや永住ビザを取得するなど、いくつか選択肢があると思います。たとえば、マレーシアは就労ビザが取得しやすいと言われていますが、一定金額の収入がある保証人が必要など、決してハードルが低いわけではないですよね。何かビザが簡単にとれる方法はあるんですか?

貝ヶ石:確かにビザがとりやすい国とそうでない国はあります。ワーホリビザや観光ビザの取得なら難しくありませんが、長期間の滞在はできないですしね。

それ以外の就労ビザや永住ビザだと、やはりどの国も一定レベルの基準をクリアする必要がありますが、スムーズにいかない場合が多く、取得条件が変わることも多いんです。簡単に永住するなら、現地の方と結婚し、配偶者ビザを取得するのが一番じゃないでしょうか。少し話が飛躍してしまいますけど(笑)。

――国際結婚って、かなりハードルが高いイメージがあります……。

貝ヶ石:でも実体験でいえば、たとえばアメリカなんかだと日本人女性はすごくモテるので、彼氏は簡単にできると思いますよ。「男性に対して優しく、尽くしてくれる」といういいイメージがあるみたいです。

――じゃあ、就労ビザなどを取得して長期滞在しながら、現地でパートナーを探すというのもアリかもしれないですね。

貝ヶ石:パートナーだけでなく、人種の異なる人たちとの出会いは、人生の可能性を大きく広げてくれます。今まで出会ったことがない価値観に触れることができるので。ビザを取得する前に短期間住んでみて、その国の文化や暮らしが合うかどうかを確かめてみるのもいいのではないでしょうか。

アジアで優雅な生活を送る老後もおすすめ

――貝ヶ石さんは1年ほどアメリカに住んでいたんですよね。海外に住んで、何が一番変わりましたか?

貝ヶ石:価値観でしょう。

当時学生だった僕は、大学を卒業したら就職をして、ひとつの会社に勤めあげるという人生が当たり前だと思って生きていました。でも、アメリカの働き方、稼ぎ方、暮らし方はもっと自由でした。自分で事業をやっている人もいれば、副業で事業をやっている人もいる。平日にビーチでのんびりしている人もいる。そんな世界を見たとき、自分が持っていた固定観念がガラッと変わりましたね。多民族国家なので、アメリカ人だけでなく、さまざまな人種に触れ、多くの気づきや発見、驚きがありました。

――たとえば日本で人間関係に疲れてしまったとか、仕事がどうしても嫌になってしまったとか、人生をリセットしたいタイミングで移住を考えてみる、というのはどう思われますか?

貝ヶ石:ブラジル在住の日本人の方が、「閉鎖気味だったり鬱っぽくなってしまったりしたら、ブラジルに来れば心が軽くなるはず」と言っていました。とても陽気な国民性ですからね。ブラジルに限らず、日本の価値観から解放されると心が軽くなるということは、あるんじゃないでしょうか。

――そのほかに移住に適したタイミングって、何かありますか?

貝ヶ石:仕事を退職したあと、老後を海外で過ごすのもおすすめです。銀行残高の証明が必要になるなど、条件面のハードルが高いという難しさもありますが、リタイアメントビザを取得して海外に移住する方は、実際に多いですよ。

――老後の移住におすすめの国は、どこですか?

貝ヶ石:やっぱり暮らしやすさを考えると、東南アジアでしょうね。フィリピンは、ほかのアジア諸国に比べてリタイアメント制度の条件がゆるいので、とくにおすすめ。物価も安く、レギュラータクシーの初乗り料金は40ペソ(約94円)、物価は日本のおよそ5分の1と言われています。生活レベルにもよりますが、通常はひと月15万円もあれば満足な暮らしができるはず。20万円以上になれば、お手伝いさんを付けるとか、タクシー乗り放題なんていう贅沢な生活も叶います。日本で年金に頼って暮らすとなると、そんな生活はまず無理ですよね。老後の選択肢のひとつに、ぜひ海外移住を加えてみてください。

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せかいじゅう公式サイト

(小林香織)