ゴールデンウイークには、有給休暇を併用するなどして長期連休をとる人が多く見られます。今年(2026年)のゴールデンウイークは、土日祝日に加えて4月30日と5月1日も休めば8連休、さらに5月7日と8日も休めば12連休です。

長期連休を楽しむ人がいる一方で、ゴールデンウイークだからこそ忙しくなる職種もあります。連休をとりたいと考えているのに、強制的にシフトを入れられてしまう人もいるようです。
「繁忙期に強制的にシフトに入らされるのは、違法では?」
本記事ではこのような疑問について、法的な取り扱いを解説します。(弁護士・阿部由羅)

繁忙期に強制的にシフトに入らせるのは違法?OK?

ゴールデンウイークなどの繁忙期において、使用者が労働者に対し、シフト勤務を強制するケースはしばしば見られます。このような「強制出勤」は違法なのでしょうか?それとも問題ないのでしょうか?
「強制出勤」が違法かどうかは、社内のルールや労働の実態を詳しく検討しなければ判断できません。一概に「違法」とも「OK」とも言えないのです。
どのように判断すればよいのか、順を追って解説します。

「強制出勤」はどこから違法?境界線の判断基準

まずは「強制出勤」させられた日がもともと「労働日」なのか、それとも「休日」なのかを確認する必要があります。どちらに当たるかによって、検討すべき事柄が変わるためです。
労働日であれば、基本的に労働者は出勤する義務を負いますが、付与された有給休暇を取得することはできます。
労働者が有給休暇の取得を申請したにもかかわらず、使用者にそれを拒否された場合は、拒否が違法かどうかが問題となります。
休日であれば、原則として労働者は出勤する義務を負いません。しかし、使用者と労働組合または労働者の過半数代表者が「36協定(※)」を締結している場合は、その範囲内で休日出勤の指示が認められます。
※労働基準法で定められた法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間以内)を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合や、休日労働をさせる場合に、同法36条に基づき締結する労使協定のこと。
使用者側が所轄労働基準監督署長に届け出る必要がある。
休日に「強制出勤」させられた場合は、それが36協定の範囲内かどうかが違法性の判断基準となります。

有給休暇の取得申請拒否|違法となる運用は?

長期連休を実現したい労働者が有給休暇を申請したものの、使用者が繁忙を理由に拒否するケースはよく見られます。
しかし有給休暇は、労働者が希望する時季に取得できるのが原則です。使用者には時季変更権(=有給休暇の取得時季を変更する権利)が認められることがありますが、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に限られています。
単に「繁忙期だから」という理由では、時季変更権の行使は認められません。代替人員を確保することが困難と言える、より具体的な事情が必要と解されています。
取得拒否の理由が示されなかった場合や、抽象的な理由を提示されたにすぎない場合は、違法の可能性があると考えられます。

強制的な休日出勤|36協定を要確認

休日に強制出勤させられた場合は、それが36協定の範囲内かどうかを確認しましょう。
「36協定」とは、時間外労働と休日労働に関するルールを定めた労使協定です。たとえば、時間外労働や休日労働を指示できるケースや、月ごとの上限時間数などが定められています。
休日出勤は、時間外労働または休日労働に該当することがあります。
法定休日(※1)に出勤した場合は、その勤務時間全体が休日労働となります。法定外休日(※2)に出勤した場合は、その勤務時間のうち法定労働時間を超える部分が時間外労働となります。

※1 法定休日:労働基準法によって付与が義務付けられた休日。週1日、または4週間を通じて4日
※2 法定外休日:法定休日以外の休日
【法定休日を特定する方法】
就業規則に定めがある場合は、その定めに従います。定めがないときは、対象期間(1週間または4週間)の中でもっとも後ろに位置する休日が法定休日となります。1週間の場合は、日曜から土曜までを一つの対象期間とします(土日休みの場合は、土曜が法定休日)。
36協定が締結されていないのに時間外労働や休日労働をさせられた場合、または36協定の上限を超えて時間外労働や休日労働をさせられた場合は、労働基準法違反となります。

【チェックリスト】繁忙期の「強制出勤」が違法かどうかの確認事項

これまで解説した内容を含めて、次のポイントをチェックしてみましょう。もし一つでも当てはまっているなら、違法な形で働かされている可能性があります。
【労働日の有給休暇の取得を拒否された場合】
  • 拒否の理由が具体的かつ合理的に示されているか?(「繁忙期だから」などの抽象的な理由はNG)
【休日出勤を強制された場合】
  • 36協定は締結されているか?(締結していないのに時間外労働や休日労働を指示するのは違法)
  • 時間外労働や休日労働の時間数は、36協定の範囲内か?(上限を超えている場合は違法)
【共通】
  • 残業代等はきちんと支払われているか?(時間外手当・休日手当・深夜手当などが満額支払われていない場合は違法)
  • 休憩が短すぎないか?(6時間を超えて労働した日は45分以上、8時間を超えて労働した日は1時間以上の休憩が付与されてなければ違法)
36協定は、社内イントラネットに掲載されていることがあります。掲載されていない場合や、自分で探すのが難しい場合は、人事担当者などに連絡して閲覧を求めましょう。もし閲覧を拒否されたら、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
労働時間については、人事担当者などに連絡すれば、勤怠管理システムやタイムカードの記録を閲覧させてもらえることがあります。もし閲覧を拒否されたら、弁護士を通じて法的な手段で開示を求めることが考えられます。
自分でもメモをとるなどして、労働時間の記録を残しておくとよいでしょう。

労働基準法違反が疑われる場合の相談先

「強制出勤」が違法ではないかと感じたときは、労働基準監督署や弁護士に相談してください。
労働基準監督署では、労働基準法違反の申告(通報)を受け付けています。申告を受けて臨検(立ち入り調査)を行い、違反が発覚すれば是正勧告などが行われます。
ただし労働基準監督署は、必ず動いてくれるとは限りません。迅速かつ確実に対応してもらいたいなら、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士には会社との交渉や、労働審判・訴訟などの裁判手続きなどの対応を任せることができます。
■阿部由羅(あべ ゆら)
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。


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