金価格の高騰を背景に、いま水面下で広がっているのが“金の密輸”だ。かつては香港マフィアなど反社会的組織のシノギと見られてきたが、最近では中華街の飲食店主や物産店経営者、中国人旅行者までもが小遣い稼ぎ感覚で参入しているという。
食材の段ボールや靴の中に金を忍ばせ、日本国内で売り抜けようとする一方、その情報を嗅ぎつけたタタキ組織が待ち伏せする。利ざやを追う素人と、それを食う犯罪集団が入り乱れる“弱肉強食”の密輸ビジネスの実態を追った。

事件で注目を集めた金の密輸ビジネス

日本に金を密輸する“素人中国人”の末路…タタキグループに襲わ...の画像はこちら >>
’26年1月29日、東京・上野で現金約4億2000万円の強奪事件が発生。3月14日に警視庁が発表した逮捕者は計7人に上った。なかでも狩野仁琉(21歳)や伊藤雄飛(27歳)、福原健光(48歳)ら各容疑者はそれぞれ山口組、住吉会、極東会に所属する現役組員で、反社会的勢力混合チームでの犯行であることが明らかになった。

一方、事件によって注目を集めたのが金の密輸ビジネスだ。在日台湾人である密輸組織の関係者はそのシノギについてこう語る。

「本来、日本へ金の輸入を行う場合は10%の消費税が発生する。しかし、密輸したゴールドを日本国内の業者に売れば、上乗せされているはずの消費税分がそのまま利益となるんです」

1月には1gあたり3万248円と過去最高を記録した金の取引価格。以降は下降傾向にあったものの、4月に発表されたイラン有事の停戦合意により再び2万6000円台まで上昇を続けている。

「金相場に関しては米ドル不安から今年末の時点で1gあたり3万円台まで復調すると指摘する予測も出ており、長期での保有資産として需要が増す可能性が高いでしょうね」(全国紙経済部記者)

香港マフィアたちの“闇の商売”

その人気に便乗するように、水面下で行われているのが密輸ビジネスだ。金は世界的な取引所となる香港から日本へと運ばれるケースが多く、古くから香港マフィアたちの“闇の商売”として活用されてきた。しかし、現在は反社会的組織だけの仕事ではなくなってきている。

「大規模密輸は今でも香港マフィアたちのシノギとなっているが、中国本土でもこの利ざやビジネスが広まり、手口をマネる連中が急増。
現に密輸した金の買い取りを我々に持ちかけてくる連中も多い」(前出・密輸組織関係者)

なかには、日本国内で正業を持ちながらバイト感覚で密輸に精を出す中国人もいる。

「その正体は、日本の中華街に店舗を持つ飲食店や、物産店の一部のオーナーたち。彼らの間で金の密輸は副業として浸透しており、中国から取り寄せる食材や調味料、雑貨などの段ボール箱内に金を忍ばせ、無事に届けば店舗裏で保管します。一回で運べる量は少々ですが、回数をこなすことで量を増やしている。ゴールドが数キロ単位になれば業者に持ち込み、買い取り交渉を始めるんです」(同)

セコい密輸中国人vsタタキ組織

日本に金を密輸する“素人中国人”の末路…タタキグループに襲われても「警察に駆け込めない」ワケ
観光名目で来日した中国人によって密輸された金のネックレス。これらは個人の買い取り業者に持ち込まれ、加工されたうえで市場に流れる
仕入れついでの密輸で小遣い稼ぎに躍起となる中国人オーナーたち。一方、インバウンドの陰に紛れ込み、個人で金を持ち込む中国人旅行者たちもいる。

「建前は観光目的ですが、実際には税関への申告なしで金を持ち込み、日本で売りさばこうと考える一般の中国人も増えています。密輸するのは金のネックレスや指輪、ピアスなどのありとあらゆる装飾品。小さいものは自分で身に着け、大物は厚底にした靴の中や二重構造に細工したトランクに忍ばせるんです。税関も大規模な密輸でなければ、わざわざ呼び止めるケースも少ない。なかには家族や親族にまで協力してもらい、運んでいる中国人もいます。また手口は同じですが、ダイヤモンドの密輸も横行していますよ」(同)

隙間を縫うようにしてゴールド、ダイヤで儲ける一部の中国人たち。だが、そんなビジネスが熱を帯びるのと比例するように増加しているのがタタキ(強盗)グループだ。


「密輸しているとはいえ、連中はどこまでいっても素人。国内に持ち込めたとしても、売るのは簡単ではありません。特に最近は警察、国税も密輸に関して神経を尖らせていて、すでに大手の貴金属店では出所不明な金は扱わなくなっています。以前であれば質屋が買い取っていましたが、コンプライアンスの観点からこちらもNG。つまり密輸をしたって、コネクションがなければ簡単にはさばけないということです。組織であれば個人の買い取り業者と付き合いはあるものの、信用もない個人が繫がるのは至難の業。だからこそ我々のようなプロに『買ってくれ』と泣きついてくるんでしょうね」(同)

金の密輸ビジネスは弱肉強食の世界

タタキ組織はそんな金取引の情報弱者を狙う。ある日本人グループの関係者はその手口についてこう明かす。

「金を持ち込む中国人のなかで日本語が話せる人間は少ない。だから自然と買い手の相談をするのも華僑のネットワークになっていくんです。こちらはそこで網を張って、『金を売りたい人間がいる』と聞きつければ、業者のフリをして接触。お互いに顔合わせをし、どれぐらいの金を販売したいのかを確認します。
その後日程を調整し、待ち合わせ場所を指定。あとは金を持ったターゲットが来たらタタくだけです。組織であれば金取引には護衛をつけるのが常識中の常識ですが、相手はその知識すらない。おまけに被害を受けたのは密輸した金だから、警察にも駆け込めない。密輸に口なしです」

利ざやビジネスに目をつける一部の中国人たち。さらにそれを食おうともくろむタタキグループまで入り乱れ、弱肉強食の世界となった金の密輸ビジネス。そこでは一般市民が知らない光景が日々、繰り広げられている。

※2026年4月28日号より

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[悪い外国人]の錬金術]―
編集部おすすめ