労働力不足やビジネスのグローバル化に対応するため、雇用する企業が増加している「外国人労働者」。初めて外国人を受け入れる場合には、雇用に伴うさまざまな手続きや人事労務管理の方法などを知りたい人事担当者も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、外国人労働者が増加している理由をはじめ、企業が外国人を受け入れるメリット、在留資格の確認・就労ビザの申請といった採用時に必要な手続き方法などを解説します。就労ビザ申請に必要な外国人労働者雇用理由書もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

日本における外国人労働者の現状―その増加理由は? 

外国人労働者とは、外国籍を持つ労働者を受け入れ国側から見たときの呼び名のこと。家族と共に定住して働く「移住移民労働者」や、1年以内の短期間のみ滞在して働く「季節労働者」、国境をまたいで通勤する「国境労働者」なども含まれます。

日本では、バブル期から外国人労働者の受け入れが始まりました。高度成長期には若年労働力人口の急増や農村から都市部への労働力移動により労働力を確保できていましたが、バブル期を迎えると労働力不足に悩む企業が増加したことがその要因です。1990年には出入国管理法の改正により、在留資格の整理や簡素化、日系人の入国規制緩和が実施され、外国人労働者の受け入れを推進する動きが進められています。

厚生労働省の『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)』によると、2019年10月末時点での日本の外国人労働者数は165万8,804人。前年同期比13.6%の増加となり、本調査での外国人労働者数は、企業の届け出が義務化されて以降、過去最高の数値となりました。この結果から、外国人労働者を雇用する企業が増加していることがうかがえます。

なぜ外国人労働者がこのように急増しているのでしょうか。日本の外国人労働者増加の背景にある要因を見ていきましょう。

【徹底解説】外国人労働者受け入れには4つのメリットが!企業が守るべき雇用のルール

(参考:『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)p2』)

入管法改正による特定技能1号と特定技能2号の新設

「特定技能」とは、人材不足が顕著な業種における労働力確保を目的として、2019年4月に新設された在留資格のことです。特定技能には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、それぞれ在留期間や取得に必要な技能水準、就労できる業種が異なります。

「特定技能1号」の在留期間は通算5年までとされ、取得には「技能試験」と「日本語試験」に合格、もしくは技能実習2号を修了していることが必須です。これに対し、「特定技能2号」は在留期間の上限はなく、取得するためには特定技能1号よりさらに高水準の試験に合格する必要があります。また、就労できる業種は、特定技能1号が、労働力確保が困難とされている「特定産業分野」に該当する14業種である一方、特定技能2号は、この14業種のうち「建設」「造船・舶用工業」の2業種に限定されています。

特定技能は、対象業種ごとに国が定めた基準に沿って作成された試験に、合格した外国人が得られる在留資格です。そのため、特定技能を有する外国人労働者を受け入れることで、一定の技能水準が保証されるでしょう。在留資格の幅が広がったことで、外国人労働者数も今後さらに増加することが見込まれています。
(参考:『【行政書士監修】入管法改正で何がどう変わるか簡単解説!企業が対応すべきことまとめ』)
(参考:出入国在留管理庁『「特定技能」に係る試験の方針について』『新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組』)

技能実習の増加

技能実習とは、企業が外国人の技能実習生を受け入れ、労働を通じて習得した技術や知識を母国の発展に活かしてもらうことを目的とした在留資格のこと。技能実習制度に基づき、外国人労働者を受け入れます。前述した厚生労働省による『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)』のグラフを見ると、2019年10月の技能実習による労働者は38万3,978人となっており、前年比で24.5%増加していることがわかります。

2017年には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行され、実習期間が3年から5年に延長、対象職種も増加するなど、技能実習制度の拡充が実施されました。国を挙げた働き掛けにより、日本企業で技能実習制度の活用が促進されたことも、外国人労働者が増加している背景と言えるでしょう。なお、これまで技能実習生は、実習終了後に母国に帰国する必要がありましたが、特定技能に移行すればそのまま日本に在留できるようになりました。
(参考:法務省・厚生労働省『技能実習法が成立しました!』)
(参考:厚生労働省:『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年10月末現在)』)

外国人留学生の増加

独立行政法人日本学生支援機構が発表した「外国人留学生在籍状況調査」によると、2018年5月1日時点での外国人留学生数は29万8,980人で、前年比12%増加しています。留学生の出身国は「中国」が最も多く、次いで「ベトナム」「ネパール」「韓国」と、アジアを中心とした国・地域からの留学生が多いことがわかりました。

外国人留学生が増加した背景には、文部科学省および関係省庁による「留学生30万人計画」の策定など、日本のグローバル化に向けた、留学生の受け入れ・雇用の促進といった政府の動きがあります。留学で来日した外国人が、そのまま日本で就労するケースが増えたことも、外国人労働者数の増加要因と言えるでしょう。
(参考:『【最新版】外国人労働者の受け入れ数はどう変化した?グラフで読み解く日本の現状と課題』『【外国人採用】日本企業への就職を目指す外国人材の特徴-彼らが日本で働きたい理由とは』)
(参考:文部科学省『「留学生30万人計画」骨子の策定について』)

(参考:文部科学省『「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について』)

外国人労働者の受け入れが増加するも、残された数々の問題

外国人労働者が増加することで、労働不足が解消される一方、文化や習慣の違いなどからトラブルにつながることもあるようです。ここでは、外国人労働者の受け入れに関する問題点をご紹介します。

外国人労働者に対する差別

外国人労働者に対する差別やいじめといった問題も、いまだに残っていると言われています。人権侵害を受けて、外国人労働者がうつ病などの精神的疾患を患うケースもあり、彼らの中には、「日本では出身国によって対応や見る目が異なる」と感じている人もいるようです。

不当な待遇の雇用

外国人労働者を雇用する際の労働条件が、日本人と比較して低待遇なケースも見られます。この要因としては、外国人労働者を安い労働力として捉えていることが考えられるでしょう。また、前述した「特定技能」の対象業務は、力仕事や休日が不定期など、一般的に労働条件が厳しいと捉えられがちな業種でもあるため、日本人の労働力が集まりにくく人手不足が深刻な傾向にあります。外国人労働者を長期的に受け入れるためには、日本人と同等の待遇で雇用し、雇用契約の内容を順守する必要があるでしょう。

実態が見えない不法就労

在留資格がなかったり、在留期間を超えて不法に日本に在留したりする「不法就労者」も根深い問題です。不法就労者として摘発される外国人の国籍は多様化しており、悪質ブローカーの仲介のように不法入国の手口は巧妙化しています。そのため、不法就労の実態を把握しにくくなっているという課題もあります。中には悪質なケースもあるため、企業が外国人労働者を受け入れる際には入念な確認と、不法就労など不正であった場合の厳正な対処が必要となるでしょう。


(参考:厚生労働省『第2章 外国人労働者受入れ制度の見直しの必要性』)

外国人労働者問題の課題に対する政策・法律

外国人労働者に関するトラブルを防止するため、日本には外国人労働者を守る政策や法律が存在します。外国人労働者を企業の即戦力として受け入れ、仕事への意欲を引き出すためには、法律にのっとり、適切に雇用することが求められます。

労働基準法

原則として、労働基準法をはじめとする通常の労働関係法は、外国人にも適用されます。また、労働基準法第3条には、以下の規定があります。

第3条「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」

このように、国籍や信条などを理由に、労働者に対して差別的な扱いをすることは法律で禁止されています。外国人であることを理由に、待遇などの労働条件を不当に扱うことのないように注意しましょう。

労働施策総合推進法

別名パワハラ防止法と呼ばれる、労働施策総合推進法の第7条には、以下のような定めがあります。

第7条「事業主は、・・・雇用する外国人がその有する能力を有効に発揮できるよう、職業に適応することを容易にするための措置の実施その他の雇用管理の改善に努めるとともに、その雇用する外国人が解雇・・・により離職する場合において、当該外国人が再就職を希望するときは、・・・再就職の援助に関し必要な措置を講ずるように努めなければならない」

外国人労働者に対する適切な雇用管理は、企業の努力義務とされています。また、同法第8条に基づき、厚生労働省は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」を公表しています。この指針では、事業主は外国人労働者に対して適切な管理をする必要があるとして、そのための具体的な措置を示しています。内容の詳細は、後ほどご紹介します。
(参考:厚生労働省『外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針』)

出入国管理及び難民認定法

出入国管理及び難民認定法とは、全ての外国人の入出国および在留を公正に管理するための法律のこと。現在、問題視されている外国人の不法滞在や不法就労などの防止を目的に定められました。同法第2条の2には、以下の規定があります。

第2条の2「本邦に在留する外国人は、出入国管理及び難民認定法及び他の法律に特別の規定がある場合を除き、それぞれ、当該外国人に対する上陸許可若しくは当該外国人の取得に係る在留資格・・・又はそれらの変更に係る在留資格をもつて在留するものとする」

在留する外国人の活動内容は在留資格によって規制されるため、採用時には在留資格の確認をした上で、適切に受け入れの手続きを進めることが重要です。在留資格の種類については後ほどご説明します。

外国人労働者の受け入れをすることで得られるメリット4つ

グローバルな競争力が求められる社会の中、需要が高まる外国人労働者ですが、実際に雇用することでどのような効果が期待できるのでしょうか。外国人労働者を受け入れることによるメリットをご紹介します。
(参考:『外国人採用はますます本格化。ビザや受け入れはどうする?メリット・注意点を徹底解説』)
(参考:厚生労働省『外国人の活用好事例集』)

メリット①:人手不足解消と労働力の確保につながる

外国人労働者を受け入れることによる一番のメリットは、人手不足の解消と労働力の確保です。少子高齢化の影響で若年労働人口も年々減少している中、外国人労働者の雇用により人手不足を解消しようとする企業もあります。情報システムの高度化やAI(人人工知能)・IoTの活用が促進されたことによるIT人材不足に伴い、特に採用が困難な新卒エンジニアは、外国人材を採用する企業も増加傾向にあります。また、学ぶことに意欲的な外国人も多いため、母国で学んだ専門的な知識や技術を持った人材を雇用できれば、企業の業績アップにもつながります。

メリット②:新たな市場開拓や海外進出が望める

グローバル展開を計画している企業にとっても、外国人労働者は大きな武器となります。外国人労働者の中には、母国語に加え、英語や日本語といった3~4カ国語が話せる「マルチリンガル人材」もいるでしょう。多国語に対応できる外国人労働者を受け入れることで、ビジネスシーンで扱える言語の幅が広がり、外国人の顧客とのコミュニケーションの円滑化も期待できます。外国人労働者が海外との懸け橋となることにより、海外進出や新規ビジネスの機会創出にもつながるでしょう。外国人労働者の受け入れの必要性や在り方についての認識を社内で共有し、今後の企業戦略を見据えた社内のグローバル化に取り組んでいくことも重要です。

メリット③:従業員のコミュニケーション能力が向上する

雇用する外国人の日本語の習得度合いによっても異なりますが、外国人労働者を雇用する上で、言語の違いによるコミュニケーション不足は少なからず発生します。コミュニケーション不足に対しては、日本人従業員が日本語の細かなニュアンスが伝わるよう、いつも以上に詳細な説明をしたり、より伝わる表現を意識したりすることが求められます。

日常の業務でそうしたことを意識することで、自然と従業員のコミュニケーションスキルも向上します。ボーダーレスな職場環境を目指し、日本人従業員が外国人労働者に歩み寄る姿勢も重要です。

メリット④:新しいアイデアや技術を生み出せる

外国人労働者を受け入れることで、人種や文化、宗教、言語など多様な価値観や視点を社内に取り入れることができます。また、日本とは異なる文化や教育の中で生活してきた外国人労働者の視点や文化に触れることで、社内のグローバル化が図れ、企業全体が多角的に成長できるでしょう。ビジネスでの議論においても、いつもとは違ったアプローチでの展開が可能となり、新しいアイデアや課題に対する解決策の創出が期待できます。また、外国人労働者の自国特有の知識や技術を呼び込むことで、企業技術のさらなる発展にもつながるでしょう。
(参考:『ダイバーシティーとは何をすること?意味と推進方法-企業の取り組み事例を交えて解説-』)

外国人労働者を受け入れることによるデメリット

外国人労働者を受け入れることによる企業側のデメリットとしては、「雇用に関する煩雑な手続き」「異文化による価値観の不一致」「研修期間の長期化」などが挙げられます。

外国人労働者を雇用する際は、在留資格認定などの手続きが必要ですが、手続きには一定の期間が必要なだけでなく、雇用する外国人ごとに対応方法も異なります。そのため、初めて外国人を雇用する企業では、手続きの複雑さがハードルとなることもあるでしょう。また、文化の違いや異なる価値観を持った外国人材を企業の戦力として効果的に活用することができれば事業の発展につながりますが、企業と外国人労働者双方の理解が不十分な場合には異文化が壁となり、認識の不一致が生じる要因にもなることも考えられます。この他、言語の壁により日本人と比べて研修が長期化しがちなことを課題として感じる場合もあるでしょう。
(参考:『外国人採用はますます本格化。ビザや受け入れはどうする?メリット・注意点を徹底解説』)

外国人労働者を採用するには?

外国人労働者を採用する際には、どのような募集方法があるのでしょうか。ここでは、実際に外国人労働者を募集するときのアプローチ方法を紹介します。

大学や専門学校からの紹介

「大学」や「専門学校」などの教育機関では、外国人留学生の就職支援を行っていることがあります。新卒採用したい場合は、留学生が多い学校に直接足を運んで求人募集などを行うとよいでしょう。

ただし、学校ごとに外国人留学生が就職活動で利用する部署が異なるため、注意が必要です。「就職課」や「キャリアセンター」、留学生の受け入れを担当する「国際部」など、どこの部署が留学生の就職をサポートする役割を担っているかを大学ごとに確認し、アプローチしましょう。

ホームページやSNSの作成

「自社のホームページ」や「SNS」などのコミュニケーションツールも、外国人留学生や外国人に直接アプローチする方法として有効です。外国人向け求人ページやSNSを新たに作成する場合は英語で作成します。募集職種や待遇のほか、外国人が会社選びをする際に重視する「企業情報」「職場環境」「業種」についても詳細に記載するとよいでしょう。

求人広告や求人サービスの活用

外国人労働者を採用したい企業によく活用されているのが「求人広告」や「求人サービス」です。新聞や各種媒体による求人メディア、外国語対応のポータルサイトなど多岐にわたるため、自社の採用コストや採用手法に合ったものが選択しやすいでしょう。また、海外に向けて展開している求人サービスを利用すれば、求人募集のほか、採用に関する情報収集や外国人求職者のスカウトを行うこともできます。また、公的機関である「外国人雇用サービスセンター」や「ハローワーク」などを活用するという方法もあります。

人材紹介会社の活用

「人材紹介会社」を利用して外国人労働者を採用するという方法もあります。人材紹介会社の中には、外国人に対応するため、複数言語に対応できる人材をそろえた部署などを設けている企業もあります。そうした人材紹介会社を活用すれば、採用に関するやりとりもスムーズに進むでしょう。また、「外国人専門」「エンジニア職専門」といったように対象者の国籍や専門性を限定している人材紹介会社もあります。そうした独自性の高い人材紹介会社を選択することにより、企業が求める人物像に合った人材を獲得しやすくなるでしょう。
(参考:『外国人採用を成功させるため、押さえておきたいアプローチと選考・質問方法』)

外国人労働者の採用時のフロー

外国人を雇用するには、日本人を雇用するのとは違い、さまざまな手続きや確認が必要となります。ここでは、外国人の採用にあたって企業に必要な手続きや対応の流れを解説します。初めて外国人労働者を採用するときの参考にしてください。

【徹底解説】外国人労働者受け入れには4つのメリットが!企業が守るべき雇用のルール

フロー①:在留資格の確認

在留資格では、外国人に対する日本国内での「活動範囲」や「在留期間」が決められています。そのため、適法の下に日本に滞在するには、在留資格に基づいて在留する必要があります。

就労可能な在留資格は、一般的な通称として「就労ビザ」と呼ばれています。在留資格と混同されがちな「ビザ(査証)」は、日本大使館または領事館が日本への入国を許可するものであるのに対し、「在留資格」は、出入国在留管理庁が外国人の活動内容によって日本滞在中の活動を許可するものです。

採用したい外国人が日本にいる場合は、まず在留資格を確認します。不法就労にならないよう、採用する外国人が就労可能な在留資格を持っているかどうかを正確に把握することが重要です。一方、海外にいる外国人を日本に呼んで採用する場合は、在留資格は持っていないと考えられます。そのため、本人の職歴や学歴を正しく把握しておきましょう。在留資格の一覧を表にまとめました。

●在留資格一覧表(令和2年9月現在)

◎:就労に制限なし、 ○:一定範囲で就労可、△:許可の内容により就労可、×:就労不可
(参考:出入国在留管理庁『在留資格一覧表(令和2年9月現在)』)
(参考:東京都外国人雇用サービスセンター『資料一覧 在留資格一覧表』)

フロー②:労働契約の締結

在留資格に問題がなければ、採用する外国人本人と賃金など入社後の労働条件を話し合い、書面による雇用契約を結びます。日本と比較し、海外は書面による契約書を重視する傾向があり、採用後のトラブル防止のためにも労使合意の下の契約であることを書面で残しましょう。また、企業には労働基準法によって労働条件通知書の交付も義務付けられています。外国人が契約内容を正しく理解できるよう、母国語や英語などの言語で翻訳文を作成したものを本人に渡すとよいでしょう。
(参考:『【雛型付】雇用契約書とは?簡単に作成する方法と各項目の書き方、困ったときの対処法』『【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説』)

フロー③:在留資格(就労ビザ)の変更・申請

雇用契約を取り交わしたら、在留資格(就労ビザ)申請のための手続きを行いましょう。必要な対応については、「日本にいる外国人を雇用する場合」と「海外にいる外国人を雇用する場合」とで異なります。

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就労ビザ申請に必要な【Word版】外国人労働者雇用理由書のダウンロードはこちら日本にいる外国人を採用する場合

採用した外国人がすでに日本にいる場合は、以下の対応が必要です。

①現在の在留資格(就労ビザ)と新しい職務内容の比較
②在留資格(就労ビザ)変更などの対応

採用した外国人が雇用後に担当する職務内容が、現在持っている在留資格の「資格内」の活動に該当するか否かを確認します。同時に、在留期間についても超過していないかを確かめましょう。新しい職務内容が在留資格内であるかの判断が難しい場合は、企業を管轄する出入国在留管理局に相談し、正確な情報を入手し判断することが重要です。

その後、状況に応じて在留資格(就労ビザ)の手続きを進めます。具体的な対応方法は、「①前職と別職種で働く場合」「②前職と同職種で働く場合」「③留学生を新卒採用する場合」の3つのケースによって異なります。

すでに本人が持っている在留資格と雇用後の職務内容や職種が異なる場合や、留学生を新卒採用する場合は、採用予定者の在留資格を採用後の職務内容に該当する在留資格に変更する必要があります。前職と同職種で働く場合は、同じ在留資格(就労ビザ)のまま雇用できるため、変更などの手続きは不要です。しかし、転職先でも現在の在留資格(就労ビザ)および在留期間が有効であることを証明する「就労資格証明書」の交付を受けておくと、次回の在留期間更新(就労ビザの延長)手続きがスム-ズに進みます。ケースごとに必要な手続きが異なるため、事前に必要書類を確認し、提出漏れがないように注意しましょう。

海外にいる外国人を採用する場合

海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合は、以下の流れで進めます。

①在留資格認定証明書の交付申請
②在留資格認定証明書を当該外国人に送付
③外国人本人が日本大使館および領事館でビザ(査証)を取得

外国人を海外から呼び寄せる際は、「在留資格認定証明書」の交付申請を行うのが一般的です。「在留資格認定証明書」とは、該当する外国人に対し「日本への入国後、在留資格(就労ビザ)が取得できる見込みである」ことを証明する書類のこと。事前審査を受け、在留資格(就労ビザ)の基準に適合していると認められれば、証明書が交付されます。

在留資格認定証明書が交付されたら、海外にいる当人に証明書の原本を送りましょう。その後、外国人本人が証明書と自身のパスポートを持参し、在外の日本大使館および領事館でビザ(査証)を取得します。在留資格認定証明書の交付日から3カ月以内に入国しなければ無効となるため、採用した外国人に対して迅速な手続きを促しましょう。

フロー④:入社までの準備

企業規模によっても異なりますが、在留資格(就労ビザ)申請後、審査結果が出るまでには時間がかかります。海外から外国人労働者を呼び寄せる場合、約2週間~3カ月程度の時間を要するため、在留資格(就労ビザ)が取得できる可能性が高い場合は、この期間に外国人労働者の受け入れ準備を進めておくとよいでしょう。

●外国人労働者を受け入れる準備の例

・海外にいる当該外国人へのビザ(査証)申請の指導
・社宅の手配
・日本語教育のためのスクール選び
・当該外国人が来日するときの航空機手配
・研修カリキュラムの作成

フロー⑤:雇用開始

在留資格(就労ビザ)が取得できたら雇用を開始できます。雇用にあたっては、外国人労働者の日本での生活をサポートすることも重要です。採用した外国人の居住地が変わる場合は、管轄する市町村役場で住民登録をするよう、外国人本人に伝えましょう。住民登録をすることで、身分証明が可能な在留カードにも住所を記載してもらえるため、外国人労働者のパスポートの常時携帯義務がなくなります。

外国人労働者を雇ったら?押さえておきたい労働条件・労働環境

労働者を雇用した際に、企業に求められる対応が記載されています。ここでは、指針で示された内容の中でも、特に留意しておきたいポイントを項目ごとにご紹介します。
(参考:厚生労働省『外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針』『外国人雇用はルールを守って適正に』『外国人の活用好事例集』)

労働時間

労働時間管理では、時間外労働の削減や正確な労働時間の把握に努めることが重要です。なお、在留資格によって、適正な労働時間の範囲が異なります。外国人留学生の場合、資格外活動許可を受けた場合にアルバイトを行うことができます。しかし、可能な就労時間数は、原則「1週間28時間以内」とされ、本来の入国の目的である「留学」に支障をきたさないために、こうした制度が設けられています。

働きやすい環境の提供

日本での生活を始めるにあたり、外国人労働者は言葉の壁や文化・習慣の差異などから、さまざまな困難に直面します。行政手続きや銀行口座の開設時には同行するなど、生活面でも積極的にサポートし、外国人労働者の不安や負担の軽減を図ることが重要です。日本人従業員に対して自発的なサポートを促すためにも、外国人労働者との交流や異文化を理解する機会を設けるなど、外国人労働者を尊重する姿勢を醸成するのもよいでしょう。

日本語教育を含む研修の実施

「整理・整頓」など安全衛生上のキーワードは日本語で理解してもらうように教育し、「火気厳禁」「墜落注意」といった職場における労働災害防止に関する掲示には外国人労働者の母国語を用いるといった工夫をしましょう。また、外国人社員の日本語能力を向上させることは、日本人社員との円滑なコミュニケーションが促進され、働きやすい就労環境の構築にもつながります。個別指導や語学試験の受験料補助など日本語教育の機会を作り、積極的に日本語習得を支援することが重要です。

派遣、または請負を行う企業の留意点

外国人労働者を派遣・請負として契約する場合は、契約内容の正しい理解が重要です。適法な「業務委託契約」「請負契約」の内容であることを確認しましょう。
(参考:『【かんたん図解】請負って何?業務委託・派遣・受託…どんなとき、どれを選べばいいの?』)

外国人労働者の最低賃金は日本と同じルールで設定

最低賃金制度は、働く全ての人々に賃金の最低額を保証する制度です。最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定めたもので、企業には労働者に対して最低賃金額以上の賃金を支払うことが義務付けられています。中でも、地域別最低賃金は、産業や職種、雇用形態にかかわらず、都道府県内の事業場で働く全ての労働者に適用されます。そのため、外国人労働者の賃金基準も日本人と同様に定める必要があります。ここでは、外国人労働者を適切に雇用するために、外国人労働者の賃金の実態と、最低賃金を下回った場合の罰則について解説します。

賃金のデータ

厚生労働省が発表した『令和元年賃金構造基本統計調査』によると、外国人労働者全体の賃金は月額平均22万3,100円でした。日本人を含む一般労働者の賃金平均である30万7,700円と比較すると、7割程度の水準にとどまっています。在留資格別に見ると、専門的・技術的分野(特定技能を除く)が32万4,300円、身分に基づくものが24万4,600円、技能実習が15万6,900円となっており、特に技能実習による賃金の低さが顕著であることがわかりました。

外国人労働者の賃金が一般労働者全体を下回る背景には、一般労働者の勤続年数が12.4年であるのに対し、外国人労働者は3.1年と、勤続年数の差も影響していると考えられます。しかし、一部では最低賃金を下回るといった問題も起きているようで、労働環境の改善は依然として課題となっています。

(参考:厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査の概況』p1、16)

最低賃金を下回ったら罰則が

最低賃金を下回った場合、罰則の対象となります。企業が外国人労働者に対し、最低賃金より低い賃金しか支給しなかった場合は、最低賃金額との差額を支払う必要があります。また、地域別最低賃金額より低い賃金で雇用した場合は、最低賃金法第40条によって、50万円以下の罰金が科せられます。
(参考:厚生労働省『最低賃金制度とは』)

外国人労働者の人事・労務系に関する手続きは?

外国人労働者を雇用した際は、日本人雇用時にはない届け出書類の提出や手続きが発生します。ここでは、外国人労働者に対して人事・労務担当者が行う手続きについて解説します。

入退社手続き

労働施策総合推進法第28条では、外国人労働者を雇用する事業主に対して「外国人雇用状況の届出」の提出を義務付けています。そのため、新たに外国人労働者を雇用する際、またはその外国人労働者が離職する際には、必ずハローワークへの届け出が必要です。

外国人労働者に対する適切な雇用管理の促進を目的としているため、該当する外国人労働者の「氏名」「在留資格」「在留期間」のほか、厚生労働省で定められた項目について正しい情報を記載することが重要です。届け出方法は、外国人労働者が雇用保険に加入するか否かで異なります。雇用保険に加入する場合は、ハローワークでの雇用保険手続きと一緒に届け出ることが可能です。未加入の場合は、「外国人雇用状況届出書」を別途作成して提出しましょう。なお、在留資格が「外交」「公用」である場合や「特別永住者」の場合は届け出の対象外となります。
(参考:厚生労働省『外国人雇用はルールを守って適正に』『外国人雇用状況の届出において、 在留カード番号の記載が必要となります』)

税金

外国人労働者に課税される所得税額は、該当する外国人労働者が居住者・非居住者かによって、適用される内容が異なります。

居住者の場合、源泉徴収は日本人と同様の手順で行います。「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出を求め、「年末調整」により納付する所得税を計算しましょう。非居住者の場合は、原則20.42%の税率で源泉徴収を行います。ただし、日本と母国などでの二重納税を防止するための「租税条約」により、国同士が非居住者に対して所得税を一定額まで免税としている場合は、外国人労働者本人が「租税条約に関する届出」を税務署へ提出する必要があります。

住民税は、居住者の場合は「課税対象」、非居住者の場合は「非課税対象」です。外国人労働者であっても、その年の1月1日時点に日本国内が住所となっていれば住民税納税義務者に該当し、前年の所得に応じた納税が必要となるのです。企業には、原則として外国人労働者の毎月の給与から住民税を特別徴収し、居住する市区町村に納入することが義務付けられています。日本人従業員と同様に取り扱う必要があることを理解しておきましょう。
(参考:国税庁『No.2010 納税義務者となる個人』『日本における給与に係る源泉徴収制度の概要 令和2年版』)
(参考:総務省『外国人を雇用する事業者の方へ~住民税の特別徴収にご協力ください!』)

社会保険

各種社会保険は、外国人労働者でも日本人と同様の仕組みが適用されます。そのため、加入基準を満たす雇用契約を結んだ場合は社会保険への加入が必要です。社会保険に係る法令の内容および保険給付の請求手続きなどは、外国人労働者が理解できる方法で周知するとともに、被保険者に該当する外国人労働者に対し、必要な手続きは迅速に行いましょう。

ここでは、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」について解説します。

(参考:日本年金機構『社会保険の加入についてのご案内』)
(参考:厚生労働省『第4章 被保険者について』)

健康保険

健康保険への加入基準を満たした条件で外国人労働者を雇用する場合は、基準を満たした日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を日本年金機構または健康保険組合に提出します。必要書類に記載する外国人労働者の姓名は、在留カードの表記と同じ順序で書くことが重要です。また、外国人労働者に配偶者や家族がいる場合は、日本人と同様に被扶養者として申請できます。その際に必要な「被扶養者異動届」には押印が必要ですが、外国人は印鑑を持っていないケースもあるため、自筆署名で代用できるかどうか確認しましょう。

年金保険

日本人は20歳になると自動的に基礎年金番号が発番されますが、外国人に対してはそのような仕組みがありません。雇用した外国人労働者が基礎年金番号を持っていない場合は、「被保険者資格取得届」の基礎年金番号欄には、マイナンバーを記載します。後日、基礎年金番号が発番されると、企業に基礎年金手帳が送付されるため、受け取った後は速やかに本人に渡しましょう。また、被保険者資格取得届と一緒に「被保険者ローマ字氏名届」の提出も必要です。基礎年金番号の記載欄は空欄のままで構いませんが、その他の項目には在留カードにしたがって正確な内容を記載しましょう。

また、外国人労働者に対し、日本と母国の社会保障制度への二重加入防止と年金加入期間の通算をするため、「社会保障協定」を締結している国もあります。協定の内容は、相手国によって対象となる制度が異なる場合もあります。外国人労働者の出身国などを確認し、特別な取り扱いが必要かどうかを確認するとよいでしょう。
(参考:日本年金機構『社会保障協定』)

雇用保険

雇用保険の手続きも日本人同様に進めます。週20時間以上、31日以上雇用する場合は、翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」をハローワークに提出します。先述した通り、雇用保険の手続きは、外国人の雇用状況の届け出も兼ねているため、在留カードの内容に基づいて正確な内容を記載し、手続きを進めましょう。

国人労働者の受け入れを積極的に行っている企業

実際に外国人労働者を雇用し、戦力として受け入れている企業もあります。ここでは、外国人労働者の採用に取り組む企業をご紹介します。

メルカリ

フリマアプリを運営する株式会社メルカリでは、2018年から新卒においてもグローバル採用を強化しています。2018年10月入社では新卒50名のうち44名、2019年4月入社では新卒50名のうち7名が外国籍でした。同社では、グローバル化の加速に伴い、外国人労働者に対応する社内制度の整備にも取り組んでおり、ビザ取得やフライトの手配、日本での住居探しや引っ越しに至るまで全面的にサポートしています。また、日常生活に支障がないよう、日本語の語学学習も支援しています。

なお、同社では自社の成長戦略として「AI」をコア技術に位置付けており、新卒採用においてもエンジニアを中心に採用しています。採用募集でインドや中国など、視野を世界に広げて取り組むことで、高度なIT技術・知識を持つ人材と出会う機会が増加。高水準の外国人材の採用が実現したことで、国際競争力の強化にもつながっているようです。

楽天

インターネット関連サービスを中心に展開する楽天株式会社は、2010年に社用公用語を「英語」に切り替え、グローバル人材戦略に取り組んでいます。特に、外国人のエンジニア採用を強化しており、2014年入社の開発職は、約100人中8割以上が外国籍でした。従業員の出身国は60カ国以上にまで及んでいます。

同社では、外国人労働者を積極的に受け入れることで、従業員同士が国籍を超えて関わり合う企業風土が定着しました。また、国籍や文化、性別といったダイバーシティーに配慮した職場の環境整備も進められています。企業の意識をグローバル基準とすることで、新たな視点を取り入れた創造力にもつながっているようです。

外国人労働者の雇用に関する支援・窓口

外国人労働者の受け入れを成功させるためには、雇用後の管理が重要です。

厚生労働省では、「外国人雇用管理アドバイザー制度」を設け、各都道府県のハローワークに外国人雇用管理アドバイザーを配置しています。企業からの外国人雇用に関する相談に対し、現在の雇用管理の実態および問題点を把握・分析した上で、効果的な改善案を提示するのが、外国人雇用管理アドバイザーの役割です。また、東京、名古屋、大阪・福岡にある「外国人雇用サービスセンター」でも、雇用管理に関する専門的な相談・援助を無料で実施しています。

外国人労働者の雇用に対して、企業内で起きている問題をどのように解決したらよいのか悩んでいたり、受け入れ後の雇用管理方法に不安を抱えていたりする場合は、これらの相談窓口の利用を検討するのもよいでしょう。
(参考:厚生労働省『外国人の雇用』)

まとめ

近年、日本企業での外国人労働者の受け入れが年々増加し、外国人雇用が日常化しつつあります。外国人労働者を雇用に関するルールに沿って受け入れることで、人手不足解消やグローバル化促進など、企業にとっても多様なメリットがあります。初めて外国人を採用する企業は、雇用時の手続き方法や注意点なども踏まえた上で、外国人労働者の雇用を検討しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/ds JOURNAL編集部)

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