100万人の登録者がいるようなトップインフルエンサーにも、登録者の少ない時代はもちろんありました。一般人がバズる動画を作るには、どのような要素を入れればよいのでしょうか? 本稿では、YouTubeチャンネル登録者数100万人超えの株式会社リンクロノヴァで代表取締役社長を務める長野雅樹氏と、株式会社リセンダーの社員としてSNS企画・演出などを担当する鈴木啓太氏による著書『結果を引き寄せる完全版YouTube TikTokビジネス活用術』(KADOKAWA)から一部抜粋し、バズる動画をつくるための思考法について解説します。

バズりやすい動画の三要素

TikTokやYouTube Shortsショートのバズりやすい動画というのは、「共感性」と「ギャップ」もしくは「インパクト」を掛け合わせた要素が含まれています。

「動画」をバズらせるのに必要な“ギャップ”…TikTok・Y...の画像はこちら >>

「共感性」を生み出す動画作りで考えること

「共感性」といっても漠然としているので、例を挙げて説明します。共感性とは、みんなが経験したことがあるものだったり、みんなが持っている物の話題だったりで話やネタを作ることです。

例えば、写真の撮り方といった内容で動画を作るとします。その際に、どのカメラの撮り方を題材にするかということです。

MMD研究所の「2022年5月スマートフォンOSシェア調査」によると、10代~30代の6割以上がiPhoneを使っていることからも、多くの人がiPhoneを持っているので共感してくれる確率は高いわけです。より多くの人にとっての共感性があるということになります。

共感性は作る動画のジャンル選ぶにも関係します。

共感しやすいジャンルとそうでないジャンルがあります。わかりやすい例でいうと、私たちの動画です。

私たちは元々、建設業を題材に動画を作っていました。私たちが日々行っている仕事だから、専門的な知識も豊富だし、ここから仕事につながってほしいと思っていましたが、そもそも建設業の動画を見たいと思っている人ってどう考えても少ないですよね。

もちろん専門的な情報を欲している方も一定数いますが、情報が欲しいときだけで日常的には見ないし、そもそも一般の方は建設業に興味があるとかないとかすらも考えませんよね。となるとやはりジャンル的には共感性が低く、バズりにくいです。

この状況を逆手に取った画期的なアイデアのフォーマットを生み出せれば、バズる可能性がないとは言いませんが、難しいことは確かです。今、私たちが作っている動画は料理です。料理は非常に共感性が高いジャンルといえます。

人は基本的に毎日食事をしますし、国内国外の枠にもとらわれません。建設業と料理、どちらが共感性が高いかは、比べるまでもありません。ですがその分、競合するクリエイターが多いのも事実です。

「ギャップ」を感じる動画作りで考えること

「ギャップ」に関しては、世間的に当たり前と思われている話題に対して、否定的なことを言ったり、「こんな場所で!」や「こんなにかわいいのに!」といった感情を視聴者に持たせます。

一時期「年収800万円以下の人は社会のお荷物だ」という話題がネット上で話題になりました。年収800万円以下の人は払っている税金よりも、社会から享受している金額の方が多いからお荷物だという意見です。それに対して、「年収800万円以下の人の方が多いのだからそんなわけないでしょう」「年収800万以下の仕事もないと社会が回らない」というのが一般的な意見です。

この議論の中で、「年収800万円以下はお荷物だ」というのは、一般常識に対しての意外性でありギャップということになります。こういったギャップを視覚的にも、聴覚的にも動画の中に入れていくと人の興味もひく動画を作れるのです。

一概にはいえない「インパクト」

「インパクト」に関していえば、ギャップがインパクトにつながることもありますし、大きい音が鳴るだけでもインパクトになります。

単純に「かわいい」とか「かっこいい」というのも視覚的インパクトと考えられます。

かわいい女の子たちが踊っているだけで再生数が取れてたくさん「いいね」されるのは、インパクトがあるからです。顔がかわいかったり、踊りが上手だったりするのか、受け取り方は人それぞれですが、多くの人がその動画を見た瞬間にかわいいというインパクトを受けていることになります。

どんな形でも目を惹くものは視覚的インパクトがあるということです。このような動画は、ギャップや共感性を捨ててインパクト1本で勝負しています。

組み合わせによって目を惹く

とはいえ、みんながかわいかったり、かっこいいわけでもありません。そこで私たちがやっているのが組み合わせによって目を惹く方法です。

私たちの動画でいうと、動画で出てくる最初の画角が社内であることがわかり、奥に社長が座って仕事をしていて、その前でいきなりガスコンロを出し、食材を出して料理をはじめてしまうのです。ガスコンロを出して料理をはじめること自体には何のインパクトもありませんが、それが会社の中で社長の目の前というところでギャップが生まれてインパクトになっているのです。「会社×ガスコンロ」というギャップです。

それ以外では弁当箱を開けたらプリンだったり、棚から蕎麦が出てきたりというネタもやりました。それらもギャップを利用しています。

私たちは「会社×◯◯」というフォーマットを確立することで、「会社×ガスコンロ」「会社×料理」というように、常にインパクトを生み出す動画を作れる仕組みにしています。

そのうえで社長と部下の掛け合いをするところまで固定化しています。

この過程を経て、自分だけの独自の動画フォーマットが見えてきます。それが固まってきたとき、これまでの経験や学びを最大限に活かし、よりクオリティの高い動画作りを追求できるようになります。続けることの難しさを理解しつつ、それでも持続することの価値を信じる。それが、TikTokやYouTubeを活用することでビジネスを成功へと導く鍵となります。

このような取り組みは、地味で時間がかかるものかもしれません。しかし、その先には大きな成果が待っている可能性があることを忘れてはいけません。動画作成の成功は、一歩一歩着実に進むことで、確実に目的地へと近づいていくのです。

長野 雅樹

株式会社リンクロノヴァ

代表取締役社長

鈴木 啓太

株式会社リセンダー

社員