
不動産投資において、見落としがちなコストのひとつが土地登記にかかる費用です。具体的な金額は登記の種類や不動産の価格、地域などによって異なりますが、場合によっては100万円以上の費用が必要となることもあります。
本コラムでは、土地登記の費用の目安や相場、計算例のほか、費用を抑える具体的な方法を解説します。
■そもそも土地登記とは
(画像:PIXTA)はじめに、登記制度について基本的な知識を解説します。基本的な知識を理解することによって手続き面での理解が深まるため、しっかりと確認していきましょう。
●登記の趣旨・目的
不動産登記制度の目的は、不動産の物理的状況(住所・面積・構造)や、権利関係(所有権や抵当権)などを公示することで、権利者の権利を保護するとともに、取引の安全を図ることにあります。なお、権利関係の登記は義務付けられていませんが、登記をしないと第三者から権利を侵害されるリスクがあります。売買により土地の所有権が移転した場合、登記をしなくても所有権は完全に移転しますが、登記をしなければ第三者に所有権を対抗できません。
例えば、AがBに土地を売却したあと、AがCにも土地を売却し、Cが先に所有権移転登記を備えてしまうと、「先に購入したB」 よりも「先に所有権移転登記を備えたC」が土地を取得したことになります。Bは第三者(ここではC)に対して対抗要件を備える、すなわち所有権移転登記を行わないと所有権を主張できなくなります。ちなみに、民法上「物」の二重譲渡は認められているので、「B」にも「C」にも売却を行う 「A」の行為自体はあり得ます。

登記簿は、不動産の住所や面積・形状などが記載される表題部と、所有者などの法的関係が記載される権利部に分かれています。前述した通り、表題部は必ず登記しなければなりませんが、権利部の登記は任意となっています。ただし、相続による取得については、2024年からは所有権移転登記が義務づけられました。
このように、登記簿のうち表題部の登記は土地家屋調査士に、権利部の登記は司法書士に依頼することが可能です。
弁護士が登記業務を行うことも法律上は可能ではありますが、登記業務は専門性が高いため、弁護士もまた土地家屋調査士・司法書士に委託することが一般的です。そのため、登記業務を依頼する場合には、最初からそれぞれの専門家に依頼するのがおすすめです。
●登記の種類
不動産登記が必要となるケースにはさまざまなものがありますが、一般的によく行われる登記は次の5種類です。
種類概要表題部変更登記土地の分筆や地積更正を行う際にする登記所有権保存登記新築物件など、これまでに所有権登記がなされていない物件に所有権を設定する登記所有権移転登記売買・相続などで所有権が移転した時にする登記抵当権設定登記抵当権抹消登記物件に抵当権を設定した時、または完済等により抹消する時にする登記所有権登記名義人住所変更登記所有者の住所や氏名が変更となった時にする登記
例えば、不動産を購入し、その土地に抵当権を設定する場合のように、複数の登記を同時に行うことも(この場合は所有権移転登記と抵当権設定登記)一般的によく行われます。
複数の登記を一括して専門家に依頼する場合、それぞれ単体で依頼するよりも報酬額が低くなることが一般的です。とはいえ、登記を先延ばしにすると権利関係があいまいになるなどのリスクがあるため、登記原因が発生したら速やかに登記手続きを済ませるようにしましょう。
■土地登記にかかる費用一覧

登記費用は、国に支払う「登録免許税」と、専門家に支払う「報酬」の二面からなります。以下からは、それぞれの費用の内訳や相場について解説します。
●登録免許税の目安・相場
登録免許税とは、登記手続きの際に登記を行う者(不動産登記の場合はその不動産の所有者)が国に納める税金のことをいいます。原則として登記申請の際に現金で納付します。納付額が3万円以下であれば収入印紙による納付も可能です。
登録免許税は、権利部に関する登記手続きの際に納付が必要となりますが、表題部に関する登記手続きでは分筆や合筆などを除き原則非課税となります。
登録免許税の金額は、不動産の価格によって変動します。具体的な計算方法は次の通りです。
登録免許税の計算方法
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額×税率
固定資産税評価額とは、「固定資産評価基準」に基づいて各市町村が個別に設定する価額のことで、その名の通り固定資産税の算出にも用いられます。固定資産税の課税明細書で確認できるほか、自治体の固定資産課税台帳でも確認できます。
固定資産税評価額は、面積や土地の形状等を総合的に勘案して算出されますが、おおよその目安としては、土地の場合は地価公示価格の約70%、建物の場合は再建築価格の約50~70%もしくは新築工事にかかった費用の50~60%が目安です。
税率は、登記手続きの種類や不動産の取得方法により異なります。後述しますが軽減税率が適用されるケースもあるため、しっかりと確認しておきましょう。
登記原因税率所有権保存登記0.4%売買による所有権移転登記(土地)2%相続、法人の合併または共有物の分割による所有権移転登記(土地)0.4%その他(贈与・交換・収用・競売等)の取得方法による所有権移転登記(土地)2%抵当権設定登記抵当権抹消登記0.4%所有権登記名義人住所変更登記一律1,000円出典:「No.7191 登録免許税の税額表」(国税庁)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm)を加工して作成
●土地家屋調査士報酬の目安・相場
土地家屋調査士に登記を依頼する場合、土地の用途変更(土地地目変更登記)など比較的簡易的な手続きであれば5万円ほどの報酬となりますが、境界確定などの測量業務が加わると費用が高額になることもあります。
例えば「土地を購入する際、正確な取得価格を算出するために境界確定測定を行ったところ、登記簿上の地積と異なっていた」ということがあります。これは、土地が古くから利用されていたり、自然災害の被害を受けたりして、境界線が曖昧になることによって起こります。
このような場合、まずは土地家屋調査士に境界確定測量を依頼して正確な面積を測量してもらい、次に表題部変更登記を行う必要があります。
境界に関する基本的な知識や、土地を購入する際に境界確認書を取得すべき理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】【第5話】境界確認書と確定測量をすることの重要性に
●司法書士へ報酬の目安・相場
司法書士に登記手続きを依頼する場合、地域や依頼内容によっても異なりますが、報酬相場は3~7万円ほどとなっています。
別途、相談料や書類の収集等に費用が生じるため、最初の相談の際にしっかりと見積もりを出してもらうようにしましょう。
登記の種類報酬の目安(全国平均)所有権保存登記2万9,060円所有権移転登記(売買)5万6,678円所有権移転登記(売買・複雑なもの)9万4,887円所有権移転登記(相続)7万4,888円所有権移転登記(贈与)5万3,902円抵当権設定登記4万2,699円抵当権設定登記(複雑なもの)7万6,383円抵当権抹消登記1万7,470円所有権登記名義人住所変更登記1万3,913円出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」■土地登記費用の計算例
登記にかかる費用は、不動産の固定資産評価額や、手続きの内容によって大きく異なるため、一概に費用の相場や目安を算出するのは困難です。そこで以下からは、実際に表題部・権利部の登記を行う際の費用を計算してみます。
前提条件
・固定資産税評価額2,500万円の土地を売買で取得する
・土地の境界確定と土地地積更正登記を行う
・売買による所有権移転登記を行う
・土地家屋調査士・司法書士への報酬は全国平均値をもとに算出する
これらの前提条件をもとに計算してみると、結果は次のようになります。
表題部土地家屋調査士報酬:39万316円(※)※地積の測定・境界確定および表題部登記手続き費用の全国平均権利部・登録免許税:2,500万円×2%=50万円
・司法書士報酬:5万6,678円(※)
※売買による所有権移転登記手続き費用の全国平均合計94万6,994円
この金額に書類の取得費用などを含めると、登記に必要な費用は約100万円となります。このように、土地の境界確定などの測量費用がかかる場合と、登録免許税が高額である場合には、登記手続き費用が非常に高額となってしまいます。
■土地登記の費用を抑える方法はある?

ここまで解説したように、土地の登記には高額な費用がかかりますが、負担を軽減する方法もあります。
●登録免許税の軽減措置を利用する
登記費用(権利部)に関する費用のうち、登録免許税の占める割合は非常に大きく、都心の物件では登録免許税だけで100万円を超えることもあります。
現在、土地の売買に関しては、2026年3月31日までの間、固定資産税の税率が2%から1.5%に軽減されています。また、相続や贈与に関しては免税とされています。
ただし、軽減措置を活用するためには登記申請と同時に住宅用家屋証明書などの書類を提出しなければなりません。そのため、利用できる軽減措置がないか、必要な書類は何か、あらかじめ司法書士に確認することをおすすめします。
●自分自身で土地家屋調査士・司法書士を探す
不動産の売買などを行う際、不動産会社等から土地家屋調査士・司法書士を紹介されることが一般的ですが、自力でこれらの専門家に依頼することで、費用を抑えられる可能性があります。
ただし、一概に土地家屋調査士・司法書士といっても、それぞれ得意不得意があるため、必ずしも専門性が高い方を探せるとは限りません。例えば、都市部のオフィスビルと地方の住宅地とでは取り扱いが異なるため、それぞれに特化した経験豊富な専門家に依頼することをおすすめします。
多くの専門家は初回の相談や見積もりを無料で行っているため、まずは相談してみたうえ、経験豊富で信頼できると判断できるのであれば依頼してみましょう。
●自分自身で登記手続きを行う
登記手続きを自力で行うことで、土地家屋調査士・司法書士に支払う登記手続き報酬を節約することも可能です。
もっとも、登記業務は弁護士であっても土地家屋調査士や司法書士に委託するほど専門性が高く、無理に自力で対応すると、何度も手続きをやり直す必要があるほか、最悪の場合には誤った情報を登記してしまう可能性もあります。
登記費用のうち専門家への登記手続き報酬自体はそれほど高額ではないため、自力で行うことで生じるリスクと、得られる利益(5~7万円ほどの節約)を十分に検討するようにしましょう。
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