【DMG森精機】技術とノウハウ吸収し世界有数の工作機械メーカーに、M&Aでさらなる成長目指す

DMG森精機(東京都江東区)は企業買収や事業継承で技術とノウハウを取り込み、製品ラインアップに磨きをかけ、世界有数の工作機械メーカーだ。自動車や航空宇宙、医療という主力産業が激変する時代にあるなかで、M&Aによるシナジーでさらなる成長を目指す。

DMG森精機が有する工作機械と特徴

DMG森精機(旧森精機製作所)は1948年に創業。繊維機械の製造・販売からスタートし、高度成長期の1958年に工作機械へ進出。1968年には当時最新鋭だった数値制御式(NC)旋盤の製造・販売を開始した。

現在、提供する工作機械は、5軸加工機、複合加工機、立形や横形のマシニングセンタなどの幅広い工作機械を取り揃えているほか、ソフトウェア(ユーザインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウェアなど)や計測装置、アプリケーション、エンジニアリング、修理復旧サポートなど多様な製品・サービスを手がけている。向け先も、機械、精密・半導体、金型、航空、宇宙、EV(電気自動車)、メディカルと幅広い。

独DMGとの資本提携で世界一へ躍り出る!

DMG森精機が持つ卓越した技術力と豊富な製品ラインナップは、積極的なM&A戦略によるところが大きい。企業の合併・買収を通じて技術革新と製品開発力を取り込み、高精度で耐久性のある工作機械を製造。ユーザーのニーズに応じた製品の設計や改良を続け、なかでも5軸加工機やCNC旋盤の開発と販売には力を入れてきた。

2001年5月には民事再生法の適用を申請した池貝の子会社で、CNC立形研削盤メーカーの太陽工機を連結子会社化(2024年12月に完全子会社化)。それにより、切削工程から研削工程まで一気通貫での提供を可能にした。翌02年8月には民事再生法を申請した日立精機からNC旋盤などの工作機械事業を取得。製品ラインを強化するとともに、それまで中部・西日本としていた旧森精機製作所の販売プレゼンスを東日本に拡大した。

2007年には、旧森精機製作所初の海外生産拠点として、スイスのDIXI machinesを買収。きさげ技術(金属の表面をノミ状の工具(きさげ)で削り、平面や直角、真っ直ぐに仕上げる手作業の技術)を含む工作機械の高精度・高剛性技術を獲得。

海外生産ノウハウの蓄積に努めた。

M&A戦略に弾みをつけたのが2009年3月、DMGブランドで知られる工作機械メーカー、独ギルデマイスターグループとの資本提携だった。

ギルデマイスターは欧州最大手の工作機械メーカー。1994年に立形フライス盤やNCボール盤、マシニングセンタの技術を有していたDeckel Maho AGの事業を取得。のちに5軸加工機での技術の優位性につながった。1999年には高品質のターニングセンタに強みを持つFAMOTをグループ会社化。また、2001年にはSAUER GmbH&Co.を子会社化したことで、セラミック、ガラス等の脆性材料やシリコンの加工を可能にする超音波技術を獲得していた。旧森精機製作所にとっては、こうした世界に通じる最高の技術を一気に手にしたようなものだった。

その後日独の両社は、2013年10月に旧森精機製作所が社名を「DMG森精機」に変更。同時にギルデマイスターも「DMG MORI SEIKI AKTIENGESELLSCHAFT」(DMG MORI SEIKI)に社名変更。2015年3月にはDMG森精機がDMG MORI SEIKIの株式の公開買い付け(TOB)で過半数の株式を取得し、同5月にDMG MORI SEIKIを子会社化。2016年に完全経営統合が完了した。

現在、世界7か国で17の生産拠点を擁し、約1万3500人のグループ従業員を雇用する世界最大の工作機械メーカーに飛躍。中小企業から大企業まで、全世界で約30万カ所のユーザー(潜在顧客を含む)を抱えるようになった。

倉敷機械を譲受、不足はM&Aで補う

加えて、DMG森精機はこの間も積極的なM&Aに注力。2010年3月にソニーの子会社、ソニーマニュファクチュアリングシステムズから、半導体製造装置や工作機械の重要部品であるスケールやセンサーなどの超精密計測機器の事業を買収(現マグネスケール)。

2015年4月には金属加工・切削のアマダマシンツール(現アマダマシナリー)から旋盤事業を譲り受けた。

2016年、SAKIコーポレーションをグループ会社化して、電子基板やパワー半導体などの製造工程で目視に代わり電子基板の画像を撮像して品質を自動判定する検査ソリューションを提供。2020年には銑鉄鋳物製造の旧渡部製鋼所(現DMG MORIキャステック)をグループ会社化して、工作機械の主要部品であるベッド、コラムなどの鋳造製品を内製化したことで安定供給と品質の向上を実現している。

2023年9月、久しぶりにM&Aに動いたDMG森精機のターゲットは、倉敷機械(新潟県長岡市)だった。親会社の倉敷紡績(クラボウ)が持つ全株式を譲り受け、2024年1月に完全子会社化した。

倉敷機械は1938年設立の日本重工業が前身。CAD/CAMシステムなどの工作機械を開発、販売しているほか、DMG森精機が製造していないCNC横中ぐりフライス盤を主力製品とし、国内シェアは約40%を誇っていた。

CNC横中ぐりフライス盤は、航空・宇宙、新エネルギー、重機械産業での需要が旺盛。

同社は欧州での販路拡大に活かしていくという。

さらに、2025年2月には、上場(東証スタンダード)子会社の太陽工機を、TOB(株式公開買い付け)で完全子会社化。スケールメリットでコスト効率の向上が見込めるほか、国内外でのプレゼンスを強化する。加えてその月末に、顧客企業の工場の自動化や生産効率化、省エネなどのソリューションを提供する「MX(マシニング・トランスフォーメーション)」戦略を推し進めるべく、工作機械販売後の保守・修理やオーバーホールに関する経験豊富なエンジニア人材を多数抱える宮脇機械プラントの子会社化も発表した。

再びM&Aに動き出したDMG森精機。その強みは、数々のM&Aで獲得してきた高い技術力とノウハウ、高性能・高効率な工作機械の豊富な製品ラインナップにあるが、それを支えてきたのは経営陣の判断の早さにあるのかもしれない。

DMG森精機の主なM&Aの推移 1948年 奈良県大和郡山市で、繊維機械の製造・販売開始 1958年 高速精密旋盤の製造・販売開始 1968年 数値制御装置付旋盤の製造・販売開始 1981年 立形マシニングセンタの製造・販売開始 1983年 横形マシニングセンタの製造・販売開始 2001年 太陽工機をグループ会社化 2002年 旧日立精機の事業を継承。森精機グループの企業として営業開始 2007年 DIXI machines(スイス)を子会社化 2009年 独ギルデマイスター(現DMG MORI AKTIENGESELLSCHAFT(DMG MORI AG))と資本業務提携を開始 2010年 ソニーマニュファクチュアリングシステムズの計測機器事業を取得、マグネスケールとして子会社化 2015年 アマダマシンツールの小型旋盤事業を取得 2016年 DMG MORI AGと完全経営統合、サキコーポレーションをグループ会社化 2020年 渡部製鋼所(現 DMG MORIキャステック)をグループ会社化 2024年 倉敷機械(現DMG MORI Precision Boring)を完全子会社化 2025年 連結子会社の太陽工機に公開買い付け(TOB)、完全子会社化、宮脇機械プラントの子会社化を発表

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