国内ドラッグストア業界が、かつてない再編の時代に突入している。2025年に売上首位のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが経営統合し、売上高約2兆円、店舗数5600店規模の巨大チェーンが誕生した。
ドラッグストア業界の主なM&A(2008年以降、東証適時開示に基づきM&A Onlineが作成)
年内 容狙 い 2008 ウエルシアホールディングスが寺島薬局を買収 関東の有力ドラッグストアを取得し、店舗網拡大 2012 ウエルシアホールディングスがドラッグフジイを買収 北海道での店舗網拡充 2013 ツルハホールディングスがB&Dドラッグストアを子会社化 東海エリアへ進出 2014 ウエルシアホールディングスがCFSコーポレーションを子会社化 ハックドラッグなどを傘下に収め規模拡大 2017 ツルハホールディングスが杏林堂薬局を子会社化 静岡の有力ドラッグストアを取得 2018 ウエルシアホールディングスが一本堂を子会社化 都市型小型ドラッグストアを取り込み 2021 マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合 業界トップ(当時)のマツキヨココカラ&カンパニーが誕生 2022 ウエルシアホールディングスがコクミンを子会社化 都市型ドラッグストアを取得 2025 ウエルシアホールディングスとツルハホールディングスが経営統合 売上約2兆円、国内最大ドラッグストア連合誕生 2026 クスリのアオキホールディングスがキューピットのスーパー事業取得 新潟の食品スーパー12店舗を取得 2026 クスリのアオキホールディングスがティックスなど5社を子会社化 食品スーパー「ピアレマート」「良食生活館」など20店舗を取得 2026 マツキヨココカラ&カンパニーがユニバーサルドラッグを子会社化 東京・埼玉のドラッグストア・調剤薬局20店舗を取得多角化を模索した2000年代後半
スギのこれまでのM&A戦略は一貫していたわけではない。リーマンショックが起こった2008年から現在までの歩みを振り返ると、事業多角化から本業回帰、そして調剤薬局強化へと戦略を変化させてきたことが分かる。
スギがM&Aを本格化させたのは2000年代後半だ。ドラッグストア業界の競合が激しくなり始め、同社も医療関連事業への多角化を模索した。臨床試験支援(CRO)事業への参入など、本業以外の分野にも手を広げたが、シナジーは限定的だった。
その後、CRO事業を手がける企業群をシミックに売却し、事業の「選択と集中」を進める。これが最初のM&A戦略の転換点となり、同社は本業のドラッグストア事業と調剤薬局に軸足を戻すことになる。
業界再編の波と、破れた統合構想
2010年代後半に入ると、ドラッグストア業界では再編の動きが活発化する。2019年には業界6位だった同社が、同7位だったココカラファインとの経営統合協議に乗り出す。実現すれば当時の業界トップだったツルハを追い抜き、一気に業界トップへ踊り出るはずだったが、最終的に合意には至らなかった。
ココカラには同5位だったマツモトキヨシホールディングスが手を伸ばして経営統合を果たし、現在のマツキヨココカラ&カンパニーが誕生した。ココカラがマツモトキヨシをパートナーに選んだ理由としては、PB(プライベートブランド)製品開発や店舗運営でマツキヨとのシナジーが大きいと判断したこと、より経営規模が大きい企業と経営統合した方が競争に強いと判断したようだ。
大手との経営統合で出遅れたスギは、単独で生き残る道を選ぶ。
2026年には、埼玉県を中心にドラッグストアと調剤薬局を展開するセキ薬品を子会社化する。スギは2025年に同社を持分法適用会社としていたが、株式を追加取得して議決権を51%に引き上げる。
高齢化の進展や在宅医療の拡大を背景に、調剤薬局と一体化した店舗モデルでライバルの大手ドラッグストアに対抗することにした。
スギHDの主なM&A(同)
公表日内 容狙 い 2008年11月20日 民事再生手続き中の富士バイオメディックスからCRO(医薬品開発業務受託機関)事業などを取得 新規参入(時間を買う) 2009年3月16日 テムリックの臨床CRO事業を取得 新規参入(時間を買う) 2011年5月23日 CRO関連子会社をシミックに譲渡 選択と集中(リストラ) 2019年6月1日 【中止】ココカラファインとの経営統合の協議を開始 事業拡大(規模を買う) 2023年12月26日 漢方相談薬局を全国16店舗運営する薬日本堂を取得 事業拡大(規模を買う) 2024年2月27日 関西を中心に調剤薬局を運営するI&Hを子会社化 事業拡大(規模を買う) 2026年4月9日 埼玉県を中心に調剤併設型ドラッグストアを展開するセキ薬品を取得 事業拡大(規模を買う)もちろん、ライバル企業も同様の動きを強めている。ウエルシアは関西や東北などの地域薬局を取り込み、調剤ネットワークを拡大。ツルハは杏林堂薬局などの調剤薬局を買収して店舗網を拡充している。マツキヨココカラも都市型ドラッグストアで調剤併設店舗を増やしている。
つまり、調剤薬局の買収は競合他社に置いていかれないための「守りのM&A」であり、自社の優位性を高めて他社との差別化を図る「攻めのM&A」ではない。では、スギはどのような戦略でドラッグストア上位4社と対抗していくのか?
スギ「大逆転劇」のシナリオは?
その答えの一つが、ディスカウントストア大手のトライアルホールディングスとの業務提携だ。同社の大型店舗にスギの調剤薬局やドラッグストアを出店する計画を進めている。トライアルの食品やPB商品をスギ店舗に導入する一方、スギは医薬品や健康サービスを提供することで、食品・日用品・医療を一体化した「ワンストップ消費型」の店舗モデルの確立を目指す。
この取り組みは、食品強化型ドラッグストアとして急成長するコスモス薬品やクスリのアオキホールディングスへの対抗策としての意味合いもある。ドラッグストアは利益率が高い医薬品や化粧品で稼ぎ、スーパーマーケットで販売されてきた食品や日用品の安値攻勢で集客するモデルで成長してきた。このスーパー機能の強化を目指した業務提携や経営統合が進む可能性もありそうだ。
もちろん、ウエルシア・ツルハ連合の親会社にはイオンという強力な小売ネットワークが存在する。ただ、スギが業務提携するトライアルやパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが全国展開する「ドン・キホーテ」の方が成長率が高い。
首都圏で出店を急いでいる24時間営業のスーパー「トライアルGO」では、医薬品の取扱店舗を増やしていく。スギが協業することで間接的ながら、同社の店舗網が広がる。長期的には両社の経営統合も視野に入るかもしれない。そうなればドラッグストア業界に留まらず、スーパー・小売業界を巻き込んだ「業界間大再編」の引き金を引くことになるだろう。
今後のM&A戦略はどうなる
今後のスギのM&A戦略はどうなるのか?まず、最も現実的な方向として挙げられるのが調剤薬局のさらなる買収拡大だ。医薬分業の進展や在宅医療の拡大を背景にドラッグストア各社は調剤機能を強化しており、スギも同機能と固定客を抱える地域薬局のM&Aを継続していくのは間違いない。
次に地域ドラッグストアの取り込みによるドミナント強化だ。
海外企業を買収するクロスボーダーM&Aも加速しそうだ。スギは中期経営計画でアジア市場の開拓を掲げ、スキンケアやヘアケアなどPB商品の輸出を拡大する方針を示している。
現在、ベトナムやマレーシア、タイなど10以上の国と地域で事業を展開しており、将来的には現地ドラッグストアや小売企業の買収に踏み出すだろう。人口減少による国内市場の縮小は不可避な上に、アジアでは日本製の美容関連商品への需要が高く、PBブランドを軸とした同地域での展開は持続的な成長につながる。
こうした戦略の背景には、国内ドラッグストア市場の成熟がある。経済産業省によると、日本のドラッグストア販売額は拡大を続けているものの、出店競争の激化や人件費の上昇により利益成長は鈍化し始めた。各社は規模拡大と業態融合によって成長を模索しており、業界再編の波は今後も続くとみられる。
現在の勢力図は、ウエルシアHDとツルハHDの巨大連合、マツキヨココカラ&カンパニー、そしてスギをはじめとする独立系ドラッグストアという三極構造に近づいている。調剤薬局の買収や地域チェーンの取り込み、アジア市場への進出、そして小売企業との連携――。
圧倒的な強者が存在するドラッグストア業界で、様々な選択肢を組み合わせながら、同社は独自のドラッグストアのビジネスモデルの確立を目指すことになりそうだ。その次の一手となるM&Aが、業界再編の新たな火種となるかもしれない。
文・写真:糸永正行編集委員
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