ソフトウエア開発やクラウドサービスを手がけるfonfun<2323>のM&Aの適時開示件数が、2026年1~9月に4件となり、2010年以降で最多だった2024年の年間4件に並んだ。
背景には、SES(システムエンジニアリングサービス)企業や、営業支援SaaS(インターネット経由でソフトウエアを提供するサービス)事業の取得を通じ、継続収益(契約の継続に伴い繰り返し得られる収益)を積み上げる成長戦略がある。
同社はAI(人工知能)の普及やソフトウエア開発手法の変化によって、優良なSES企業を割安な価格で取得できる機会が増えているとみており、現状を「極めて有利なM&Aの好機」と位置付ける。
2029年3月期に売上高100億円(2026年3月期は21億1100万円)の目標を掲げており、この目標達成に向け、M&Aによる継続収益の積み上げが加速しそうだ。
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ロールアップで継続収益を積み上げ
fonfunは、2027年3月期~2029年3月期の中期経営計画で、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の企業や事業を継続的に買収する「DXロールアップ」を掲げた。
ロールアップ型M&Aは、複数の企業や事業を買収し、グループ全体の規模拡大を目指す手法で、同社はSaaSの定額課金や、SES・システム運用保守などの継続収益を積み上げ、事業規模と収益基盤を広げる戦略を取る。
買収対象は、これまでの小規模案件から中規模案件まで広げ、買収資金として50億円の調達を想定する。
資金は金融機関からの借入を中心とし、既存株主の持ち分の希薄化を抑える方針だ。
こうした取り組みで、中期経営計画最終年度の2029年3月期に売上高100億円を目指す。
SES・SaaSなど4件の取得を発表
2026年に発表した4件は、SES、営業支援SaaS、カスタマー派遣(コールセンターなどの顧客対応業務にスタッフを派遣する事業)など、異なる事業の継続収益を取り込む動きとなっている。
2026年3月には、SES事業を手がけるYNP(東京都千代田区)を完全子会社化した。
同社は未経験者の育成や子育て世代の従業員の支援に取り組み、女性従業員の比率が90%以上という特徴を持つ。
fonfunは、既存のSES事業との親和性に加え、採用力や人材育成を含めた成長基盤の強化につながると判断した。
2026年4月には、ディグロス(東京都港区)から営業支援SaaS「セールスパフォーマー」事業を取得すると発表し、同年5月に取得した。
同事業は顧客企業の営業進捗を可視化するサービスで、既存の顧客基盤と安定した収益を取り込み、クラウドソリューション事業の継続収益を増やす。
2026年8月には、YNPがインサイドグロース(東京都千代田区)のカスタマー派遣事業と、これに付帯する人材紹介事業を取得すると発表した。
大手通信事業者などを顧客とする取引基盤を取り込むほか、YNPの既存事業と取得事業の間で人材をローテーション(相互に配置を変えること)し、顧客の需要に応じた稼働の改善を進める。
さらに2026年9月には、SES・派遣事業を手がけるICS(東京都中央区)の完全子会社化を発表した。
ICSは通信基地局向けのSES・派遣事業や設備工事を手がけ、大手通信キャリアや通信建設大手との取引基盤を持つ。
通信キャリア向けのシステム受託開発も手がけており、fonfunは既存事業との親和性を生かし、グループ全体の継続収益力の底上げにつなげる。
同社は4件の取得理由として、人材基盤の強化や採用力の向上などを挙げるとともに、顧客基盤の取り込みや継続収益の拡充を重視する姿勢を見せている。
AI普及が買収好機に
こうした買収を続けるうえで、同社はAIの普及によるSES市場の変化を事業取得の好機と捉えている。
AIがITエンジニアの開発業務を代替することへの懸念がある中、同社は買収価格の変化に目を向ける。
2026年6月の株主総会の質疑応答をまとめた書き起こし資料では、AIの普及やソフトウエア開発手法の変化を受け、売り手が期待する売却価格が下がっているとの認識を示した。
その結果、優良な事業を割安な価格でグループに取り込める機会が増えていると説明している。
こうした買収機会を生かし、現在の収益基盤をさらに広げる考えだ。
2026年3月期の売上高は21億1100万円(連結決算移行に伴い増減率は非記載)で、このうち、ソフトウエア開発や技術者派遣を手がけるDXソリューション事業が54.7%、SMS(ショートメッセージサービス)配信やクラウド電話システムなどを手がけるクラウドソリューション事業が45.3%を占めた。
2027年3月期は売上高35億9900万円(前年度比70.5%増)、営業利益4億7200万円(同95.1%増)を予想する。
2029年3月期の売上高100億円は、2027年3月期予想の約2.8倍に当たり、差額は64億100万円となる。
既存事業の成長と買収済み事業の収益改善に加え、新たな事業の取り込みが、この差を埋める役割を担う。
50億円の買収資金調達を想定し、取得対象の規模も広げる方針を踏まえると、M&Aが目標達成に向けた売上高の拡大に大きな役割を果たすことになりそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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