半導体や電子部品、情報機器などを取り扱うエレクトロニクス商社の加賀電子<8154>は、同業の新光商事<8141>をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化する。
加賀電子は2020年にエレクトロニクス商社のエクセル、2025年には同じくエレクトロニクス商社の協栄産業を子会社化しており、新光商事を取り込むことで、事業規模の拡大を進める。
背景にあるのは、半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス<6723>による販売代理店政策の見直しだ。
ルネサスによる代理店絞り込みを受け、商社側では取扱商材の拡充、顧客基盤の拡大、EMS(電子機器受託製造サービス)など周辺機能の強化が求められている。
加賀電子による新光商事の子会社化は、個別企業の成長投資にとどまらず、半導体・電子部品商社再編の流れを示す案件となる。
規模拡大が重要
加賀電子は、半導体・デバイスメーカーの再編統合が進む中、主要メーカーが販売代理店を集約する傾向にあるとみる。
ルネサスなどのメーカー側は直接販売の体制を整える一方、代理店経由の販売経費を抑える動きを強めており、半導体・電子部品商社では規模拡大の重要性が高まり、業界再編が加速すると分析する。
加賀電子は、半導体や電子部品、EMSビジネスなどからなる電子部品事業を主力に、パソコンやパソコン周辺機器を販売する情報機器事業、CG(コンピューターグラフィックス)映像制作などのソフトウエア事業などを展開する。
1万社を超える顧客基盤を持っており、2026年3月期の売上高は約6589億円だった。
一方の新光商事も、半導体や電子部品などからなる電子部品事業を主力に、顧客の要望に応じて電子部品の組み立てなどを手がけるアセンブリ事業などを展開する。
車載関連や産業機器分野の顧客に強みを持ち、2026年3月期の売上高は約991億円だった。
同社は半導体メーカーのルネサス製品を主力商材としていたが、2024年に代理店契約を終了した。
2023年3月期のルネサス製品の売上高は約947億円で、連結売上高の52.9%を占めていた。
加賀電子は新光商事の子会社化により、新光商事が持つ優良な仕入先商材を、加賀電子の営業力を生かして展開し、両社の収益力を高められるとしている。
また、加賀電子の1万社を超える顧客基盤に、新光商事が強みを持つ車載・産業分野の顧客を加えることで、販売チャネルを広げる。
さらにアセンブリ事業では、両社の顧客に新たなサービスや柔軟なソリューションを提案し、顧客からの信頼向上につなげるとしている。
アクティビストの関与も
加賀電子による新光商事のTOB期間は、2026年5月18日から2026年6月26日までで、買付代金は約460億円に達する見込み。
TOBが成立すれば、新光商事の東証プライム市場への上場は廃止となる。
新光商事はTOBに賛同を表明しているが、応募については株主に判断を委ねるとしている。
今回のTOBを巡っては、アクティビストの関与もあった。
新光商事株については、野村絢氏が2026年3月31日時点で9.69%所有しており、共同保有者のシティインデックスファーストなどを含めたCI11らの所有割合は16.59%だった。
加賀電子は、CI11らと応募合意しており、CI11らは保有する新光商事株全てをTOBに応募する。
また加賀電子は、野村絢氏の父親でシティインデックスファーストの大株主である村上世彰氏とも面談し、村上氏らが半導体・電子部品商社業界では、規模拡大による競争力強化を目的とした業界再編が業界の発展につながる可能性があるとの考えを持つことを確認した。
こうした村上氏の動きが新光商事に業界再編の必要性を改めて認識させる契機になったとしている。
1兆円企業に向けM&Aを活用
新光商事の子会社化は、加賀電子が進めてきたM&A戦略の延長線上にある。
同社は2020年に、エレクトロニクス商社のエクセルを子会社化した。この案件では、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが介在し、加賀電子がエクセルの全株式を取得した。
2025年には、同じくエレクトロニクス商社の協栄産業にTOBを実施し、子会社化した。協栄産業は半導体や電子デバイス、産業機器システムなどを取り扱っており、半導体・電子部品事業の強化と製品ラインアップの相互補完による販売拡大が見込める。
加賀電子は、2028年3月期を最終年とする3年間の中期経営計画で、2029年3月期の売上高1兆円を目標に掲げる。
2028年3月期は売上高8000億円以上、営業利益360億円以上を目指し、オーガニック成長(内部の経営資源を活用した成長)では、売上高7000億円以上、営業利益350億円以上を目標とする。
同社は、世界的なメガディストリビューター(売上高1兆~3兆円規模の海外大手商社)との競争に勝ち残るには、自律的な成長だけでなく、業界再編を主導する積極的なM&Aが不可欠との考えを持つ。
同社にとってM&Aは、メガディストリビューターと肩を並べる売上高1兆円企業の実現に向けた重要な成長手段となる。
リョーサン菱洋、RYODENも契約終了
ルネサスによる販売代理店政策の見直しは、ほかの半導体・電子部品商社にも及んでいる。
リョーサン菱洋ホールディングス<167A>は2026年4月2日に、子会社のリョーサン菱洋(2026年4月1日にリョーサンと菱洋エレクトロが合併)が、主要取引先であるルネサスから特約店契約終了の申し入れを受けたと発表した。
旧リョーサン時代から長年、ルネサスの特約店として各種半導体の販売を手がけており、2025年3月期におけるルネサス製品の売上高は841億8300万円と、連結売上高の23.4%を占めていた。
リョーサン菱洋ホールディングスは、2026年3月期以降の連結業績への影響について、判明次第開示するとしている。
RYODEN<8084>もルネサスとの取引関係が変化した。
同社はエレクトロニクスの主要仕入先だったルネサスとの販売特約店契約を2023年2月末で終了し、ルネサス製品の取扱いを2024年3月末で終了した。
RYODENが2024年1月に発表した資料によると、2024年3月期のルネサス製品の売上高は470億円で、連結売上高予想の17.9%を占める。
メーカー側の代理店政策が変われば、商社側は売上高の一部を失うだけでなく、顧客接点、技術サポート、在庫管理、提案営業の在り方も見直す必要が出てくる。
加賀電子による新光商事の子会社化は、メーカーの代理店政策の見直しという構造変化にM&Aで対応する動きといえる。
リョーサン菱洋やRYODENの事例を踏まえると、半導体・電子部品商社の再編は今後も続く可能性がある。
文:M&A Online記者 松本亮一
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