「三菱電機」宇宙領域で買収を具体化、1兆円のM&A投資枠を設定

三菱電機<6503>が宇宙領域のM&Aを具体化した。

同社は2026年7月1日に、衛星事業者向けにクラウドベースの地上局サービスを提供するインフォステラ(東京都新宿区)の全株式を取得し、完全子会社化した。

今後、三菱電機が保有する衛星や地上設備の開発・製造技術などと、インフォステラが保有するGSaaS(衛星と通信する地上局をクラウド経由で利用できるサービス)のプラットフォームなどを連携させ、世界各地で地上局ネットワークを広げ、品質と信頼性の高い宇宙通信インフラの整備を進める。

三菱電機が2026年5月に公表した新中期経営戦略では、全社で注力する3領域の一つに、防衛・宇宙を対象とする「ディフェンス&スペース」を掲げるとともに、魅力的なM&A・出資案件に備えた1兆円の追加投資枠を設定していた。

今回のインフォステラの子会社化は、この計画に沿ったM&Aといえる。

成長領域を創出へ

三菱電機は、2025年12月に公表した「統合報告書2025」で、3年間で1兆円のM&A投資枠を設定したと説明している。

2026年3月期中に8000億円規模の事業の終息・継続を判断する中で、縮小均衡に陥ることなく成長領域を創出していくためとしている。

一方、2026年5月に公表した2031年3月期を最終年とする5年間の新中期経営戦略では、設備投資、M&A・出資を含む成長投資として3兆円を投じる方針を掲げた。

このうち強化事業への集中投資に2兆円を充てるほか、魅力的なM&A・出資案件に備えて1兆円の追加投資枠を設定した。

また、同戦略では、全社で注力する3領域として、スマートエナジー、オートメーション、ディフェンス&スペースを挙げた。

主なターゲット市場は、スマートエナジーがビル、データセンター、工場など、オートメーションが工場、ビルなど、ディフェンス&スペースが防衛・宇宙としている。

防衛・宇宙分野では、衛星コンステレーション(高度約200キロ~2000キロメートルの地球の低軌道に多数の小型衛星を配置し、連携して機能するシステム)などのサービス提供型ビジネスの創出を目指す計画だ。

さらに、高度なセンサーやAI(人工知能)、ロボティクス技術を活用した無人機などの新事業創出、静止通信衛星などでの海外市場参入を掲げている。

宇宙で新たなビジネスモデルを展開

今回のインフォステラの子会社化は、こうした計画の中で実現した。

インフォステラは、周回衛星向けの地上局プラットフォーム「StellarStationTM」を展開している。

世界各地の地上局をクラウド上でつなぎ、衛星事業者が必要な通信機会を一元的に利用できるGSaaSを提供している。

このGSaaSを利用すれば、衛星事業者は自社で衛星通信用の地上局を整備しなくても、世界各地の地上局ネットワークを使えるため、地上局の整備や運用にかかる負担を大きく減らせる。

一方、三菱電機は、国内外の衛星や地上設備のプロジェクトに参画し、衛星と地上設備の両方でノウハウを蓄積してきた。

地上設備では、衛星との通信や追跡・管制を担う地上局、天文観測用の光学・電波望遠鏡などを開発・製造しており、高度なアンテナ技術や衛星管制技術を持つ。

両社は、こうした宇宙通信インフラを基盤に新たなビジネスモデルを展開し、宇宙利用の拡大を後押しする。

静止通信衛星で海外市場への参入も

近年、小型衛星を多数連携させて運用する「小型衛星コンステレーション」を使い、通信や観測などさまざまなサービスが広がっている。

こうしたサービスを安定して運用するには、衛星と通信する地上局ネットワークが欠かせない。

このため、民間企業が地上局ネットワークを整備し、衛星事業者にサービスとして提供するニーズが高まっている。

こうした需要拡大などを踏まえ、三菱電機は防衛・宇宙システムの売上高を2026年3月期の4214億円から、2031年3月期には8000億円に拡大する計画だ。

「三菱電機」宇宙領域で買収を具体化、1兆円のM&A投資枠を設定
三菱電機の売上高構成比

M&Aに関しては、2025年以降に適時開示された三菱電機関連案件は7件で、このうち4件が三菱電機による譲渡案件だった。

今回のインフォステラの買収は、同社が重点領域に掲げる防衛・宇宙分野で、宇宙通信インフラのサービス化に踏み出す動きと位置付けられる。

今後は、新中期経営戦略で掲げた高度なセンサーやAI(人工知能)、ロボティクス技術を活用した無人機などの新事業や、静止通信衛星などでの海外市場参入でも、M&Aの余地がありそうだ。

「三菱電機」宇宙領域で買収を具体化、1兆円のM&A投資枠を設定
2025年以降の三菱電機関連の適時開示M&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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