
調剤薬局中堅のファーマライズホールディングス<2796>は、M&A戦略を変更する。これまで積極的なM&Aで事業を拡大してきたが、M&Aに伴う費用の増加などにより、大幅な営業減益となったことから、PMI(M&A後の統合作業)に注力し、足場を固める。
2件のM&Aを実施
ファーマライズホールディングスは2024年に、東名阪地域で調剤薬局38店舗を運営するGOOD AID(名古屋市)を子会社化したほか、経営破綻した寛一商店(京都市)がグループで保有する調剤薬局54店舗を取得した。
これによって2025年5月末の調剤薬局店舗数は新規出店を含め401店舗となり、2件のM&A前からは、一気に100店舗ほどが増加。
この結果2025年5月期の売上高は635億800万円(前年度比16.6%増)となり、2ケタの大幅な増収を達成した。
ただ営業利益は、300店舗以上のチェーングループを対象とする調剤報酬引き下げのルール導入や仕入環境の変動による利益水準の低下、さらにM&Aの実施に伴う一時的な支払手数料の増加などがあり、2億9300万円(同67.9%減)と70%近い営業減益に陥った。
このため、新たにグループに加わったGOOD AIDと寛一商店の店舗でPMIを遂行し、店舗スタッフ一人一人が地域の健康、医療窓口となるなどの「ファーマライズらしさを全店舗で早期に実現する」計画で、合わせて薬剤師の育成やバックオフィスの効率化などにも取り組み、収益力を高める。
同社では今後、M&Aの戦略立案から実行までのプロセスを整理、再構築するとともに、これまでのPMIの経験を生かして対応力をさらに高度化させるとしている。

競争激化などの課題に直面
調剤薬局業界では、後継者不足による事業承継や、店舗数の増加による競争激化、さらには大手による規模拡大への取り組みなどから、M&Aの増加が見込まれている。
厚生労働省によると、2024年3月末時点の調剤薬局数は6万2828で、前年度に比べ0.7%増加した。
また矢野経済研究所が2025年7月に発表した国内調剤薬局市場調査では、今後、調剤薬局業界で「ドラッグストア経営企業の存在感が増していく見通し」という。
こうした状況のもと、ファーマライズホールディングスでは、調剤薬局業界は「薬剤師不足や後継者問題、大手チェーンや異業種の参入による競争激化などさまざまな課題に直面している」と分析する。
M&Aに関しては、この10年間に適時開示された調剤薬局・ドラッグストア業界のM&A件数を見ると、コロナ禍前の2019年が最も多い32件となり、その後は2021年から3年間は10件台で推移していたが、2024年は30件に拡大。2025年も8月5日時点では10件に達している。
PMI後は再成長に向けた取り組みを推進
ファーマライズホールディングスは総売上高の80%を超える調剤薬局事業のほかに、ドラッグストアやコンビニエンスストアを運営する「物販事業」や、カルテやレントゲンフィルムなどを保管、管理する「医学資料保管・管理事業」、調剤薬局やクリニック、歯科医院などの複数の医療機関を一カ所に集めた施設を運営する「医療モール経営事業」、人材派遣やデイサービス、訪問看護、有料老人ホームなどを運営する「その他事業」と多角化しているのが特徴。
地域のニーズに応えて店舗を展開してきたことで、調剤薬局だけにとどまらず、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどに薬局を併設した店舗などを多く展開しているのも強みの一つだ。
同社では「PMIを完遂した後は、さらなる成長に向けた取り組みに着手、推進したい」としており、売上高800億円以上を目指す計画で、PMIの後は再びM&Aの出番が回ってくる可能性は高そうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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