「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多

タクシー業界でドライバー不足が深刻化している。

帝国データバンクによると、2025年度のタクシー事業者の休廃業・解散が過去最多を更新した。

ドライバー不足に加え、燃料費の高騰が利益を圧迫しており、事業継続を断念した事業者が相次いだのが要因という。

同社は今後について「中小零細の廃業がさらに増える可能性がある」としており、タクシー大手による事業承継型M&Aが広がる余地がある。

業界再編が進みやすい環境が整いつつある中、タクシー大手各社の動きを探ってみる。

中小零細事業者の廃業が増加

帝国データバンクは2026年4月4日に「タクシー業」の倒産・休廃業解散動向(2025年度)を発表した。

それによると、2025年度のタクシー事業者の休廃業・解散は66件となり、前年度の40件から1.6倍に増え、過去最多を更新した。

倒産36件を含めた市場退出事業者は102件に達し、2000年度以降で初めて100件を超えた。

「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多
「タクシー業」の倒産・休廃業解散動向(2025年度)
出典:帝国データバンク【「タクシー業」の倒産・休廃業解散動向(2025年度)】より

背景には、ドライバー不足に加え、燃料費の高騰がある。

とくにドライバーについては、多くの事業者で高齢化によるドライバーの退職が多く発生する一方、新たなドライバーの採用ができない事態に直面している。

運賃改定による増収効果をはじめ、訪日客増加で需要は拡大しているものの、ドライバー不足で稼働できない車両が多く、需要を取り込めない事業者が目立つという。

同社は、効率的な稼働が可能な大手と中小の格差が拡大する形で「中小零細のタクシー業で廃業が増加する可能性がある」とする。

幅広い移動需要に対応できる人材を

一方、大手の動向はどうか。

最大手の日本交通(東京都千代田区)は、2026年4月に134人の新卒社員が入社し、このうちタクシー乗務員は127人だった(同社の従業員数は2025年5月時点で1万4681人)。

タクシーの供給力不足が業界課題となる中、タクシー会社の管理の下で一般ドライバーが乗客を運ぶ日本型ライドシェアや相乗りサービスなど、モビリティ業務の領域は広がっている。

こうした中、同社は新卒乗務員の採用や人材育成を通じ、観光や高齢者の乗降補助、子どもの送迎など、幅広い移動需要に対応できる人材の確保を進めるとしている。

M&Aについては、近年は関西で既存タクシー事業者の株式取得や営業譲受などを実施している。

2024年に関西中央グループ5社(高槻交通、茨木高槻交通、ユタカ中央交通、関西中央第一、関西中央旅客守口)の事業認可を譲り受け、335台の運営を引き継いだ。

2025年には大阪バス傘下の大バス太平タクシーと、大バス米運タクシーの全発行済株式を取得し、日本交通グループ関西として運営を引き継いだ。

「地域の個別移動に対する社会的要請に応えるため、株式取得、運営引き継ぎを行うことになった」と説明している。

いずれも既存の営業基盤や車両を引き継ぐ案件であり、事業承継型M&Aとして位置付けられる。

「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多
日本交通と子会社の日本交通グループ関西が2020年以降に発表し

事業拡大に向けM&A再開へ

北九州が地盤の第一交通産業<9035>は、2026年3月期第3四半期の決算説明資料で、タクシー事業について、運賃改定と乗務員採用の進展により需要を着実に取り込み、20%を超える増収となったとしている。

乗務員採用の進展が業績の押し上げ要因になったことが分かる。

M&Aについては積極的で、2010年以降に適時開示した案件は37件に上る。多くがタクシー会社の子会社化で、これらを通じて事業を拡大してきた。

2022年に苫小牧観光ハイヤーの全発行済株式を取得し子会社化して以降は、適時開示ベースではM&A案件は確認できない。

一方、2025年6月に提出した有価証券報告書では「今後のタクシー事業における事業拡大・エリア拡大については、必要に応じて需要の多い大都市圏・地方主要都市圏を中心にM&Aを実施する」との方針を示しており、M&Aを再開する可能性がある。

「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多
2017年以降に適時開示された第一交通産業のM&A

需要は緩やかに拡大

都内大手の一角である大和自動車交通<9082>は、慢性的なドライバー不足を業界課題として認識する。

そのうえで、中期経営計画では、乗務員不足への対応としてドライバーの定着化(離職防止)や、教育体制の強化などに取り組む計画だ。

これまでに適時開示したM&Aは3件で、直近では2024年に東京・多摩地区における営業強化を狙いに、タクシー会社の十全交通の全株式を取得し子会社化した。

残る2件は、ガソリンスタンドを運営する宮園砿油と、ゴルフ場などの施設メンテナンスを手がけるトータルメンテナンスジャパンの子会社化だった。

同社によると、ハイヤー・タクシー業界は「需要はコロナ禍前の水準まで回復し、今後も当面は訪日外国人観光客の増加などを背景に緩やかに需要が拡大する見通し」としている。

「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多
第一交通産業が2020年以降に適時開示したM&A

こうした状況の中、異業種からの参入も出ている。

紡績やテキスタイル事業などを手がける北紡<3409>は2026年1月、ハイヤー事業やタクシー事業を展開するVリムジンを子会社化し、同事業に参入した。

インバウンド(訪日観光客)需要の回復や法人向け移動需要の増加を背景に、Vリムジンが手がける空港送迎、法人向け送迎、観光送迎などのサービスを取り込む。

需要が拡大する中、ドライバー不足で経営が悪化したタクシー会社を取り込む動きは、異業種企業も巻き込んで広がる可能性がある。

文:M&A Online記者 松本亮一

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