『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はいかにして生まれたのか。製作者が語る
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

ティモシー・シャラメが主演を務める映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』がいよいよ明日8日(金)から公開になる。本作のプロデュースを手がけたのは、『ハリー・ポッター』シリーズや『バービー』なども担当したデイヴィッド・ヘイマン。

本作は彼の“ある会話”からプロジェクトがスタートしたという。彼と『パンディントン』でも共に製作を務めたアレクサンドラ・ダビーシャーに話を聞いた。



本作は、ロアルド・ダールの児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場するウィリー・ウォンカの若き日を描くオリジナル作品。自分のチョコレート店を出す夢を追う青年ウォンカは、ある街にたどり着くが、そこは“夢見ることを禁じられた町”だった。彼は亡き母と約束した夢を叶えるべく、仲間と共に冒険を繰り広げる。



本作の製作を手がけたヘイマンは英国出身の映画プロデューサー。

『ハリー・ポッター』だけでなく、『ゼロ・グラビティ』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『マリッジ・ストーリー』など幅広いジャンルの作品を手がけている。



「ある時、ワーナー・ブラザースのトップの方とお会いする機会があり、どんな本が好きなのか? という話題になったんです」とヘイマンは振り返る。



「私はロアルド・ダールさんの本が大好きなんです。誰かに読み聞かせてもらうのではなく、自分で読んだ最初の本がダールさんの本でした。ジーン・ワイルダーが主演した映画『夢のチョコレート工場』はビデオやDVDはワーナーから出ていましたし、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』もワーナーの映画でした。



そこで“ウィリー・ウォンカというキャラクターでなにか新しい映画をやりたい”という話になり、なぜウィリー・ウォンカという青年がみんなの知っているチョコレート工場の主“ウォンカ”になったのかを語るストーリーにしたらいいんじゃないか、ということになりました」



『チョコレート工場の秘密』では貧しい少年チャーリーと、摩訶不思議なチョコレート工場を営むウォンカの物語が描かれるが、本作では映画のために創作された新たなドラマが描かれる。

では、それを描くのは誰か? ヘイマンの頭にまず浮かんだのは『パディントン』でタッグを組んだポール・キング監督だ。



「ポールは『パディントン』で原作の精神をうまく捉えていました。子どもだけじゃなく、大人が観ても面白い映画をつくることができる人でもあります。私はパディントンのことを愛していましたが、最初に会った時からポールは私よりもパディントンのことをよく知っている人だと思ったのです。そこでポールに会って、この企画について話したところ、彼もロアルド・ダールの大ファンだということがわかりました。そして、今回もポールは私よりもずっとずっと『チョコレート工場の秘密』とウィリー・ウォンカのことを理解していました。

もし、ウォンカの誕生の物語を新たに語るのであれば、ポール・キングが最も適任だと思いました」



『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はいかにして生まれたのか。製作者が語る

こうして『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のプロジェクトが動き出し、アレクサンドラ・ダビーシャーが仲間に加わった。



「私が参加したのはプロジェクトの最初期です。まだ草稿しかない段階でしたが、デイヴィッドとポールと再び仕事ができるチャンスだと聞いて本当にワクワクしました。なので答えは“絶対にイエス!”でしたね(笑)」



キング監督が、『パディントン2』でもタッグを組んだ脚本家で俳優のサイモン・ファーナビー(本作にも動物園の守衛役で登場している)と共に執筆した脚本は、青年ウォンカの冒険が歌、踊り、笑い、ドキドキの展開と共に描かれる壮大なものだった。最初から最後までワクワクできる映画になる脚本だが、実際に撮影するには規模も大きく、ハードルも高い。しかし、ダービシャーは「私たち製作陣は、監督の要望には可能な限り“イエス”と言いたいんです」と笑顔を見せる。



「彼の頭の中のビジョンがそのままスクリーンに描かれるようにしたいのです。とは言え、この映画はとにかく大変な要素が満載なんですよ! 巨大なセット、大規模な撮影、衣装、登場する場面の多さ、さらには動物も子どもたちまで出てきます(笑)。その上、歌も踊りもある。どんどん複雑さが増していきました。でも、ポールは本当に楽しい人で、誰よりも仕事熱心なんです」



「我々プロデューサーは観客から見えてはいけない存在で、監督を徹底的にサポートするのが仕事だと思っています。私は監督に対して“こうしてほしい”とは言いません。

それを言うのであれば、自分で監督をやった方がいい。そして私は監督には向いていない(笑)。確かに映画づくりは大変なことが多い。でも、私は映画づくりは大変でなければいけないと思いますし、どんどんアイデアが出てきて、もっとよくしたいと思う監督と仕事をするのが好きなんです」(ヘイマン)



「本作で好きなところは“コミュニティ”を描いていること」

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はいかにして生まれたのか。製作者が語る

多くの映画では主人公のスポットライトがあたる。でも、どんな物語にも主人公と共に行動し、主人公を支える仲間がいる。本作にもウォンカと行動を共にする少女ヌードルや、なぜか彼からチョコを盗む小さな紳士ウンパルンパなど、彼をサポートする仲間たちがたくさん登場し、彼らのドラマが魅力的に描かれる。



「確かに、これはプロデューサーの物語でもありますね!」と笑うヘイマンは「私が本作ですごく好きなところは“コミュニティ”を描いていることです」と力強く語る。



「この映画でウォンカは、チョコレートを自分だけのものにするのではなくて、みんなと共有しようとします。それは“映画”というものが持っている贈り物のような要素でもあります。映画はスクリーンで上映され、劇場でみんなと分かち合うわけですから。『ハリー・ポッター』も『パンディントン』もそうですが、私が製作する映画の多くが同じモチーフを扱っています。ひとりでいるよりも、まわりに仲間がいることで強くなれる、そんな物語を描いています。



誰もが社会の中で孤独を感じたり、社会から外れてしまっているんじゃないかと感じているのではないでしょうか。ウォンカもそうですし、ハリー・ポッターもそう感じていたと思います。もちろん、孤独感が永遠に消えることはないと思いますが、彼らは旅に出て、人に出会い、友情が生まれ、周囲からのサポートを受ける。そうしてコミュニティが出来上がっていくのです」



本作はとても楽しく、笑えて、ワクワクする物語がつまった作品だ。シャラメの演じるウォンカに魅了されるだろう。しかし、本作はウォンカだけの物語ではない。彼と、彼の周囲にいる人たちのコミュニティの物語だ。人とつながる。仲間になる。共に行動する。困っていたらサポートする。その展開にハートを掴まれるはずだ。



ヘイマンはこう宣言する。「私と監督のポールがこの映画に求めていたものは、温かみのある心と寛大さの精神です」



『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はいかにして生まれたのか。製作者が語る

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
12月8日(金) 公開
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