「手に汗握りながら、ハラハラドキドキ楽しんで」 舞台『中村仲蔵』出演の髙嶋政宏にインタビュー
髙嶋政宏

歌舞伎が黄金期に向かう江戸時代中期、彗星の如く現れた歌舞伎役者、初代中村仲蔵。梨園の血縁ではない仲蔵は、異例の出世を遂げ「名人仲蔵」と言われる大スターになる。

その波乱万丈の人生は、NHKで2021年にドラマ化されたが、今回は新たな視点でオリジナルの舞台戯曲として書き下ろされ、舞台『中村仲蔵-歌舞伎王国 下剋上異聞-』として上演される。

ドラマ版では二代目中村傳九郎を演じ、舞台版では四代目市川團十郎を演じることになった髙嶋政宏に作品への意気込みを聞いた。



「手に汗握りながら、ハラハラドキドキ楽しんで」 舞台『中村仲蔵』出演の髙嶋政宏にインタビュー

『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』ビジュアル

ーードラマ版とはまた違うお役での出演。オファーをもらったときのお気持ちは?



愛着がある作品だったので、ドラマ版が終わったときは悲しかったですね。ああ、終わっちゃったと思っていたんです。そこで、この舞台化の話を聞いて! 飛び上がって喜びました。

実は、オファーがあったのはドラマ版撮影からだいぶ経った後だったんです。しかも今回はドラマとは違う團十郎役。驚きましたけど、また『中村仲蔵』の作品の世界に入れる喜びや感動が大きくて、すぐに快諾しました。

僕はもともと歌舞伎が好きで、ドラマ版の撮影が始まる前から歌舞伎はよく観に行っていたんです。ある程度知識はあると思っていましたけど、(ドラマ版の脚本と演出を担当し、舞台版の脚本を務める)源(孝志)さんの作品は情報がすごいんです。僕ら役者が演じる上で必要な知識が全て詰まっている。
台本をベースに、というのはもちろんなんですけど、僕はいろいろその時代の時代背景などを調べるのも好き。源さんに何を読んだら勉強になるか、おすすめの本を2冊ほど聞いたんです。ひとつは江戸歌舞伎の絵本で絵がたくさん載っているもので、もうひとつは江戸の歌舞伎役者についての研究書。

僕が今回演じる四代目團十郎は舞台以外でどんな人だったのか。実在の四代目團十郎さんに会ったことがある人は今いないわけなので、伝え聞いたものからしか想像するしかないのですが、團十郎さんのことをもっと知りたい、深めたいと思っているんです。



――早くも熱心に役作りされているのですね。



見どころはなんと言っても、ところどころに散りばめられた歌舞伎のシーン。子どもの頃から歌舞伎の世界に身を置いている人間という説得力をどう出すか。主役の藤原竜也さんもすでに稽古前稽古をしているそうですが、僕も本格的な稽古の前にできる限りの稽古前稽古をしておきたいと思っています。自分が今までデビューしてから培ってきた着物の着こなしや所作を信じて、なるべくそちらに気が行かずに芝居に集中できるようにしたいですね。

……そして正直、役以外のことも気になります(笑)。まだ舞台美術がどうなるか分かりませんが、團十郎がいる部屋は歌舞伎役者の中でも一番の重鎮がいる部屋だから、きっと舞台の上の方にある可能性が高いでしょう? そうすると階段の昇り降りが激しいでしょう? ここで上手から下手に移動するとなると、裏で渋滞が起きるかな? どこで水分補給やトイレに行けるかな? 劇場の構造を考えると、ここに人が溜まらないといいな? とね、考えることは山ほどあります(笑)。

それほど嵌まり込む作品なのだと思います。



お客さんを飽きさせない工夫が満載

――改めてドラマ版でも舞台版でも、なぜこの題材に惹きつけられると思いますか?



まずは登場人物たちが実在した人物であるというところですかね。「事実は小説より奇なり」という言葉がありますけど、源さんによれば、脚本に書かれていることよりももっと生々しい現実があったらしいんですね。役者という同業者としても「ええ!こんなことがあったのか!」という興味はつきない題材です。そしてその「事実」をエンターテイメントに仕上げているのがいい。お客さんを飽きさせない工夫が満載の作品になると思います。



ーードラマの撮影時のエピソードも伺いたいです。ドラマ版では中村仲蔵は六代目中村勘九郎さんが演じられましたね。歌舞伎役者の勘九郎さんから学ぶことはありましたか?



勘九郎さんは人のやっていることに口を出さないんです。いろいろと思うことや知っていることもあるでしょうに、自分がやるべきことだけやる。人のやることを見て、眉間にしわを寄せて……ということは全くなかったですね。ただ、意表を突いた芝居をすると「あ、今の僕、好き」と呟いてくれる(笑)。

それがちょっと嬉しくてね(笑)



――今回の舞台版では藤原竜也さんが中村仲蔵を演じられます。



はい。吉田鋼太郎さんとお酒を飲む機会があって、そのときにお会いしたのが最初の出会いですが、藤原竜也さんは日本が誇る天才演劇人ですからね。早く一緒に稽古がしたいです。



――演出の蓬莱竜太さんのイメージや期待することを教えてください。



蓬莱さんとは脚本家としてはお会いしてるんですけど演出を受けるのは初めてなので、源さんの書かれた台詞をどう血の通ったものにしていくのか楽しみです。蓬莱さんの演出でテンポの良い現代劇のように仕上がっていくのかなと思っていますが、早く稽古がしたいですね。



ーー観客の皆さまにメッセージをお願いします!



歌舞伎を題材にした舞台というと、歌舞伎をよく観ているお客様は別として、敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、皆さんを飽きさせない場面が満載で、スピード感あふれるエンターテイメント作品になると思います。どうぞ江戸時代の下剋上の世界、手に汗握りながら、ハラハラドキドキ楽しんでほしいです。職業は違うんですけど、江戸版の『白い巨塔』のように楽しんでもらえればいいなと個人的には思っています。



取材・文:五月女菜穂



舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』プロモーション映像(ナレーション:神田伯山)



<公演情報>
Sky presents 舞台『中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~』



脚本:源孝志
演出:蓬莱竜太

出演:
中村仲蔵:藤原竜也
初代市川八百蔵/酒井新左衛門:市原隼人
中村伝蔵:浅香航大
志賀山お俊:尾上紫
中村伝九郎:廣田高志
七代目中村勘三郎/中村任三郎:植本純米
瀬川錦次:古河耕史
五代目市川團十郎ほか:深澤
蕎麦屋の万蔵ほか:斉藤莉生
金井三笑:今井朋彦
コン太夫:池田成志
四代目市川團十郎:髙嶋政宏
ほか

2024年2月6日(火)~2月25日(日)
会場:東京建物Brillia HALL

【ツアー公演詳細】
■広島公演
期間:2024年2月29日(木)~3月1日(金)
会場:広島文化学園HBGホール

■名古屋公演
期間:2024年3月7日(木)~3月10日(日)
会場:御園座

■宮城公演
期間:2024年3月15日(金)~17日(日)
会場:東京エレクトロンホール宮城

■福岡公演
期間:2024年3月22日(金)~24日(日)
会場:キャナルシティ劇場

■大阪公演
期間:2024年3月27日(水)~3月31日(日)
会場:SkyシアターMBS



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/nakamuranakazo2024/



公式サイト:
https://horipro-stage.jp/stage/nakamuranakazo2024/