19世紀末のベルリンで活動を始めたスイス人画家カール・ヴァルザー。本国では近年再評価が進むものの、日本ではまだ知られていないこの画家の日本初となる個展が、4月18日(土)から6月21日(日)まで、東京駅構内にある東京ステーションギャラリーで開催される。
1877年にベルン近郊のビールに生まれ、美術工芸学校で学んだ後に20代でベルリンに転居したヴァルザーは、革新的な表現を目指したベルリン分離派に参加。本の装幀や挿絵、舞台美術などの仕事で生計をたてる一方で、寓意や含意を感じさせる象徴主義的な絵画作品を制作する。精妙な色彩を用いたその初期の作品群は、世紀末の残照とも言うべき謎めいた神秘性をたたえたものだった。その後は、ドイツとスイスで、挿絵、舞台美術、個人宅や公共施設のための装飾壁画を手がけ、1943年にスイスで亡くなっている。
《隠者》1907年 チューリヒ美術館
その生涯で特に注目したいのは、彼が日本を訪れて制作していること。1908(明治41)年、日本紀行記の執筆依頼を受けたドイツの小説家ベルンハルト・ケラーマンとともに挿絵画家として来日したヴァルザーは、約半年にわたって各地を巡り、日本の風景や風俗をとらえた作品を多数描いた。なかでも、長逗留をした京都府の宮津では、芸妓や舞妓、歌舞伎役者や市井の人々の姿を生き生きとした筆致で描きとめている。主に水彩で描かれた作品群は、祭りや風景をとらえた重厚な油彩画とともに、120年前の日本の様子を甦らせる貴重な資料であると同時に、美術作品としても卓越したもの。これまでほとんど公開されてこなかった水彩画の数々が、驚くほど鮮やかな色彩をとどめているのも見どころとなっている。
歌舞伎の女形(《歌舞伎の一場面》のための習作)》1908年 ベルン美術館(友の会) (C)Kunstmuseum Bern
同展では、油彩画のほか、詩人として高名な弟ローベルトのために描いた挿絵をはじめ、線描が美しい挿絵用の版画作品、舞台装置や衣装のデザインなど、多彩な作品が並ぶ。その約150点の全点が、日本初公開作品となる。会場の東京ステーションギャラリーは、作品の価値や魅力は作家の知名度とは関係ないという信念のもと、これまでも美術史の中で見過ごされてきたアーティストの展覧会を数多く開催してきた。
《人形の乳母車と少女》1905年以前 新ビール美術館
<開催情報>
『スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー 世紀末の昏き残照』
会期:2026年4月18日(土)~2026年6月21日(日)
会場:東京ステーションギャラリー
時間:10:00~18:00(※金曜は~20:00)、入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜(※ただし5月4日(月)、6月15日(月)は開館)
料金:一般1,800円、高校・大学生1,300円
公式サイト:
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

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