竹野内豊と玉木宏が初共演! 『ゴジラ-1.0』にも登場した駆逐艦『雪風 YUKIKAZE』を描く、太平洋戦争秘話【おとなの映画ガイド】
『雪風 YUKIKAZE』 (C)2025 Yukikaze Partners.

終戦80年になる今年の8月15日(金)に、『雪風 YUKIKAZE』という映画が、全国公開される。「雪風」は海軍の駆逐艦。

数々の激戦を生き残っただけでなく、沈没した別の艦の仲間を、懸命に救って帰還したことから、“幸運艦”とよばれていた。本作は、その雪風の史実を、竹野内豊、玉木宏、奥平大兼らが演じる乗組員たちの人間ドラマとともに描く。こんなこともあったのかと驚かされる「戦争秘話」だ。



『雪風 YUKIKAZE』



どこかできいたことのある名前だ……と思ったが、『ゴジラ-1.0』で主人公たちがゴジラに立ち向かう「海神(わだつみ)作戦」の中心となる艦が、「雪風」だった。



なぜ、あそこに出てきたのか、この映画をみると、なるほどと納得できる。雪風は、そんな伝説的な存在の駆逐艦なのである。



竹野内豊と玉木宏が初共演! 『ゴジラ-1.0』にも登場した駆逐艦『雪風 YUKIKAZE』を描く、太平洋戦争秘話【おとなの映画ガイド】

戦艦大和のような大きな大砲を持った“戦艦”、飛行機を搭載する“航空母艦”、水中を航行する“潜水艦”くらいはわかるが、“駆逐艦”となるとどんな特徴や役割があるのか、知らない人がほとんどだと思う。



「一言でいえば、“海の何でも屋”だ。戦艦や空母などと比べ、小型で軽量、派手さもない。しかし、その分、乗る人の人間臭さが滲み出てくる」、そんな艦なのだと軍事研究家の関口高史氏はこの映画の資料に書いている。



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高速で小回りが効き、艦隊の先陣を切って魚雷で戦い、戦艦を護衛し、さらに兵員や物資の輸送、沈没艦船の乗員救助……。確かに、本作で描かれた「雪風」をみていると、軍艦ではあるのだけれど、人間に例えると、まじめに、てきぱきと働き、友人思いで、自己犠牲をいとわない、なんとも好人物なのである。



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この映画は、1943年から「雪風」を率い、名艦長と呼ばれた寺澤少佐(竹野内豊)を中心に、現場のたたき上げの早瀬先任伍長(玉木宏)、若き水雷員・井上(奥平大兼)などの乗組員たちがいかに戦い、この時代をどう生きたかを活写していく。



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もちろん、戦争映画なのだが、ひと味ちがう。



例えば海戦シーン。敵艦から発射され、高速でまっすぐ向かってくる魚雷は、防ぐのが至難の業。それを、寺内艦長が絶妙の舵さばきで、回避していく。敵艦を沈没させるのではなく、魚雷を“よける”のが見どころというのは、「雪風」ならではのものだ。



竹野内豊と玉木宏が初共演! 『ゴジラ-1.0』にも登場した駆逐艦『雪風 YUKIKAZE』を描く、太平洋戦争秘話【おとなの映画ガイド】

そして、劣勢の戦いの中で、つぎつぎと沈没していく友軍の艦船の兵隊を救助するシーンが、何よりも丁寧に描かれている。



早瀬伍長の「ひとり残らず引き上げろ!」というかけ声のもと、縄ばしごが下ろされ、海に投げ出された瀕死の海兵を、井上ら乗組員が懸命にひっぱりあげていく。実は、井上自身も、ミッドウェー海戦のときにそんなふうに雪風に救助され、生き延びたひとりなのである。



竹野内豊と玉木宏が初共演! 『ゴジラ-1.0』にも登場した駆逐艦『雪風 YUKIKAZE』を描く、太平洋戦争秘話【おとなの映画ガイド】

いよいよ戦局は悪化し、ついに、「戦艦大和」を旗艦とする連合艦隊は、護衛の飛行機も用意せず、片道の燃料だけで、いわゆる“海上特攻”の戦いに出て行くことになる。その艦隊のなかに「雪風」も、……という展開。



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大和の艦長役で、中井貴一が登場する。

中井といえば、1981年8月に公開された『連合艦隊』がデビュー作。たしか、若い兵士役だった。巡りめぐって、本作では悲劇の艦長を演じるわけだが、年輪を感じずにはいられない名演だ。



ほかに、寺澤艦長の元上司、軍令部の作戦課長役に石丸幹二、妻役に田中麗奈、早瀬先任伍長の妹役に今注目の當真あみが扮している。



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史実を基に、オリジナル脚本を書いたのは、長谷川康夫と飯田健三郎。監督は、『聯合艦隊司令長官 山本五十六』や『空母いぶき』で助監督を経験した山田敏久。



戦争で多くの人を救い、生き抜いた雪風は、復員輸送船としての航海を続け、外地に取り残された人々、約13,000名を日本に還した。その後、中華民国(現在の台湾)に賠償艦として引き渡され、 沿岸警備で活躍、1969年の台風で船底が破損し、1971年に解体された。現在、主錨が、海上自衛隊に寄贈され、展示されているそうだ。



みていると、人の一生のようであり、お疲れさまでしたと言いたくなるような存在に思えてくる。なんというえらい駆逐艦であることか──。



文=坂口英明(ぴあ編集部)



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【ぴあ水先案内から】



笠井信輔さん(フリーアナウンサー)
「……「手を伸ばせ」。

その言葉が繰り返されるとき、涙がとまらなくなった……」



笠井信輔さんの水先案内をもっと見る(https://lp.p.pia.jp/article/pilotage/421767/index.html)



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