舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』
舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』より

カナダ人作家・アンドリュー・カウフマンの同名小説を、G2が10年の構想を経て舞台化する『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』。その初日の幕が、4月1日(月)、東京・日本青年館ホールで上がり、さらに大阪、名古屋でも上演される。

そこで初日直前に行われた会見、公開ゲネプロの模様をレポートする。



舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

妻のステイシーを含めた13人の人々は、銀行強盗からなんとも風変りな要求をされる。「今持っている物の中で最も思い入れのある物を差し出せ」と。ある者は腕時計を、ある者は写真を、そしてステイシーは電卓を強盗に差し出す。それらを受け取った強盗は、「私はあなたたちの魂の51%を手にした」と告げ去って行く。それから13人の被害者たちの身の上に、奇妙な出来事がふりかかり始めて――。



舞台化不可能と言われてきた小説だが、一読すればそれはすぐに納得出来る。13人の被害者たちに起きるそれぞれの事件が、現実には決して起こり得ないものばかりなのである。かつての恋人に心臓を抜き取られ、体から抜け出したタトゥーのライオンに追いかけ回され、年老いた母親は98人に分裂する。そして僕の妻は、表題の通りどんどん縮んでいく。それらの見せ方が第一難関と思われる本作だが、演出はこれまでさまざまなタイプの作品を手がけてきたG2。あらゆる舞台表現を駆使することで、見事にこの難問をクリアしてみせた。



舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

山田うんの振付によるダンサー陣の身体表現。かみむら周平の音楽。乘峯雅寛の美術。ムーチョ村松の映像。そしてもちろん俳優の演技。その一つひとつは決して過度ではなく、逆にとてもシンプルなものばかり。

例えば映像にしても、そのもの自体を映し出すようなことはほぼなく、とても抽象的。一方で小道具などは具象が多いのも面白い。その一つひとつがステージ上で有機的に融合し、さらに観客の想像力が加わることで、舞台でしか作り得ない『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』を完成させることに成功している。



舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

オープニングは銀行強盗のシーン。物語のすべての始まりとなる重要なシーンだが、その見せ方に一気に引き込まれた。カメラを使った演出は、まるで観客もその場に居合わせてしまったような、ライブならではの緊迫感。

その中心にいるのは、真っ赤な衣裳(=伊藤佐智子)が目を引く銀行強盗だ。その異様な存在感に、この物語が一筋縄ではいかない方向に転がっていくことを予見させる。



舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

舞台ならではの多彩な表現に心奪われる、花總まり・谷原章介出演『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』

それら舞台ならではの表現にも心奪われるが、本作の面白さはさらに別の一面にもある。数々の事件がそれぞれメタファーとなっており、人間ドラマとしても非常に考えさせられる部分が大きいのだ。その中心となるのは、もちろんステイシーとその夫である僕のふたり。夫婦の心の距離感を、実際に距離を持たせることで表現する点などはつい笑ってしまうが、自らを顧みてドキリとする人も多いだろう。

そしてやはり注目すべきは、なぜ妻は縮んでしまったのか。観客一人ひとりで受け取り方はもちろん異なるが、この夫婦関係の変化を追うことで、その答えの片鱗が見つかるはずだ。



初日の幕開けを前に、僕役の谷原章介はこう語る。「この舞台はステイシーから聞いたことを僕が脳内再生している面があるんですが、要はG2さんの脳内再生舞台でもあると思います。余白の多いこの舞台から、お客様がどれだけイメージを膨らませられるか。それが肝だと思っています」。

またステイシー役の花總は、「この舞台を作るために、スタッフ、キャスト総動員で挑んでいます。ぜひこの作品の持つ力、そして我々カンパニーが持つ力を、多くのお客様にお届け出来たらいいなと思っています」と意気込んだ。



取材・文:野上瑠美子



<公演情報>
舞台『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』



原作:アンドリュー・カウフマン
脚本・演出:G2

出演:
花總まり 谷原章介
平埜生成 入山法子 栗原英雄
中山祐一朗 吉本菜穂子 幸田尚子 楢木和也(梅棒) 西山友貴 吉﨑裕哉 山口将太朗 黒田勇 須﨑汐理 山崎眞結

【東京公演】
2024年4月1日(月)~4月14日(日)
会場:日本青年館ホール

【大阪公演】
2024年4月20日(土)~4月21日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

【愛知公演】
2024年4月26日(金)~4月28日(日)
会場:御園座



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/thetinywife/(https://w.pia.jp/t/thetinywife/&afid=P66)



公式サイト:
https://www.thetinywife.com



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