【ライブレポート】声出しOK『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』熱狂のファイナル公演
『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』2月26日(日)東京キネマ倶楽部 Photo:横山マサト

2019年、自主レーベルから音楽シーンに登場し、パンクなガールズバンドとして衝撃を呼んだ東京初期衝動。音楽性の幅も多彩に広げ、昨年11月発売のミニアルバム『らぶ・あげいん』でも、極上のポップチューンやメロディアスな青春ソングが収録されていた。

年末年始をまたぐツアー『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』のファイナルを東京キネマ倶楽部で開催。声出しOKとなり、爆音とエモーションに拍車がかかるステージとなった。



もともとはショータイムのあるグランドキャバレーだった東京キネマ倶楽部。手拍子の中でメンバーがステージに入ってきて、ボーカル&ギターのしーなちゃんだけが階段の上から降りてくる。



ギターを携えずスタンドマイク前に立ち、ゆったりと歌い出したのは「Becauseあいらぶゆー」。すがるような“あいらぶベイビー”の連呼から、おもむろにマイクを片手で取って“殺しておけばよかった”と叫ぶと同時に、演奏もテンポアップしてパンキッシュに炸裂。しーなちゃんは初っ端から、オーディエンスが前のめるフロアへダイブした。



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ステージに戻ってギターを肩に掛けると「ベイビー・ドント・クライ」、コンプライアンスお構いなしの「BAKAちんぽ」とドライブをかけていく。ゴリゴリのサウンドを奏でながら、ギターの希はクールな表情で、ベースのあさかはにこやか。ドラムのなおは一心不乱にタイトなビートを叩き出す。しーちゃんは笑顔で“大嫌い、大嫌い、大嫌い”と叫んだりで、ボーカルのトーンも明るい。



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しーなちゃん(Vo/Gt)

さらに、「流星」から乙女チックな「マァルイツキ」とキュートなナンバーが続く。

スウェットパンツの4人。激しくもリズミカルな演奏がいい感じだ。



「これから盛り上がる曲が続くので、皆さん、前のほうギューギューでお願いします。一番盛り上がった人は、あとで楽屋にお呼びしますので」



しーなちゃんがそう告げて、ブチ上げたのは「山田!恐ろしい男」。このガレージロックを作ったあさかがお立ち台に上がって煽りながらベースを鳴らし、しーなちゃんはトラメガで叫ぶ。許せない男との決別宣言。オーディエンスが一斉に頭上でクラップしていた。



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あさか(Ba)

間髪入れず、ドカドカドカとなおのドラムに力がこもり、東京初期衝動ならではのパンクナンバー「梅毒」へ。明け透けなシャウトと“おーちんちん”の大合唱。ライブバージョン恒例で、アイドルライブ風のガチ恋口上が入るところで演奏を中断した。



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なお(Ds)

しーなちゃんが目立つ服の女性客に名前を聞き、飛び跳ねながら「やっぱりマナカはかわいいよ」と歌う。口に含んだ水をフロアに吹きかけるパフォーマンスも見せた。



勢いに乗って、「高円寺ブス集合」を高速でたたみ込む。街の宣伝トラックでお馴染みの“バーニラ、バニラ”の叫びにコールが起こり、ダイブを繰り返すしーなちゃん。フロアを存分に巻き込んで、ライブはヒートアップしていった。



「新曲です」と、コール&レスポンスの練習をしてから披露されたのは「愛うぉんちゅー」。アタック感のあるストレートなロックで、しーなちゃんはタンバリンを叩いて“アイアイアイアイ”とシャウト。練習した“あれもしたい、これもしたい 生きてる間は無茶したい”も会場一体で響いた。



そのまま、「みんなで“愛してる”って叫びたいです!」と「トラブルメイカーガール」へ繋げていく。希のギターがギューンと唸る中、叩きつけるように“産みたいくらいに愛してる”が繰り返された。



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希(Gt)

飛ばしっぱなしで少し息を切らしたまま、しーなちゃんが「ちょっとゆっくりな曲を続けます」と話して、後半戦は『らぶ・あげいん』収録の「俺流サニーデイ・サービス」から空気を変えた。タイトル通りのソレっぽい曲で、ゆらゆらたゆたうようなグルーヴがジワッと温かい。



「キネマ倶楽部でこの曲を歌うのがうれしいです」と、「中央線」はスローなギターの弾き語りから始まり、2番でバンドサウンドに。“さよならは言わない”のリフレインに哀感が染みた。

「ボーイズ・デイ・ドリーム~ドッカンver~」は穏やかなテンポでのアンサンブルが楽しげで、しーなちゃんににこやかな表情が浮かんでいた。



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しーなちゃん(Vo/Gt)、あさか(Ba)

「今日は声出しOKです。好き勝手にどうぞ。また激しい曲が続きます。歌える人は一緒に歌ってください」



「再生ボタン」と曲名を告げると、ドッと歓声が上がる。定番で原点のハードパンクだ。しーなちゃんがギターをかき鳴らしながら“あの国がミサイルをぶちこむ前に”などとガナると、オーディエンスも拳を突き上げて「オイ! オイ!」と高揚していく。熱狂が最高潮に達した。



『らぶ・あげいん』からの「ボーイフレンド」は疾走感の中でメロディの美しさが際立つ。躍動的な音のうねり。両手を広げて“抱きしめていたかった”と歌うしーなちゃんに青春感が漂った。



終盤に入り、「世界の終わりと夜明け前」からは怒涛のラッシュ。

つんざくギター、腹に響くドラム、流れるようなベース。時折り熱い語り口調になるボーカルには、むき出しの感情が見える。ライブでは“ここでつまづくなよ 東京初期衝動”と歌う「STAND BY ME」も、“ひとりぼっちの夜”が描かれた「春」も尖っていながらポップだ。



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希(Gt)
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なお(Ds)
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あさか(Ba)

ラストは定番の「ロックン・ロール」。激しい轟音と張り合うかのように、しーなちゃんのシャウトもさらにギアが上がり、ほとんど絶叫に。高まるところまで高まって、「ツアーファイナル、ありがとうございました!」と、最後はステージの床でのけぞりながらギターを弾いていた。



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しーなちゃん(Vo/Gt)

アンコールに応えて、再びステージに現れた4人。「3年前にベースのかほちゃんが脱退してから、歌えなかった曲です。あさかが入ってから、前の東京初期衝動をやっと越えられたなと思ったので、久しぶりに歌います」



しーなちゃんがそう語って、ギター1本で歌い出したのは「SWEET MELODY」。美しくもの悲しいメロディに、音楽仲間との別れを綴った歌詞。ステージのスクリーンには初期の東京初期衝動のスナップ写真が映り、バンドの演奏が入ると共に、今回のツアーを映した動画に。「ツアー中、脱退しようか迷った回数」「歌詞を間違えた回数」「ゲロ吐いた回数」……などとメンバーごとに数が記されたりも。



そんな中、心情を吐露するような歌声が切なく響く。“君と歌ったあの歌を僕は1人で歌う”……。ドキュメンタリーのようなエモさが漂った。一転、耳馴染みのあるドラムパターンから「せーの」と「黒ギャルのケツは煮卵に似てる」が始まる。ラモーンズの「リメンバー・ロックンロール・レイディオ?」風のメロディでギャルの生態が描かれた曲を、ユルくゴキゲンに。「この曲、台湾(のフェス)でやったら、サークルモッシュやってたよ」と言うと、フロアでオーディエンスたちが回り始めて、パーティー感が溢れた。



【ライブレポート】声出しOK『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』熱狂のファイナル公演

「最後の曲です」と奏でたのは「エンドロール」。映画『グリーンバレット』の主題歌として書かれた1曲。気だるく始まり、目の前が開けて、急に弾けてノリノリに。しーなちゃんはサビの歌い回しにキュートさをのぞかせ、あさかはベースを弾きながら跳ねていた。



さらにWアンコールが掛かり、あさかがスマホ撮影OKと告げる。しーなちゃんがまた階段の上に姿を現し、この夜2回目の「再生ボタン」がオーラスに。

歌いながらステージに降りてくると、オーディエンスたちは片手で拳を振りながら、片手でスマホを一斉に向けていた。よりストレートに歌い掛けるようなボーカルを聴かせ、しーなちゃんはまたもやダイブ。最後は「ありがとう! アイラブユー!」と叫んで、熱量の漲るライブとツアーはフィナーレとなった。熱の余韻がしばらく後を引きそうだった。



【ライブレポート】声出しOK『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』熱狂のファイナル公演

Text:斉藤貴志 Photo:横山マサト



<公演情報>
『東京初期衝動御一行様全国忘年会新年会会場はこちら』



2月26日(日) 東京キネマ倶楽部



セットリスト

1. Becauseあいらぶゆー
2. ベイビー・ドント・クライ
3. BAKAちんぽ
4. 流星
5. マァルイツキ
6. 山田!恐ろしい男
7. 梅毒
8. 高円寺ブス集合
9. 愛うぉんちゅー(新曲)
10. トラブルメイカーガール
11. 俺流サニーデイ・サービス
12. 中央線
13. ボーイズ・デイ・ドリーム~ドッカンver~
14. 再生ボタン
15. ボーイフレンド
16. 世界の終わりと夜明け前
17. STAND BY ME
18. 春
19. ロックン・ロール



EN1. SWEET MELODY
EN2. 黒ギャルのケツは煮卵に似てる
EN3. エンドロール



W-EN. 再生ボタン



<ライブ情報>
『Chase presents Chazawa Street 2023』



4月15日(土) 下北沢BASEMENTBAR 他(全8会場)
OPEN12:30 / START13:30
受付URL:
https://w.pia.jp/t/cp-cs23/



『しーなpresents 春の奢りライヴ』



4月16日(日) 下北沢近道(GAGARE跡地)
OPEN17:30 / START18:00
ゲスト:PK shampoo
料金:学生限定入場無料ライヴ(ドリンク代別途必要)
※学生証等身分証が必要となります。4月卒業の方もOK!



『新興宗教東京初期衝動お布施回収ライヴ』



4月17日(月) 下北沢SHELTER
OPEN19:00 / START19:30
ゲスト:未定
料金:3,000円(税込、ドリンク代別途必要)
先行受付:3月11日(土) 20:00~3月19日(日) 23:59
受付URL:
https://w.pia.jp/t/417-no-hi/



公式サイト:
https://東京初期衝動.com(https://xn--1lqt7f1ph36dwlak54n.com/)

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