
作家・朱川湊人の代表作で、第133回直木賞を受賞した短編集『花まんま』(文春文庫)の劇場映画が公開中だ。
早逝した両親と交わした「兄貴はどんな時も妹を守るんや」という約束を胸に、たったひとりの妹の親代わりとして、大阪下町で生きる熱血漢の兄・俊樹(鈴木亮平)と、結婚を控えながらある秘密を抱えている妹・フミ子(有村架純)の兄妹の不思議な体験を描く。
主演の鈴木、有村をはじめとするキャスト陣が熱のこもった演技を見せるなか、物語の核心を握る“兄妹の子ども時代”を演じたふたりの子役にも注目が集まっている。

原作ではメインで描かれ、本作でも物語の核心を担う主人公・俊樹と妹・フミ子の子ども時代。その重要な役どころをキャスティングするにあたり、2023年8月からクランクイン直前の2024年2月まで、約半年間にわたり大規模なオーディションが開催された。関東と関西に渡り対面して審査した子どもたちの数は600名超。前田監督独自のユニークなオーディションを経て、幼少期の俊樹役に抜擢されたのは田村塁希(当時9歳)、フミ子役に選ばれたのは小野美音(当時6歳)。
前田監督は、ふたりを選んだ決め手について「最終オーディションでは、子どもたちに思いっきり遊んでもらったんです。ボールやトランプなど体を動かすことから頭を使うゲームまで色々やっていくうちに、みんなそのうち本気になって素の性格が出てくるんですね。さらに、兄と妹としての相性を見極めたくてペアを組ませた。塁希と美音がペアになった時に、天真爛漫で自由に突っ走る美音を優しくフォローする塁希がいた、そのふたりの様に『あ、兄と妹だ』とピンと来ました。このふたりなら俊樹とフミ子になる!」と運命的な出会いを語り、その人柄と兄妹感が役柄にマッチしていたことを振り返っている。

小野は、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインの娘役を演じるなど演技経験豊富。
フミ子の記憶の中にある別の家族と対峙する場面の撮影では、感情表現の演技に苦戦。それでも田村はテイクを重ねるごとに役に入り込み、「フミ子を守る」という強い感情を爆発させ、スタッフが涙するほどの演技を見せた。また小野も、フミ子の雰囲気が急に大人び、秘密を隠し始めるきっかけにもなる場面で15回以上テイクを重ねたが、難しい表情を監督とすり合わせ、目線の向きや顔の角度にもこだわりシーンを作り上げた。

ふたりの演技について前田監督は「子どもでも向き合い方は大人と変わりません。撮影前にシナリオを1ページずつ一緒に読んで、『こういう時、君ならどう思う? どう言ったり、どうしたりするかな?』と尋ねて、リハーサルを重ねました。そして『台詞を言うことが大事じゃないんだよ、相手から言われたことされたことから、どう感じたかを言葉や表情や行動で自由に出せばいいんだよ』と話します。ふたりともに結果は素晴らしかったですね。よくやり切ってくれました」と、ふたりの見事な演技力に称賛を送っている。
<作品情報>
『花まんま』
公開中
公式サイト:
https://hanamanma.com
(C)2025「花まんま」製作委員会