鳥谷敬「戦力比較なら4勝2敗でオリックス」「阪神はDH制で『恐怖の8番』木浪をどこに起用するか?」【日本シリーズ分析】

阪神、38年ぶりの日本一なるか? それともオリックスが昨年に続きシリーズを制するのか? 2023年プロ野球ファイナル・日本シリーズ。野球解説者の鳥谷敬は「純粋な戦力比較ならオリックス有利」と見ている。

現役時代、ベンチで感じた「山本由伸攻略法」

いよいよ日本シリーズが開幕します。

今年はタイガースもバファローズも素晴らしい投手陣を持っており、特に先発ピッチャーがしっかりしているため、どちらが先に相手の先発ピッチャーをマウンドから降ろせるかがポイントになりそうです。

打者が粘って球数を投げさせて、四球を選んで…とは簡単にいかないと思いますが、それができればタイガースにチャンスあり、逆にそれができなければバファローズが有利なのかなと見ています。

なんといってもタイガースは、38年ぶりの日本一を目指すということもあり、いろいろなプレッシャーもかかってくると思うので…。

鳥谷敬「戦力比較なら4勝2敗でオリックス」「阪神はDH制で『恐怖の8番』木浪をどこに起用するか?」【日本シリーズ分析】

タイガース38年ぶりの日本一に挑む岡田監督

第1戦、第2戦はパ・リーグの本拠地で開催されるため、DH制が採用されます。パ・リーグで2年間プレーさせてもらった感覚からすると「木浪聖也選手が8番にいるというタイガース打線の強み」がこれによって少し弱まってしまうのではないかと思います。

DH制が採用されると8番打者よりも、むしろ1番打者につないでいく9番打者のはたらきが大事になるので、はたしてそこに誰を置くのか。

例えば、捕手の坂本誠志郎選手なのか、それとも木浪選手を9番において、1番、2番へつなげていくのか。そのあたり岡田彰布監督がどういう考えを持っているかが楽しみです。

バファローズのエース、山本由伸投手は、今の日本球界においてナンバーワンと言っても過言ではありません。

自分が打席に立って打つイメージをしてみましたが、正直に言えば打てません…。1試合120球程度は平気で投げられるスタミナがあるので、球数を投げさせる作戦も効果的とは言えません。すべての球種でストライクがとれるので、すぐに追い込まれてしまいますし、フォークやカーブを意識すると、高めのストレートにどうしても手が出てしまいます。


マリーンズ時代にベンチから見ていた印象では意外に、「ストレートを待っていた選手が違う球種をヒットにする」ことが多いように感じました。ストレートを待って、ストレートしか打たないのではなく、ストライクゾーンにきた球は、球種に限らず積極的に振っていく。その結果、その球がカットボールやツーシームでも、ヒットにできればOKというくらいの割り切りが必要だと思います。

タイガース逆襲の条件

パ・リーグのCSファイナルステージの第1戦で、マリーンズが山本投手の立ち上がりを攻め、3点を奪いましたが、山本投手を攻略するには、まだ本調子になる前の立ち上がりに取った点数を守り抜くという戦い方をするしかないのではないでしょうか。

彼に本来のピッチングをされてしまえば、打てないし勝てない。仮に第1戦で抑え込まれたとしても、相手が上だった、1敗は仕方がないととらえて、次の試合に進んでいくしかないと思います。


鳥谷敬「戦力比較なら4勝2敗でオリックス」「阪神はDH制で『恐怖の8番』木浪をどこに起用するか?」【日本シリーズ分析】

勝てば2年連続の日本一。オリックスの中嶋監督

ランナーをかえすという意味では大山悠輔選手、佐藤輝明選手がポイントになるのかもしれませんが、相手にプレッシャーをかけるということを考えると、近本光司選手と中野拓夢選手が出塁できるかどうかのほうが大事になってきます。

実際に、タイガースは出塁さえすれば、ヒットなしでも得点できる形を持っています。近本選手、中野選手が出塁して、山本投手に気持ちよく投げさせないことが何よりも大切です。

相手は足を使った攻撃も嫌うでしょうし、それを警戒したなかで、クリーンアップが打席に立てるという形を多く作りたいところです。

タイガースはCSファイナルで青柳晃洋投手、西勇輝投手の登板がありませんでしたが、岡田監督は日本シリーズでの投手起用をどう考えているのでしょうか。

経験値や球場との相性など、さまざまな要素を考えて悩まれているだろうと思います。

純粋に戦力だけを比較した場合、個人的な予想としては、4勝2敗でバファローズかなと思います。ただ、タイガースに勢いがでれば、逆の結果になる可能性は十分あります。

そのためには、誰かひとりラッキーボーイが出てくるしかありません。CSファイナル第1戦の森下選手のように、その選手に回すと点が入る雰囲気を作ることができれば相手も意識して打順の巡り合わせを考えますし、その他の選手に対してのマークが多少甘くなったりもします。

2005年、阪神タイガースと千葉ロッテマリーンズとの日本シリーズのときは、マリーンズの今江敏晃選手が打席に立つだけで、打たれるような気しかしない、ということも経験しました。

鳥谷敬「戦力比較なら4勝2敗でオリックス」「阪神はDH制で『恐怖の8番』木浪をどこに起用するか?」【日本シリーズ分析】

鳥谷敬氏

タイガース38年ぶりの日本一へ向けては、第1戦、第2戦という早い段階で、いかにラッキーボーイを生み出すせるか、という点にも注目したいと思います。

構成/飯田隆之 写真/共同通信社